昔の鉄道趣味誌には「撮影地ガイド」なる記事が時々掲載されていた。『鉄道ファン』誌あたりで、蒸機が現役で走っていたSLブームの頃撮影の便宜を図るために始まったのだと思う。蒸機全廃後も時折全国各地の撮影ポイントを紹介していた。「撮影地は他人に教えてもらうものではなく、自分で見つけるものだ」「ガイドどおりに他人と同じ写真を撮ってなんになるのか」と、ガイド記事に批判的な人もいるにはいた。しかし、僕はガイド記事を大いに参考にしていた。もちろん自分で撮影適地を見つけ出したときの喜びは大きいが、右も左もわからない初めての線区などではガイド記事が役に立った。

↓各誌の撮影地ガイド

それと、昔から「名所の前後に穴場あり」という格言があり、これは結構当たっていたというのが実感である。だから、ガイド記事に記された場所だけでなく、その付近も丹念にロケハンしたものである。

それがいつの間にかガイド記事を見かけることがなくなった。インターネットや検索サイトの普及で撮影適地は雑誌という紙媒体によらずとも簡単に情報が得られるようになったことが理由ではないかと推察する。

いまやなんでもかんでもネットの検索でものごとが瞬時にわかる時代になった。飲みの席で酔っ払って口にしたことをその場でネット検索して確認する輩もいる。ああいうのはいかがなものかと思うが、そう思うようになると立派な時代遅れ人間になったのだとも思う。

↓鉄道ファン誌の撮影地ガイド

↓上の撮影地ガイドを頼りに訪れた現地で撮影した写真(1975年3月)

話が脱線した。近年の撮影場所探しはネットであたりをつけ、Googleマップとストリートビューで確認することが主流になっているのではないかと思う。それではネット検索などで撮影適地が見つけられるかというと、どうもそうではなさそうだ。昔からの有名撮影地、いわゆる名所はすぐにヒットするが、通好みの撮影ポイントや最近人気の撮影ポイントなどはネットで見つけられることはあまりない。これは、一つには、撮影地が混雑するのを嫌って、あるいは屑鉄が不始末をやらかして立入禁止となるのを避けようと情報を積極的に出さないことがあるのだろう。そういう撮影ポイントは口コミの世界でしか知ることができないようである。

それどころか良い写真が撮れるあまり知られていない撮影場所を無闇矢鱈にSNSにアップすると、自粛警察に怒られたり注意される昨今である。それが証拠に先頃大部分廃止された留萌本線の廃止区間で撮られた写真、それも初めて見るような撮り位置からの写真が廃止直後から次々にTwitterなどのSNSにアップされている。

インターネット時代になって情報が溢れるほど多くなっても、いや過多といえるほど多くなったからこそ、真に欲しい情報はかえってネットでは入手しづらく、昔ながらの口コミに頼らざるを得ないというのが逆説的でおもしろい。