国鉄営業路線に最後まで残っていた北海道から蒸気機関車が消えたのは1975年12月だった。しかし、その年の大型連休頃までには北海道内の目ぼしい路線での無煙化が完了し、残る路線は室蘭本線(室蘭ー岩見沢)と夕張線(追分ー夕張)だけになっていた。中でも室蘭本線は蒸機牽引列車本数の多さという点で特筆すべきものがあり、「ひっきりなし」という表現がピッタリであった。しかし、同線は基本的には平坦線で沿線に急勾配区間があるわけでなく、なにはさておいても訪れるべきという撮影ポイントはなかった。だから、石北本線や宗谷本線、名寄本線、釧網本線等にまだ蒸機が残っていた頃にはファンの注目度は低かった。

↓参考までに当時のSL牽引列車が書かれた時刻表をお目にかける。(弘済出版社刊『SLダイヤ情報』通巻5号より)

僕らは1975年3月に室蘭本線を訪れた。既に宗谷本線や釧網本線では無煙化が達成されていた。僕らのそれまでの行程では1日わずか数本の蒸機列車しか撮ることができなかったが、ここで本数を稼ごうというわけである。前夜網走から夜行大雪のハネ(B寝台)に乗り込み、北見まで先頭に立つC58の汽笛を聴きながら眠りに就いた僕らは早朝の岩見沢で下車した。すぐに発車する室蘭本線の222レに乗り込んだ。この列車はC57牽引のはずだが、写真を撮ることはなかった。以前もこのブログに書いたが、なぜ撮らなかったのかは謎で、後悔するばかりである。栗丘には06:10着。結構な数の同業者が下車し、僕らも彼らに混じって栗山側に歩き始めた。栗丘と栗山の間にはちょっとした勾配があり、煙が期待できたのである。

まずは手始めに上下線が分かれるあたりの線路端に三脚を据えた。据えたはいいが下り線側だったので、やって来る列車はほぼ絶気状態。どうして煙の期待できる上り線側でなく下り線側だったのかはわからない。ネガを見ると重連の旅客列車(221レ)のコマがあるので、これが撮りたかったのではとも思ったが、正向きのまともなカットがない。221レは所定D51単機牽引なので、音もなく現れた重連を慌てて撮ったとしか思えない。

↓追分発岩見沢行きの820レ。なぜか上りの列車番号がつけられている。

↑↓苫小牧発岩見沢行きの221レ。所定はD51単機だが、この日は重連でやってきた。下の写真の背後に見える丘も撮影ポイントである。

いずれにしろいつまでもここにいても仕方がないので上り列車を撮れる場所に移動した。そこは線路が道路をオーバークロスする地点で、コンクリート製ポータルの上が平らになっている。皆そこでカメラを構えていたので、僕らもそれに従った。しかし、あまりいい立ち位置を確保できず、また、ウヤの列車もあったりで、結局1本しか撮影しなかった。

↑↓国道234号のオーバークロス地点から。雪がほとんどないのが残念ではある。この上り線は現在はトンネル内崩壊のため使用されていない。

次はどこで撮ろうかと仲間と鳩首協議する中で、ふと東側の丘に目をやると何人かの同業者が三脚を立てている。その丘に登る鉄チャン道もできている。あそこに行ってみようと即決。丘を登り切ると、線路のすぐ向こうを流れる夕張川、その背後に長沼の大地と、素晴らしい光景が広がっていた。

天気が良くなってきたこともあり、僕らはそこで腰を落ち着けて撮ることにした。僕は三脚にマミヤC220を据え付け、ペンタックスSPFは手持ちという態勢でC57の牽く旅客列車やD51の貨物列車を次々に撮り込んだ。特にC57の牽く旅客列車の速さには目を見張るものがあり、「SL=遅い」という認識を改めることになった。

すっかり満足した僕らは昼前に丘を降り、栗丘12:20発の226レで次の訪問先である追分機関区に向かった。この226レの写真ももちろん!?撮っていないが、調べてみるとDD51牽引のようで、こちらの方は今更ながらの後悔をしないですんだ。

↑↓東側にある丘に登ると素晴らしい光景が広がっていた。現在は栗丘ライディングパークになっているようだ。

 

最後にお知らせを。

突然ですが、You Tubeを始めることになりました。

チャンネル名を『機関車ラヂオ』といい、本日3本の番組が公開されました。内容は、Instagramにおいて#steam_locomotive_nostalgiaのハンドルネームで御尊父が撮影した蒸機現役時代の写真を中心に投稿している猫実マサヒロさんが発案・企画・編集した映像(写真や動画)に、猫実さんと僕が音声会話をかぶせたものです。特に猫実パパが蒸機現役時代に撮影した動画や写真は圧巻です。それらの映像を見るだけでも一見の価値があると思います。僕はポストSLのDLやDCなどの写真を提供しています。番組自体はアラ還前後のいい歳をした親父のダベリと言えなくもありませんが、国鉄時代のSLをはじめとした車両やかつての名撮影地を中心にアップしていくのではないかと思います。

皆様にご笑覧いただければ幸いです。