先日放映されたNHK-Eテレ『日曜美術館』で広田尚敬プロのお姿を久しぶりに拝見した。齢90というのに、今なお創作への意欲が衰えないことに敬意を通り越して驚異すら感じた。番組の中で広田プロが手持ちで撮影されていることに目がいった。
このブログを始めて間もない頃、僕が何故三脚を使うのかということを書いたことがある。それを要約して言えば、機動性を犠牲にしても三脚を使うのはアングルを固定することで考え抜いて決めた構図がずれないようにするためということである。
それはそうなのだが、先般大井町の東車セを見下ろす店で鉄呑みをした際(冒頭の番組の放映日以前のことだが)、蒸機撮影のことに話題が及び、ある重鎮の方が煙の状況に応じて臨機応変、咄嗟の構図変更ができるよう、三脚は使わず手持ちで撮影することが基本であるとおっしゃっていた。僕はなるほどそうかと感じ入り、今更ながら「ごもっとも」と思った。僕のメインターゲットは必ずしも蒸機とはいえないが、おっしゃっていることは蒸機に限らず当てはまると思ったのである。例えば、編成が長くて画面に収まりきれない場合の咄嗟の対応とか、車両と風景のバランスを急遽変えるとかいう場合など手持ちの方が機敏に対処できよう。そこに冒頭の広田プロの撮影スタンスである。
振り返ってみれば、中学から大学にかけての若い頃は手持ち撮影が主であった。三脚を用いるのは、予備・押さえとしてのカラーリバーサルの方で、メインのモノクロは手持ちで撮影していた。それがいつの間に三脚を常用するようになったのか振り返ると、それはペンタックス6×7という中判カメラを使い出してからだと思い至った。同機の使用経験のある方ならおわかりいただけると思うが、あのミラーショックの大きいカメラを手持ちで撮影することはブレのリスクが大きかった。中判カメラの使用はその後もペンタックス645、ハッセルブラッド500C/Mなど10年以上にわたって続いた。2000年代初頭にデジタル一眼レフに移行してからも、三脚を使い続けてこれまた20年以上になる。ニコンD一桁の重量級カメラとはいえ、ある意味惰性といえなくもない。そろそろ三脚の使用について考え直してもよいのではないかと思うようになった。
それは一つには旅の荷物が多くなることや重量の負担という側面もある。先日、日本航空(JAL)の現役機長による講演を聞いたが、旅することの多い機長の荷物は二つ以内にしている、それより増えると置き忘れるリスクがあると指摘されていた。荷物は少ないことに越したことはないというのだ。
他方、三脚には場所取りの道具という側面もある。特に同業者が集結する撮影ポイントでは三脚は必携である。でも、これも冷静に考えれば、僕は同業者が集中する激パの立ち位置は避けていることからして、場所取りとしての役割はあまりないと思い至った。
そんなことをあれこれ考えていると、これからは重くて頑丈な脚(ベルボン)にハスキーの雲台という組合せから卒業して、自由雲台付きの比較的小型軽量な三脚(昔の仏製ジッツオ)にコンバートしようと思った。三脚から綺麗さっぱり足を洗えないところが潔さに欠け、中途半端な感が否めないが、それは追い追いということで…。
以下に、近年三脚を使わずに撮影したカットのいくつかを(再掲のものもあるが)お目にかけたい。
↓御殿場線の山北駅付近は昔から桜の名所である。この日は仕事で山北町役場を訪問した。アポの時間より1時間ほど早めに着いて列車を撮影した。平日にもかかわらず、鉄ちゃんのほか一般ギャラリーもそこそこいた。(御殿場線山北〜谷峨/2026.3.30)
↓北浜駅展望台は人気スポットで競争が激しく、列車到着のかなり前からでないと良い場所は確保できない。この日は既に満杯で、下の狭い踊り場になんかとかスペースを確保することができた。この展望台は三脚使用禁止であった。それにしても展望台が取り壊されてしまったのはかえすがえすも残念である。(釧網本線北浜〜藻琴/2026.2.7)
↓大沼駅を通過する特急北斗。駒ヶ岳の頂上が雲に隠れているのが残念だが、函館空港に着いて挨拶がわりに真っ先に訪れた。1番線ホームでの撮影のため、三脚の使用を控えた。(函館本線大沼/2025.4.19)
↓芦別駅下り方にある踏切から列車の交換シーンを狙った。先着の下り列車(宗谷色)が停車する中、上り列車(ツートン)がやってきた。踏切を過ぎて遮断機が上がるかどうかわからなかったが、幸運にも遮断機が上がった。再び遮断機が下がるまでのわずかな時間に100-400ミリレンズを付けたカメラで撮影した。(根室本線芦別/2024.10.19)
↓在りし日の東滝川駅を望むこの撮り位置は国道のオーバークロス。歩道を占拠しての三脚は御法度なので使用を控えた。大型の車両が通ると跨線橋が揺れるのが気がかりで、列車通過時に大型車が背後を通らないことを祈りつつシャッターを切った。(根室本線東滝川/2024.6.9)
↓ご存じ浜小清水のフレトイの丘から撮影。展望台に続く小道に三脚を立てることは一般訪問者の顰蹙を買うので、ここではいつも手持ちで撮影する。流氷と知床連山が共に見えるのは、そこそこ稀である。(釧網本線浜小清水/2024.2.10)






