あの時私は浮かれていたんだと思う。
友達とビアガーデンへ行って、世界中のビールとムール貝に舌鼓をうち、
ほろ酔い加減であっちこっち散歩したりして、
結局朝まであーだこーだとお喋りしてたんだよね。
久々に会えた人もいて、凄く嬉しかったんだ。
友達と別れてからバッグを開けたら、チェブラーシカのぬいぐるみが居ないの。
その時はタオルハンカチで包んでバッグに入れていたんだけど、
ハンカチごとない。
マズイ。
一気に酔いも醒めて、すぐさま通ってきた道を辿ったんだ。
おチェブは、5年前かな?ロシアでライブをした時に、
客席からステージに放り込まれたプレゼントの中の一つでした。
私にとっては愛くるしい可愛いコ。
曲や歌詞が生まれなくて悩んでいる時も、ふとこのコを見ると気持ちが安らぐ、私の精神安定剤的存在。
それに亡くなったおばあちゃんも、なぜか「元気くんこんにちはー」と勝手に名前を付けて可愛がってくれてたから、
沢山の思い出が詰まった、かけがえの無いぬいぐるみ。
…なんだけど、酔っ払っているうちに失くすというまさかの大失態。
情けなくて悲しくて、それにおチェブが今どれだけ寂しい思いをしているかと想像すると辛くて(気持ち悪くてスミマセン)、
歩いてきた道を遡りながらだんだん泣けてきた。
「このくらいの!サルのぬいぐるみ見ませんでした?!」
と必死の形相で、立ち寄った店々の店員さんを困らせて周り、
(サルと言った方が伝わるかなと思ったんだよ、おチェブごめん)
途中で寄った大きな公園では、
「落ち葉と一緒にゴミ箱に捨てられちゃったかもしれない…来た道全部辿って見つからなかったらゴミ箱ひっくり返させてもらおう…」
と心に決め、
真っ赤になった目を皿のようにして朝の街を歩いて行った。
暢気に「あ、東京タワーのところまで歩こう~♪」なんて言って適当に歩いてきたから、
正直今戻っている道が正しいのかよくわからなくて、
不安の中キョロキョロしながら感を頼りに進む。
時間にして2時間くらい彷徨っていたと思う。
そういえば神社にも立ち寄ったなぁ、と思っていたら、
ちょうどそれらしき場所に出た…
あ…
「いたー!!!!!!!!」
鳥居の手前でぽつんと、一人空を見上げてるおチェブを発見!!
また気持ち悪い描写になるけども、駆け寄って抱きしめてしまったよね、ほんとに。
おチェブは多分「飼い主どこ行ったのかなーお空が綺麗だなー」とのほほんとしていたんでしょう。
ごめんね数時間キミが居ないことに気付かなかった。
いつも頼ってるくせになんなんだ私は。
誰にも捨てられたり拾われたり、犬にかじられたりしなくてよかった。
その後はおチェブを連れてその神社へお参りして、自分を戒めてから帰ったよ。
あ、一昨年くらいのお話です。
私はおチェブがいなくなってしまったら本気でバンドに影響が出そうだけど、
同じようにぬいぐるみやペットや、それこそ人間にも、深い深い愛情を注いで、
その存在が日々の活力になったり、支えになったりしている人は沢山いるよね。
何かに依存することって怖いことなのか違うのか私には判断できないけど、
それでもおチェブが可愛くて仕方がないっていうのは、きっとそういうことなんだろう。