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日本維新の会の母体である大阪維新の会は、2010年頃に自民党大阪府連の若手議員らがベテラン勢と対立し、離党して設立された地域政党で、このため、心理的・政治的な対抗心が強く、大阪では自民を「仮想敵」として位置づけてきた。
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維新の悲願である大阪都構想は、2度の住民投票で否決されており、自民党大阪府連は一貫して反対姿勢を示しており、これが両者の最大の対立軸となっている。
維新はこれを「二重行政の解消」と主張し、自民は「行政コスト増大や住民サービス低下」を懸念。
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大阪府には衆議院小選挙区が19あり、維新の本拠地として維新が圧倒的な強さを発揮している。
2021年衆院選
自民が候補を擁立した15選挙区で全敗(維新全勝)。
2024年衆院選
大阪全19選挙区で維新が全勝。
自民は擁立した選挙区で再び全敗し、比例復活も限定的だった。公明党の強い4選挙区にも維新が初めて対抗馬を立て、全面対決で勝利。
2025年参院選(大阪選挙区)
維新が2議席を獲得、自民は議席を失う(1998年以来の落選)。
これにより、大阪では自民の地盤が極めて弱く、「自民府連消滅の危機」との声さえ上がっている。
維新は吉村洋文大阪府知事(維新代表)の人気と「身を切る改革」を武器に、無党派層や自民・公明批判票を吸収してきた経緯がある。
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現在の状況(2025年12月時点)
2025年、自民党(高市早苗政権)と維新が連立政権を樹立。
維新の「副首都構想」(首都機能のバックアップとして大阪を強化)が実現に向け議論が進んでいるが、副首都構想は大阪都構想を前提とする要素が強く、自民大阪府連は強く反発。
「副首都と都構想を切り分けて議論せよ」と党本部に申し入れている。
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次期衆議院選挙における大阪選挙区のの構図
「維新による大阪独占を、自公が阻止できるか」という構図。
特に公明党の現職がいる選挙区に維新が刺客を送ったことで、自民党にとっても「共倒れ」のリスクがある非常に厳しい戦いになる。
A
これまで維新は公明党との協力関係(大阪都構想への協力の見返り)から、一部の選挙区で候補者を出していなかったが、関係解消により「維新 vs 自民 vs 公明」の三つ巴の状態になる。
維新は大阪全区での勝利(「大阪完勝」)を狙い、盤石な地域政党としての地位を国政でも固める狙い。
自民は過去の衆院選で惨敗した「大阪自民」の立て直しが急務。
支部長(候補者)の大胆な差し替えや公募を行い、背水の陣で挑むことになる。
B
今回の選挙から大阪府の選挙区は「19」に再編され
境界線が変わったことで、従来の支持基盤が分散したり、新たな有権者が加わったりするため、過去のデータ通りにいかない区が出てくる。
地方議員の数が圧倒的に多い維新は、新しい区割りでもドブ板選挙を徹底できる強みがある。
C
単なる政党間の争いだけでなく、以下のテーマが勝敗を左右するだろう。
「大阪万博」
開催費用の増大など批判がある中、これを「維新の失策」と攻める自民・他党に対し、維新がどう成功への道筋を説得できるか。
政治資金問題(裏金問題)
自民党への逆風が大阪でもどの程度影響するか。
教育無償化の実績
大阪府・市で進める高校授業料無償化などの「実績」を強調する維新に対し、自民がどのような対抗軸(経済政策など)を打ち出せるか。
D
維新
現職の強さと圧倒的な知名度を背景に、多くの選挙区で優位に進めると見られるが、全勝を狙うには公明・自民の固定票をどう切り崩すかになる。
自民
「批判票」の受け皿になれるかが焦点。
特に都市部では無党派層の動向が勝敗を分けるがら現在の勢いでは維新の牙城を崩すのは容易ではない。
E
連立与党となったものの、全国で155選挙区が競合。
大阪では維新が全19区を現職で独占しており、自民側は「選挙区調整は必要ない」「是々非々で戦う」との姿勢。12月に入り、自民が大阪の空白区で候補公募を始め、調整論が下火になっており、大阪自民からは「維新との調整で撤退すれば府連消滅」との危機感が強く、対立が継続している。