須田桃子著『合成生物学の衝撃』(文藝春秋)を読んで | ExcomAdvisorのブログ

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本稿は私・平田幸治の個人の意見・見解等を綴ったものです。

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須田桃子・毎日新聞科学環境部記者

Photo via hon.bunshun.jp

 

 

  本稿は私が@AmazonJP カスタマーレビューに投稿したものをそのまま転載したものです。

 

  須田桃子著『合成生物学の衝撃』(文藝春秋)を読んで

 

  須田の本書の短評を綴るには私の知見ではその域に遠く及ばないであろう。したがって、記者の毎日新聞紙上に載る記事を読んでの科学の進展に関る私の所感を述べるにとどめたいと思う。
  

  読んでの結論を一つ書いておくが、英語論文では異なるにしても連続した起承転結的取材ヒアリングインタビュー等からの構成スタイルは、「合成生物学」の素人の私にとっては、これからおこる『合成生物学の衝撃』への大変良好な啓蒙書であったことは得難いものである。

  本書の述べるところは人類にとってあまりにも大きい問題である。当初の感想の記すことは核兵器に関するヘンリー・キッシンジャーをはじめ私が学んだ国際政治の書籍もひも解いてみたし、懐かしい若い時代の美しいポピュラー音楽も聴きながら考えてもみた。だが考えたことを予見するには私には困難がともなうことが多いと思った。

  本書を読んで感じた一つは、科学のレベルはおおよその分野でこうした急激な進展をたどることになるのではないかということである。
  そしてそれに、「疑う」ということを絶えず保持していなければならないし、性格は別だが須田の前著『捏造の科学者 STAP細胞事件』(文藝春秋、2014年)はまさにその慎重さから生まれたものだと思う。

  このことのジャーナリストとジャーナリズムの果たす役割は日に日に重くなる。人間の一定の価値感といえるモラルが基盤となるもので、このような平均的人間のよさを喪失することがあってはならないと私は考える。

  例えば、須田の新聞社の上司の元村有希子・毎日新聞科学環境部長が著書で「・・私は科学者には、どう使われるかまで注意を払ってほしいと思う。自分が生み出したものが社会にどう取り入れられ、社会をどう変えるかなんて預言者でない限りわからない。それが現実かもしれないが、当事者意識は持ち続けてほしいと思う」(『気になる科学』㈱KADOKAWA、2016年)と記していることを私は思いだす。

  この須田の著書は、この終点を示すものではないことは確かであるが、私たち読者に考えさせることができればそれだけで役立つ本であり、実は私はそれ以上の本だと思うのである。
(ひらた こうじ)<了>

 

Photo via @nhkpb_text 2019

 

 

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《追記》①2018年5月13日(母の日)

  思い出も含め加筆します。私の母校・岡山県立総社高等学校の生物の恩師である稲田正男先生の「遺伝子」がやがて解明されるというお話は大変興味深いものでもあった。だが私にとって重要なのは受験に理科は1科目いるから、先生は「平田。生物はよく問題文を読んでそれを吟味すれば50点は取れると思う。だから、君は生物だ」と言われ私は少しは勉強した。

  それよりも、先生の農学部での牛の解剖のお話しがが面白くもあったりしたことが懐かしい。

 

  さて、須田さんの本書で私が最も関心を持って読んだのは「生命の設計図を書き換え、自然界に存在しない生物をつくり出すこの分野」の各ラボの予算(資金)確保の方法であった。

 

  それと、須田さんの取材姿勢であった。これは彼女は「あとがき」の最後に書いている。

 「何が目的なのか」

 「なぜそれをやりたいのか」

 「それによって何が得られるのか」

 「これから何をしようとしているのか」

 「自ら正しいとどのようにして分かるのか」

 (英国2010年合成生物学大規模意識調査報告書=須田「あとがき」)

 

  須田さんは私のTWのRPに「・・留学初期に出会った言葉です。あらゆる科学取材の指針になる言葉かと思っています」と記した。

 

  本書は科学ジャーナリストの須田さんだから書けた。毎日新聞の科学ジャーナリズムを発展させるだろう。

 

《追記》②

  私が須田さんの本書に接した時に、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の書物を再読してみたとしているのは、Nuclear Weapons and Foreign Policy, (Harper & Brothers, 1957).田中武克・桃井真訳『核兵器と外交政策』(日本外政学会、 1958年)である。須田さんの『合成生物学の衝撃』からの新しいインパクトはそれほど私には大きく、同じく当時新しい核兵器のインパクトからの

理論を統合したキッシンジャー博士の専門家としてのリテラシーを思い起こした。

 

 

 

 

《参考》拙稿ameblo<2015-04-24 >

「須田桃子・毎日新聞記者の大宅賞・科学ジャーナリスト大賞ダブル受賞」

https://ameblo.jp/excomadvisor0011kh/entry-12018435435.html