2017年3月18日朝日大阪【時事小言】(藤原帰一教授)を読んで〔所感〕 | ExcomAdvisorのブログ

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本稿は私・平田幸治の個人の意見・見解等を綴ったものです。

http://www.asahi.com/articles/DA3S12843322.html

 

 冒頭にリンクしたのは、2017年3月15日16時30分配信【朝日新聞デジタル】の藤原帰一・東大法学部教授(国際政治)の『時事小言』「国境を閉ざす流れの中で 各国共同の責任考える」の記事である。

 

 藤原先生が本文で示された原著は Stanly Hoffmann, Duties Beyond Borders: On the Limits and Possibilities of Ethical International Politics (Syracu University Press, 1981)、訳書は監修者:寺澤一、訳者:最上敏樹「国境を超える義務―節度ある国際政治を求めて―」(三省堂、1985年11月15日第一刷発行)である。

 

 ホフマン教授の訳書が拙宅の書架にあるのは、その時に目を通したいという読み方を私はしたと思う。研究者でもない私はスタンリー・ホフマンとなじみのある名から同書を求めたのかもしれない。

 

 藤原先生の『時事小言』の論考は久しぶりに大学の国際政治の講義をあらたまって聴いたという感じを持った。

 

 スタンリー・ホフマン教授の原著を最初に読んだのは母校・慶応義塾大学の恩師・神谷不二先生のゼミナールのころと久しいが、もう一人の国際政治の恩師で東京工業大学で特殊講義(ゼミ)の参加を許された永井陽之助先生のご指導を授かったことにも思い出深い。

 

 ホフマン教授の前掲書が出版されて間もなく、ある東大の国際政治の教授が「あのスタンリーホフマンでさえ変わったのに、永井はまだ変わらない・・」というような主旨を誌上で述べられていたことを記憶している。私は岡山に帰郷しており、永井先生のコメントを聴く由もなかった。永井先生はレアリストであっただろうがロマンチストの面も持たれていた。

 

 私については、神谷先生、永井先生に学び、藤原先生の前掲朝日論考にある表現では、ネーションステートによって構成される世界のイメージの中での国際政治である。

 

 神谷先生のもとでは、ヘンリー・キッシンジャー、ズビグニュー・ブレジンスキー、スタンリー・ホフマン等の原著を読んだ。

 

 今でも、1月6日の神谷先生のお誕生日には「岩波講座 現代6 冷戦―政治的考察」(岩波書店、1963年)所収の論文『冷戦のストラテジー』を読み先生を偲んでいる。ちなみに、本書には藤原先生の恩師・坂本義和先生の論文も収録されている。永井先生の著作では「現代人の思想16 政治的人間」(平凡社、昭和43年)が手の届くところにある。むろん学生時代には両先生のご著作はすべて読了した。

 

 藤原先生の前掲朝日論考にある「・・2008年の世界金融危機の後、新興経済圏の経済は停滞を続け、先進国では所得格差の拡大と中間層の緩やかな没落が始まる。・・」が現在世界に影響を大きく及ぼしていると私も考える。

 

 このことについて、ドナルド・ジョン・トランプ氏の2016年11月8日の勝利を私は本ブログシーリーズの2016年11月13日に「2016年アメリカ大統領選挙を終えて」と題して述べたが、同ブログを引用すると「・・11月12日朝日新聞でビル・エモット元英エコノミスト誌編集長が石合力・同紙ヨーロッパ総局長に指摘したように、2008年のフィナンシャル・リセッション(もしくはグレート・リセッション)で米国が機能不全に陥った。『それこそがトランプ氏の勝因でしょう』と述べている。(朝日の原文を読まれたい)

 

 この、『資本主義と民主主義がともに機能不全に陥った』(ビル・エモット氏)と指摘する問題は大きい。資本主義で欲望を手に入れて後戻りできない人間は、私の知見でうまく表現できないが、いわば『価値観の転換』を歴史と文明の流れにおいて模索しなければならないように思う。例えば、フランスのトマ・ピケティ教授が著書で提起した一握りの人々が大多数の人々の持つ富を持っているということは、国際機関や米FRB調査でも指摘されてきたところである」。(平田幸治:ひらたこうじ)<了>

 

 

≪追記≫

① ビル・エモット氏は私の住む岡山市の就実大学の客員教授でもあり経営学部の公開フォーラムで連続講演を持っておりその講演録もあり、この7月には来日日程があるようでいずれもご関心の向きは私の友人の大崎泰正教授(経済学)に問い合わせられるのがよいでしょう。

 

②2016年米大統領選挙プライマリーでのドナルド・トランプ共和党候補の躍進、バーニー・サンダース民主党候補(連邦上院議員)進出過程の検証分析が待たれると思料する。