日本円の対ドル・ユーロ為替レート の推移は図録5070に示したが、ここでは実効為替レートの推移を掲げた。

 円の対米ドル ・レートだけを見ていても、円が本当に円安か円高かは分からない。すなわち、ドルに対して円とは別にレートが変動している欧州のユーロや韓国ウォン、中国元などとの貿易取引も多くなっているからである。

 そこで様々な国との為替レートを貿易取引のウエイトで総合した為替の指数が作られている。これを実効為替レート と呼ぶ。

 さらに、相手国とのインフレ度の違いが、名目の為替レートでは測れない通貨の実力の違いを生む。例えば、同じく1ドル =100円で不変であったとしても、日本ではインフレが進んでおらず米国ではインフレによってドルの価値が半分になったとしたら、日本円で2倍の米国商品が買えるのであるから円の通貨価値はドルに対して実質2倍になったと考えるべきであろう。実際、日本の通貨価値は長期的に米国やユーロ圏の通貨に比してインフレ度合いが低く推移してきている(図録4730参照)ので、見かけよりも円安が進んでいた(見かけ上円高とならなければ同等のレートとはいえない状況だった)可能性が大きかったのである。

 様々な通貨に対してこうした調整を行った後の実効為替レート を実質実効為替レートと呼び、調整前の値を名目実効為替レートと呼ぶ。 データは指数で表され、指数が上昇するほど通貨の価値が高くなったこと(日本なら円高)を示している。

 実効為替レートは、各国の中央銀行(日本なら日本銀行)やBIS(国際決済銀行)が公表している。ここでは、日本円だけでなく、米国ドルやユーロ圏通貨(現在はユーロ)の実質実効為替レートを見るため、BISが公表している統計データからグラフを作成した。

 長期的な動きを日本円についてみると、1970年代から長期的に円高傾向を辿り続けた後、1995年を境に円安傾向へと転じ、リーマンショックで顕在化した世界金融危機まで円安傾向が続いていた。グラフを見ると、最近までの円安水準は、日本の円高を決定づけた1985年のプラザ合意前の程度にまで進んでいたことが分かる。2000年以降の円安は、一般には余り意識されなかった。というのもドルの実効為替レートも平行して下落しており、円の対ドル 為替レートは余り変化がなかったからである(図録5070)。

 この大きな実質的円安水準は、海外と比べ極めて低い日本の金利水準と円で借金して海外通貨に替えて運用する投資行動に影響されており、産業の実力以上の円安であったとされる。このため、自動車産業を代表とする日本の輸出産業に輸出ドライブがかかり空前の好況を生んだ。ところが、昨年来の世界経済危機の影響で一気に円安から円高に転じ、また米国の消費不況の影響が重なって輸出が大きく落ち込んだため、これまで輸出産業の好調に支えられていた日本経済も大きく低迷することとなったと考えられる。

 米国ドルやユーロ圏通貨の実質実効為替レート の動きを詳しくここで解説することはできないが、日本円との関係では、米国ドルの実効レートが1990年前後までは日本円の実効レートと表裏の関係で動いていたのが、それ以降は、特にリンクがなくなり、近年では上述のように平行して低下傾向を示すまでとなった点が目立っている。かつて米国との貿易取引が中心だった時代は、対ドルの為替レート が支配的であり、またドル高やドル安の影響で円安、円高が決まっていた側面が強かったといえよう。

 近年では中国元やアジア諸国の通貨、また欧州ユーロ との関係が深まっている。2000年頃以降の円安傾向は、同時期のユーロ高傾向と表裏をなしているのが目立っている。2010年には、欧州特定国の財政危機を背景としたユーロ安が目立っており、ドルや円は逆に高くなる傾向である。
中国の通貨である元(人民元)は、2005年6月までは1ドル=約8.28元の固定相場制でした。中国の経済成長を考えると、本来はもっと元の価値は高くなるはずなのですが、そうなれば輸出で儲けている中国にとっては不利になるので、中国人民銀行が為替 市場に介入して、常に1ドル=8.28元程度になるよう調整していたのです。

ゆえに、円と元の為替相場と、円とドルの為替相場はほぼ同じように連動しています。下の為替レート 図は、レートの目盛りが同一レンジに収まるよう、範囲を調整したものです。二つの折れ線グラフの形がほぼ一致している事が、人民元と米ドルが固定されていたことを証明しています。

しかし2005年6月、中国政府は通貨バスケット制の導入を発表し、人民元の切り上げに踏み切りました。アメリカからの切り上げ圧力が最も大きな原因ですが、為替 介入する為の負担が大きくなりすぎた事も要因の一つでしょう。中国の外貨準備高(為替介入によって生じる外貨建て資産。相手国の国債など)は、2005年6月の段階で約7000億ドルと日本に次いで世界第2位の規模にまで膨れ上がっています。

為替介入、つまり「元売り=ドル買い」をする度に、中国政府はドル建て資産を抱える事になります。世界銀行の試算では、現在の「1ドル=約8.2元」という為替レート は、購買力平価で試算すれば約5分の1の評価だと述べられています。現在の5倍の元高になるかは分かりませんが、少なくとも将来的に「元高=ドル安」の為替相場になっていくことは、99%以上間違いないでしょう。

元高が進めば、外貨建て資産の価値は目減りします。例えば、中国政府がアメリカ国債を1ドル分買うには、現在は8.2元を支払う事になります。しかし数年後、この国債が満期を迎えて換金しようとした時、元高=ドル安が進んでいて1ドル=4元になっていれば・・・元ベースで考えた場合の資産が半減してしまうのです!

つまり極論すれば、為替介入して外貨準備高が増えるという事は、将来的な「負の資産」を抱える事だということです。それでも、輸出で儲けている中国にとって、元高になることは大きなマイナスですから、たとえ将来にツケを回すことになろうとも、為替 介入で元高を抑え、経済成長を支えている輸出産業を守ろうとしているのです。
サブプライムローン問題で円高ドル安が続いています。アメリカで起こった問題にも関わらず、為替レート が大きく変動しました。そして、ドルの為替レート が変動すると、他の通貨の為替レートも少なからず影響します。

今のような円高の為替レート こそ、外貨を購入する絶好のチャンスだと、多くの投資家は考えているようです。ですから、今、FXを始める人がとても増えています。

為替レート の変動があまりない通貨で人気のものは、人民元です。なにかと話題の中国ですが、人民元の為替レート はほとんど変動することがありません。それは、管理フロート制を導入しているからです。そして、この人民元は2005年に切り上げされましたが、今後も切り上げされる可能性が高いと見られています。

人民元は、1元約15.6円ととても安く手に入れられる上、人民元/円での取引が可能なため、初心者にもわかりやすく取引することができるというのも利点の一つです。