二人で過ごしている時に来るメールは、まるで水を注すような役割をする。彼は素早くメールを返す。それを由紀は不安げに眺める。

「ねぇ、何て言って来たの」無視してきずかない振りをしたいのに思わず聞いてしまうのだ。
「たいした事ないよ。久しぶりで飯でもくわないかの誘いだよ」と彼は
無造作に答える。何時ものように心を探られるときの不愉快さを誤魔化す仕草は、ジーンズの小さなポケットに手を入れるのだ。

「少し嫌だなぁ。ランチだけでも二人で会うなんて」と由紀は言う。
「又焼餅か?もう少し自信を持ってくれないか。」と彼は不機嫌になる。

由紀が彼女を意識しだしたのは、去年の梅雨の季節だった。

その時もメールが来て「あなたの誕生パーテをしましょう」だった。

初めての彼の誕生日を、二人で祝うつもりだったのに、彼は 由紀の気持ちを無視して都合をつけようとした。

由紀は、心の動揺を抑え「あなたの誕生日を祝ってくれるなんて、優しい人ね」と

彼にメールをした。

「いや、君と始めて迎える誕生日だから、好意をありがたく受けて丁寧に断るよ
」と由紀はその言葉を期待していたのだ。
所が、現実はまったく違っていたのだ。

「えっ、おれの誕生日パーテをしてくれるの?ありがとう。今度の日曜日でいいかな?」とその気になっていたのだ。

彼の馬鹿正直さと、単純さと、恋人の気持ちがまったく判らない鈍感さを、ミキサーに
かけてミックスしたら、どんなジユースが出来上がるのだろうか?

「まったくもう、嫌になっちゃうわ」と由紀は思わずやけくそで下がった株を売ってしまった。

そう、由紀には誰にも内緒でネットで株をしているのだ。

今度の始めて過ごす筈の彼の誕生日は、ロマンチックに海の見えるホテルを既に予約していたのだ。プレゼントも用意していたのだ。

彼の女友達は由紀の存在を知らされていないのだろうか?

傷を舐めあう仲であるなら喜びも伝えている筈なのに。。。

恋人がいる人にそんな誘いは出来ないものだ。

恋人たちに取ってバレンタインデーに次ぐ大切なイベントだから、断られるに決まっている。

彼も彼だと由紀は悲しくなった。

そんな時の由紀の心は、カラカラと音をたてて壊れそうになってくるのだ。

こんなに好きなのに、どうして何時も無神経に私の気持ちを傷つけるの?

私は、何時もあなただけを胸に詰め込んでいるのに、