前回は『トランス偽前史』と称し、トランス誕生以前にリリースされていた“プレ・トランス・サウンド”を紹介しましたが、今回はそれをハードコア・ギャバーでもやってしまおうという、如何にも安直で二番煎じ的な内容ではあります。まぁでもせっかく記事を書く気になったのだし、その衝動が残っているうちにやってしまおうと思います。
ブログで主に扱っているエレクトロニック・ダンス・サウンドは今この瞬間にも次々と派生・分岐を繰り返していて、私がそれらを聴き始めた1980年代後半期と、比較にならないほどに多数のジャンルが出揃っているのですが、それらのジャンルの殆どは突然変異的に発生したものではなく、多数のミュージシャン達が試行錯誤を繰り返すうち次第に骨格が形作られ、その分岐を無視出来なくなった段階でジャンル名を割り当てられる…という経過を辿っているものです。ハードコア・ギャバーにしてもそれは例外ではなく、最重要人物が一から全部確立させたという訳ではありません。とはいえ、“ハウス・ミュージックの父”とされるFrankie Knuckles同様、“ハードコア・ギャバーの父”的な役割を果たしたとされている人はいるもので、まず始めにその人からご登場願いましょうかね。

♪m-1 Pullover(first remix)
♪m-2 Pullover(original)
当時オランダのロッテルダム・クラブ・シーンにおける中心人物だったJochem PaapのSpeedy J名義による2ndシングルで、制作にはかのRichie Hawtinも参加している。
ベースラインを廃し、マーチ(行進曲)のリズムと見紛うようなイーブン・キック・ビートと単音シンセのみで構成した曲調には、当時のテクノ/ハウスのそれと似て非なる鋭角的な響きがあり、その後のハードコア・ギャバーを予見するかのようである。リミックスでは、やはりギャバーの定番であるリズム・マシンTR-909の割れたキック・ドラムが使われていることからして、シーンに及ぼした影響力が窺えよう。
このジャンルの源流を辿る上で外せないシングルだ。
Jochem Paapは元々ヒップホップDJとして活動していましたが、次第にハウス・ミュージックへと移行。オランダでは他に先駆けてシカゴ・アシッド・ハウスや、初期Underground Resistance(以下UR)周辺のハードコア・テクノといった曲をプレイしていたそうです。ソロ・ユニットSpeedy Jは、その当時彼がプレイしていたDJスタイルから取られたもので、おそらくターンテーブルのピッチを通常よりも過剰に上げてプレイするところに起因するものでしょう。
DJ活動の傍ら、テープ・エディットやリズム・マシンを使って曲作りも始めた彼は、ラジオ局に勤めていた友人の伝を頼ってデモ・トラックを送り、その一つがカナダのRichie Hawtinが運営するPlus 8レーベルで認められ、遂に本格的なミュージシャンとしての歩みを始めるようになるのです。
では、続けて彼のシングルをもう1枚紹介しましょう。

♪m-3 Three O' Three
♪m-4 Binaural Signal Generator
別名義Public Energyによる、Plus 8のサブ・レーベルからリリースしたシングル。その後彼が参加することになる、UKのWarpレーベルが提唱するA.I.(アーティシャフル・インテリジェンス)シリーズへ通じる片鱗と思しき繊細な音が散見されるタイトルトラックm-1も捨てがたいが、今回の特集としてはギャバー様式的なm-3を推しておきたいところ。
先に上で挙げたPulloverの延長線上といった曲調で、キック、スネア、クラップが同時に繰り出されるぶっきらぼうなリズムに、曲名が示すようなTB-303のアシッド・ベースを絡ませた代物。
これ以降、彼はハードコア・テクノ・シーンからは身を引いていく。
このようなシングルの人気によりロッテルダムのクラブ・シーンでは多数の模倣作が生まれ、Jochem Paapは“ゴッド・ファザー・オブ・ギャバー”の異名を頂くことになるのですが、当の本人にしてみれば不本意だったようです。実際、彼は活動初期から繊細な曲(De Orbitなど)も手掛けていましたし、寧ろそちらが主体だったことは、エレクトロ二カの出発点として機能したA.I.シリーズへ参加したことでも明白です(しかし、その後の諸作ではギャバーではないにしろ、暴力的なインダストリアル系のものも手掛けていますが)。
いち早くJochem Paapの才能を見出したテクノの重鎮Richie Hawtinも、ハードコア・テクノ・シーンで猛威を振るっていた一人です。彼もまた、その後のギャバーへと通じるシングルをリリースしています。

♪m-1 Jackhammer
♪m-2 Machine Gun(Circuit Breaker remix)
Daniel Bell、John Acquaviva、Richie Hawtinという、Plus 8レーベルの主要メンバー(当時)達が勢揃いしたユニットによる4thシングル。インダストリアル系やボディ・ミュージックからの影響に根差した暴力的なリズムを展開した“プレ・ギャバー”と云える内容で、特にタイトルトラックm-1の8分音符で連打されるキックドラムはまるでスピード・コアのよう。3rdシングル“Thrash”で辛うじて残っていたコードは殆ど排除され、あるのは高音ノイズと爆音リズムのみ。
当時既にEuromastersをはじめ、オランダ・ギャバーの様式は確立されていたようだが、それらの影響なのか、それともこのシングルがギャバー誕生へ貢献したのか…興味津々である。

♪m-1 Trac X (crazy 8's mix)
♪m-3 Trac Z
これもまたRichie Hawtinの別名義。一般的に本名義は、シングル“Experiments In Sound”収録の“Overkill”により、アシッド・ハウス・リバイバルへいち早く名乗りを挙げたことで有名だが、このシングルではその片鱗すらなく、あるのは割れたキックドラムとハイハットの響きだけである。後に素材系と喩えられるPlastikman名義の諸作でも、リズムセットのみで曲を作っているだけに、その萌芽と捉えるべきかも知れない。
彼もJochem Paap同様、当シングル以降は“プレ・ギャバー”的な作風から遠のいていく。
これらPlus 8レーベル周辺の曲群も、やはりロッテルダムのクラブ・シーンで頻繁にプレイされていたと聞きますし、ハードコア・ギャバー誕生へ直接影響を与えたものとして差し支えは無いと思います。何故なら1992年以降、彼らがプレ・ギャバー的な曲を殆ど手掛けていないことが理由として挙げられるからです。もし彼らがハードコア・ギャバー前夜のシーンから影響を受けているとするならば、その後もこのような曲を幾つか手掛けていてもおかしくはないでしょう。
次に、アメリカにおける、プレ・ギャバー的な軌跡を見ていきましょうか。かつてURの主要メンバーでハード・ミニマル・テクノの創始者Jeff Millsもまた、ギャバーのシーンへ影響を与えた一人です。

♪m-1 The Gardens
♪m-3 Curse Of The Gods
URを脱退して間もないJeff MillsとRobert Hoodが、大西洋に沈んだと伝えられる大陸アトランティスの伝説(架空)から着想を得て作られたシングル。翌年に同様の主題で制作されたアルバム“Atlantis
m-1こそ黎明期のハード・ミニマル的な曲調ではあるが、ことm-3においてはハードコア・ギャバーの趣がある割れたキックドラムのリズムを聴くことが出来る。これもまた、ハードコア・ギャバー前夜のシーンへ影響を与えたものとして捉えられるものだろう。

(1992年/ Tresor)
♪m-1 Phase 4
♪m-3 Changes Of Life
ハード・ミニマル・テクノを確立したとされる、本人名義での1stアルバム。ニューヨークの由緒あるクラブ“ライムライト”のレジデントDJとして活動しながら録音したもので、それまでDJとして招かれた街々の印象を反映させたとのことだが、本作の収録内容は、そのような背景を想像することすら躊躇うほどに鬼気迫る激しさを伴ったもの。
The HypnotistのThis Is My Houseをサンプリングしたm-3は一般的にギャバーキックの起源として認知されている曲。圧倒的疾走感を持つm-1は、恐慌と焦燥に苛まれながらも、半ばそれを客観視するような冷徹さが感じられる曲で、後のシュランツの原点に数えられるものと云えるのでは。
彼の代表曲としても知られるChanges Of Lifeは、ギャバー・キックの原点とされていますが、これまで挙げてきた曲群を聴いてみると、それは必ずしも正しくないことが判ります。何せ記事の最初に紹介したPullover epのリミックスで既にギャバー・キックの片鱗は見えているわけですから。
ともあれ、Jeff Millsの1992年における一連のリリースは、ハードコア・ギャバー黎明期に多大な影響を与えています。後にRotterdam recordsよりリリースされたHoly Noiseの別名義The Sound Of Rotterdamによる“Vol.1”のジャケット裏面に記載された『Special Thanks To …Jeff Mills』、DJ Paul ElstakとJoey BeltramによるユニットHard Attack“Vol.1”のヴァイナルに掘り込まれた『Special Thanks To… Jeff Mills, Lime Light, New York』が、その証と云えるでしょう。

Jeff Millsがニューヨークのクラブ“ライム・ライト”でレジデントDJとして活動していたことは前述しましたが、そこにはJoey BeltramやDamon Wild、Frankie Bones、Adam X等、後にシーンの筆頭格となるテクノ・ミュージシャン/DJ達がいました。資料によるとニューヨーカー達は、Jeff Millsの激しいDJを歓迎しなかったそうですが、それでも彼のDJは、数少ないながらもテクノ系ミュージシャン達の心をしっかりと掴んでいたのです。

(1992年/ Direct Drive)
♪m-2 Weisbaiden Attack
♪m-3 Jack Trippin'
現在もTraversable Wormhole名義で活動を続けるUSテクノ・シーンの古株Adam Xが、Audio Sexと共に自身のレーベルDirect Driveから発表したアシッド・ハードコア一色のシングル。彼もFrankie BonesやLenny Dee同様、アメリカではいち早くハード・テクノに取り組んでいただけあって、このような暗く冷たい質感あるプレ・ギャバー的曲調もお手のもの。
これ以降も似た特徴を持つシングルを複数リリースしており、本国アメリカよりもオランダのギャバー・シーンで人気を呼ぶことになる。
他にもライム・ライト繋がりでは、既に触れたようにJoey BeltramとDJ Paul Elstakがユニットを組んでシングルをリリースしていますが、それはギャバー確立以後の話ですので、ここでは割愛します。
他にもアメリカでは、意外なミュージシャンもこのジャンルに手を染めています。ついでに紹介しておきましょう。

♪m-3 Next Is The E (synthe mix)
♪m-5 Thousand
今ではエレクトリック・ミュージックの枠に嵌らない多才振りを発揮するMobyだが、当時はテクノ/ハウスやアンビエントを数多く手掛け、ヨーロッパのレイブ・シーンで引っ張りだこの存在だった。
本作は、当時数多く手掛けていたハウス・ミュージックの様式に則った人気シングルだが、m-5だけは例外。ロッテルダムのシーンに影響されたのかは定かでないのだが、いきなりスピード・コアの起源と見紛うような曲調が既にここで聴ける。時間と共にBPM値がどんどん増し、遂には曲名通り1000BPMを超過するギャバー・キックの連打に。
彼の経歴でギャバー的作風は後にも先にもこれだけだが、この突然変異的な曲は何故作る気になったのだろうか、興味深い。
ギャバーの成立には、シカゴ・アシッド・ハウスも一要素としてありますが、その中で比較的プレ・ギャバーと云えるミュージシャンと言えば…まず挙がるのは、この人でしょうか。

♪m-2 Hit Hard
♪m-8 160KM
♪m-9 The Power
シカゴ・アシッド・ハウス第二世代にあたるRobert Armaniが、イタリアのACVからリリースした2枚目のアルバム。彼の作るリズムも、多少ハウスから距離を置く角張ったものがあるが、この本作では更にそのような傾向が強く出ており、殆どギャバー・キックそのものと云えるような曲調が頻出している。m-8に至っては、160bpmを超過する高速リズムも披露。このような曲調をとるようになったのは、やはり同時期にハードコア路線を歩んでいたイタリアのDFCチームの影響もあると推測されるが、詳細は不明。
このアルバム以降でも同様のプレ・ギャバー的作風はそこかしこに見られるものの、彼自身はギャバー・シーンに関わっていない。
シカゴ・アシッド・ハウスの形式は、作っているミュージシャンが経済的理由で機材を多数揃えられないという背景から、どうしても簡素でリズム主体のプロダクションとなってしまったとのことですが、上で挙げたRobert Armaniのアルバムにも、そんな背景から生まれた作風が色濃く反映されていると思われます。ギャバーにおけるキックドラムの極端な強調は、こういうシカゴ・ハウスの作風を間接的に受け継いだことでなされた…とすることも出来る訳です。
上記でイタリアのDFCチームが出てきたので、関連として彼らのプレ・ギャバー的な作も併せて紹介しておきます。これも過去に記事で扱ったものですが、今回も都合上、無視は出来ないものと思います。

♪m-1 Orgasmico (DJ Ricci remix)
♪m-2 La Novena Sinfonia (Ricci DJ & DFC Team remix)
リリースは1993年であるが、収録内容は前年に発表したm-1と、その同時期にリリースされていたコンピレーション“Tendenthia vol.5”に収録されていたm-2を併せたシングルである。
ロッテルダムのシーンからの影響なのかは今一つはっきりしていないが、この鋭角的なリズムの打ち方はギャバーのそれと通じるもの。ベートーベンの交響曲である“歓喜の歌”のメロディラインを使ったm-2は特にその傾向が著しく、フットボール競技場のような喧騒とした雰囲気が感じられる。イタリアのハードコア・テクノ・シーンとオランダのそれとの関連性は、まだまだ謎な部分が多いので、今後の検証が待たれる。
因みにDFCのコンピレーション・アルバム“Tendenthia”シリーズでは、地元勢だけでなくURやThe Hypnotist、Cubic 22、そしてRobert Armaniなども参加していたりします。この辺りの詳細も追っていくと面白そうですが、話が脱線しそうなので今回は止めておきます。

♪m-1 Poison Blood
♪m-5 This Record
これもまたイタリア発のプレ・ギャバー的な内容。DFCとの繋がりも何かと深い彼の2ndシングルで、m-1ではいち早くギターフレーズを使い、ハード・ロック的な躍動と疾走感を作り出している。
m-5は耳障りなきついフレーズが印象的な曲調で、後にギャバー・クラシックスとしても認知された曲。いずれもハウス/テクノ的ではない、鋭角的なリズム感があり、イタリア産ハード・テクノがロッテルダムのギャバーにおいても、不可欠な要素だったことの証左と云えるものの一つであろう。
その後彼はロッテルダム・ギャバーの失速とともに、ギャバー的作風から身を引いてしまう。
オランダ・ハードコア・テクノ・シーンと関連性が強い国を挙げるなら、やはりドイツもそうでしょう。トランス発祥の地みたいな印象が強いドイツですが、実際はそうでもなく、ハードコア・テクノもかなり盛んです。特にフランクフルト産のものは、かなり激しさと暗さを伴った作も多かったり。

♪m-1 Butoh
♪m-2 Red Heat
ベルリン産トランスの立役者Cosmic BabyとMoony Jonzonのユニットだが、この名義でのリリースは、どちらかと言うとMoony Jonzonの作風が色濃く現れているのが特徴。同年主力拠点であるMFSからリリースした“Sonic Mind Explosion”もかなりハードコア・テクノ色が強かったが、本作は更に攻撃性能が増幅され、プレ・ギャバー色著しい内容になった。時間の経過とともにBPMが上下するm-1、16分アシッド・ベースを下地にしたm-2共にギャバー・キックで染められている。
どちらかというとオランダのシーンへの返歌と取るべきかも知れないが、前作から既にハードコア傾向が見られるだけに、迷うところではある。

(1992年/ Harthouse)
♪m-1 Lost In New York
♪m-3 Tribal Interphase
ニューエナジー系のリリースが多いMark NRGが別名義でリリースしたハード・トランスものだが、m-1のみは全く別。170bpmを超える強烈なイーブン・キック・ビートが鳴り響く、ギャバーそのものといった風情だが、ロッテルダムのシーンからの影響なのかは、やはり不明。
ここまで路線が固まっているところを察するに、やはりこれもギャバー確立以後の産物か。
いずれにせよ、ギャバー前夜のドイツとオランダの関係を考える上で、このレーベルが間接的に果たした役割も、密かに重要と思われる。
同じくフランクフルトと言えば、ジャーマン・ハードコア・テクノの先駆的存在だったMarc Acardipane率いるPlanet Core Productionsも忘れてはなりません。今回はその中でもプレ・ギャバー的である作品を幾つか挙げてみましょう。

(1992年/Dance Extasy 2001)
♪m-1 Play Da Same Ol' Song (Desperados Go West)
♪m-2 Mo District (Nuthin But A Bonebreaka)
PCPのサブ・レーベルからリリースされたMarc Acardipaneの別名義によるシングル。ギャバーに関しては、オランダのシーンを後追いしていた感あるPCP周辺だが、これを聴く限りでは、かなり早い段階でギャバー寄りの作風に着手していたことが判るだろう。m-1では、後のギャバーで多用されるギター・フレーズやスクリーミングが既に使われている辺り、やはりと思わせるものがあるし、後追いと言うより『共振』とするほうが正しいだろう。彼自身、かなり簡素で音響的な作風も多くリリースしているので、似た傾向を持つPlus 8レーベル周辺の影響から、このような曲調に転じたのかも知れない。

♪m-1 2017
これもMarc Acardipaneの別名義による片面シングル。彼は冷たいエフェクトと陰惨な曲調を好む傾向があるが、ここでも激しさこそ控えめながら、暗黒面を感じさせる内容である。
爆音キックドラムではないし、途中でブレイクビートに転じていくので、ギャバーとするには違和感を覚えるが、元々はこういう実験的作風を好む人だけに、試行錯誤段階の跡であると捉えるべきかも。
彼のシングルは、このように様式が完成されないような状態でリリースされる場合も多いので、当然ながら外れも多い。意外と緻密ではないほうなのだろうか。
ハードコア・テクノ発祥の地、ベルギーのプレ・ギャバーも捨て置けない要素です。Rotterdam Recordsを設立してオランダ・ギャバーの総帥となるPaul Elstakも、最初はベルギーのレーベルからのリリースでしたし、何かと縁は深いです。

♪m-1 White Line
♪m-2 Mind Creation
後にDJ Robによるremixを付加して再発されるなど、ハードコア・ギャバー・クラシックスとしても知られるKrid Sneroによる2ndシングル。
ギャバー・キックこそ使っていないものの、リズムの性急さ、ざらついたシンセサイザのフレーズの組み方からは、ギャバーの萌芽を感じ取ることが出来るだろう。
m-1、m-2共に、どことなく焦燥を感じる曲調である以外、特に目立つ点に乏しいが、このざらつくグリッサンドを効かせたフレーズは、後のロッテルダム・ギャバーでも頻繁に使われているものである。

♪m-1 Brainwasher
♪m-2 Defcon (theme)
最近はテック・ハウスを主に手掛けているFabian Van Messenによるシングルで、ベルギーでいち早くハウス・ミュージックを輩出していたARS傘下のHithouseからのリリース。
強烈な割れたイーブン・キック、歪むグリッサンド・フレーズと、どう聴いてもギャバー以外の何物でもないといった代物で、m-1では隠し味的にブレイク・ビートを使っていたりするのも先見性があると云えるのでは。
m-2では、Human Resourceの有名曲“Dominator”のグリッサンド・フレーズをそのままサンプリングで使っていたりする。
以上、僭越ながらハードコア・ギャバー前夜の作をざっと振り返ってみましたが、如何だったでしょうか。
今回はオランダ・ロッテルダム産のものを殆ど紹介しませんでしたが、これは比較して他国のほうがオランダ産よりも興味深いリリースが多かったし、“非”オランダ・ギャバー的な流れがこれだけあるのだということを紹介したかった為で、意図的にそうさせていただきました。
確かにギャバー誕生においてロッテルダムは重要であることに間違いありませんけれど、全てがロッテルダムから始まったというわけもないことを浮き彫りにしたかったということなのですね。憶測的な書き方が多く、全くもって不完全極まる記事ではありましたが、少しでもハードコア・ギャバー前夜の状況もなかなか面白いと思われたのなら、まさしく望外です。
紹介出来なかったり、流れ上重要作なのに紹介を忘れてしまっているものも沢山あると思いますが、もしそれを御存知の方は私に是非とも教えて下さるなら助かります。私もまだまだギャバー前夜に散った未知の作を聴いてみたいと願っている者ですので。
乱文長文最後まで読んで下さり、ありがとうございました。ではまた。