ブログの下調べとしてネットで検索をかけていても、なかなか意中の資料に巡り会えなくて困ることはいつものことですが、既に知っている情報でも内容が薄かったりして『これはもう少し肉付けしても良いのでは…』みたいな印象を持つこと、結構あると思います。私がやっているブログだって、その例外ではないでしょうから、読んでいて同様に『物足りないな』という印象を持たれているだろうなと考えてしまうこともしばし。
そのような訳で今回は、当ブログでもやたらと記事になることが多いクラブ・サウンドである『トランス』、その起源みたいなものを自分なりに肉付けして辿り直すという、他ブログでもテーマになる記事の模倣をしようかと思います。
付け焼き刃な知識しかない私が、他のテクノ/ハウス方面な記事が載っているブログを見て『物足りないので自分なりに補完します』というのだから、何を偉そうに血迷っているのだと突っ込まれても致し方ございません(笑)。何だか妙な前書きですね。
では、時代はいきなり1970年代にまで遡ります。

♪m-1 Phaedra
♪m-3 Movements of a Visionary
Edgar Froeseを中心とするジャーマン・ニュー・ウェーブの大御所ユニットで、テクノ/トランス・シーンへの影響力も絶大。
Christopher FrankeとPeter Baumannが参加していた時期(このアルバムと『Rubycon』、『Ricochet』辺り)が重要で、中でも本作による音像空間への没入度はずば抜けている。電子音を使って幻想空間を構築するという手法を確立出来たのは、これら諸作によるところが大きい。まだメモリすら存在せず、音をプログラミングすること自体が困難だった時代に、ここまで普遍性を持った曲群を作り出せたことは、驚嘆に値するだろう。
トランス・シーンへの影響を挙げるならば、特にCosmic Baby周辺のベルリン・トランスに、それらが際立って散見出来るだろうか。

Inventions For Electric Guitar
(1975年/ Kosmische Musik)
♪m-1 Echo Waves
♪m-2 Pluralis
幻覚剤乱用で参加メンバーから廃人も出すなど、何かとサイケデリック文化関連の話題に事欠かないバンドによる、実験要素満載のアルバム。中心人物であるManuel Göttschingが1984年に発表したE2-E4により、後にテクノ/トランス・シーンで影響力を発揮することになるが、その9年前に発表された本作は、E2-E4同様の時間と共に変化する16分アルペジオを使った前身的な作りであるが、しかしシンセサイザに聞こえる音は全てギターの音色を加工して作られていたりする。後にクラブ・ミュージックで頻出するこのシーケンス・パターンの、ある意味で原点ではなかろうか。

(1976年/ Les Disques Motors)
♪m-2 Oxygene 2
小室哲哉とも共演したこともあるフランスのシンセサイザ奏者の代表作として名高い、組曲形式によって編まれたアルバム。
クラシック音楽を下地に、アフリカ民族音楽の影響も消化して作られた本作は、これもまた非常に没入度の高い音像世界が構築されており、特に宇宙空間を漂うような浮遊感覚と叙情的なメロディラインが際立つm-2が印象的だ。
これまで幾度となく再発され続けるだけでなく、テクノ/トランス系ミュージシャン達(石野卓球によるものも!)によって夥しい数のリミックスが作られているので、シーンへの影響力は言わずもがなである。余談だが、ジャッキー・チェンのアクション映画『蛇拳』のサウンドトラックとしても使用されていた。

(1977年/ Oasis)
♪m-4 Utopia(Me Giorgio)
♪m-6 First Hand Experience In Second Hand Love
一般的にこの界隈では、故Donna Summerと組んで発表したI Feel Loveなどのエレクトリック・ディスコ(後にミュンヘン/イタロ・ディスコ)における先駆者として有名な、Giorgio Moroderによるコスミック・ディスコ・アルバム。
USディスコ界で経験した仕事を元に、前述した16分アルペジオ・シーケンスをディスコに応用した最初の作とされており、これが後にイタロ・ディスコの手本としてだけでなく、USディスコやソウルの発展系であるシカゴ・ハウスへ先祖帰りしたり、ハイ・エナジーやベルジャン・ニュービートの一要素となるなど、とてつもない影響をクラブ・シーンに及ぼした。当然、トランスへの影響については言うまでもないだろう。

♪m-1 Automat(the rise,the advance,the genus)
MCS-70というシンセサイザのみで制作されたという、イタリア電子音楽の草分け的なアルバム。
イタロ・ディスコに分類されるが、16分強に及ぶ叙情感一杯の郷愁旋律が印象的なm-1を始め、ベタ甘なメロディラインが特徴だった当時のイタリアン・プログレッシブ・ロックからの影響を濃厚に感じる出来栄え。発表より20年近く経過したイタロ・ディスコ再評価期になって、ようやくクラブ・シーンに認知されたという作品で、当時どのような影響をイタリアのシーンへ与えたのかは知る由も無いのだが、ユーロ・トランスにも通じるような音像世界への没入感には、抗いがたい魅力がある。
無視されがちだが、イタリアの電子音楽/クラブ・サウンドはトランスの進化を紐解く上で重要な流れだと思う。

(1978年/ Kling Klang)
♪m-2 Spacelab
♪m-5 Neonlicht
これまた有名作。ここで書くまでもない程に方々で語り倒された感があるが、参考なまでに。
シンセ・ポップを確立したとされる、彼らの7枚目にあたるアルバムである。影響力についても、ここで繰り返すのは躊躇したくなるが、敢えて言うならばSven VathやCosmic Babyといったジャーマン・トランス勢が電子音楽に走るきっかけを作ったバンドということで説明がつくだろうか。
本作では、上で挙げたGiorgio Moroderに影響されたのか、彼らにしては珍しく16分アルペジオ的手法が2曲で散見される。だが、これまで上で挙げた諸作のような酩酊感には多少乏しいかも。
まずは6作ほど挙げてみました。テクノやハウス等の前史とも重なる作品ばかりですね。トランスの歴史という一本線がある訳ではなく、実際は複雑に絡み合った紐みたいなもので、絶えず共振したり派生したり、関連を持った状態だったりするため、こういう書き方になる訳です。
文中で何度も重要作や有名作を連呼したりしていますが、若い世代でトランスを聴いている方々には『こんなの知らないし、第一、全然“トランス”っぽくないじゃないか』と思われても致し方ないですね。でも、90年代にトランス・シーンで名を成すトップ・ミュージシャン達は、大体このようなジャーマン・ニューウェーブ(プログレッシブ・ロック)、エレクトロ・ポップないしエレクトロ・ディスコを通過している人ばかりです。繋がりが薄そうではあっても決して無関係ではないですし、今のトランスに至る道であることは間違いないのです。しばらく年寄りの昔語りと思って我慢下さい(笑)。
では、次に80年代に入ってからの関連作を挙げていきましょう。70年代のものよりもクラブ・シーンに根差した音が多くなっていきます。

Italo Electro Disco Underground Classics
(2004年/ Irma)
♪m-6 'Lectric Workers - Robot is Systematic
♪m-12 Alexander Robotnick – Dance Boy Dance
イタロ・ディスコ再評価を受け、2004年にIrmaから発表されたコンピレーション・アルバム。地元イタリアのDJ、Gianluca Pandulloが選曲を担当している。
ユーロ・ビート/ハイ・エナジー前夜の1980年から1983年に亘る、イタロ・エレクトロ・ディスコ・シーンが輩出した成果の一端を知る上での好材と云えるだろう。このような曲群がアメリカのクラブ・シーンに逆輸入され、特にシカゴ・ハウス成立において重要な役割を果たした。

♪m-1 E2-E4
前述のAsh Ra Tempelでも紹介しているが、このジャーマン・ニューウェーブの系譜にあたる突然変異的アルバムが、数年後のハウス/テクノのシーンで発見され、再評価されることになったのは興味深いものがある。元々はクラブ・シーンを対象に作られたものではなかったのだが、故Larry Levanがレジデンシーを務めたクラブPradise Garageでプレイされたことは広く一般的に知られている話だ。沢から流れ落ちる湧き水のような、ひんやりとしたシンセサイザにギターの音が延々と50分弱に亘って絡み続けるだけの曲だが、緩やかな変化を伴って聴き手を深みに誘う。
これがイタリアのクラブ・シーンでハウス・ミュージックとして再構築される件は、当ブログのバックナンバーを参考のこと。トランス・シーンでも知られるようになったのは、そのイタリアン・ハウス・シーンを通過して以降のことだ。

♪m-2 Can You Feel It
確立して間もないシカゴ・ハウス・シーンにおける最重要作として知られるLarry Heardによるシングルで、影響力は世界中のテクノ/ハウス・シーンでも絶大。今だハウス・ミュージックのクラシックスとしてDJがプレイするほど。
この叙情的な風景を喚起させるメロディの響きは、それまでコードを知らなかった人間が作ったとは思えないほど完成度が高く、アシッド・ハウスを最初に輸入したイギリスを経由し、ヨーロッパでも知れ渡った。後にアンビエント・ハウスという概念が生まれた時、その始まりとしても認知されている。
トランス・シーンへの影響では、Mijk Van Dijkがこのシングルに触発された曲を作ったという話が特に有名。

♪m-1 Acid Tracks
またしても重要作。このシングルも様々な場で語り倒されたところがあるが、話の上で外せない。
一般的にイギリスを経由してヨーロッパのクラブ・シーンの根幹を築いたことだけでなく、ベルジャン・ニュービートやハードコア・テクノの確立に重要な役割を果たしたことでも知られる。
トランス・シーンへの影響では、ベルジャン・ニュービート・シーンからの通過型と、アシッド・ハウス・リバイバルの立役者Hardfloorによるものの模倣型などに分けられる。かのジャーマン・トランスの先駆者Sven Vathも、敬意からDJ Pierreにリミックスを依頼したりしていたほど。

♪m-1 Doughnut Dollies
上で挙げたアシッド・ハウスの流入を一因として生まれたベルジャン・ニュー・ビート・シーンの中でも、エレクトリック・ボディ・ミュージックの色合いが強く出ているシングルの一つ。
現在もテクノ・シーンで影響力を発揮しているR&Sレーベルによる、ニュービートのリリースを続けていた頃の作で、声をストリングスとして使ったことにより、後のトランスに通じる酩酊感を印象付けている。
このベルジャン・ニュービートの誕生については、当ブログのバックナンバーで詳しく触れているので、興味ある方は是非一読を。

(1988年/ Subway)
♪m-1 We Are All Egyptians
ベルジャン・ニュービート・シーンでは、著名なプロデューサであるMorton & Shermanの二人組による、夥しい数あるユニットの一つ。一度きりのリリースではあるが、ほんの僅かなメロディラインのぎらつきと、ロック調の太いベースラインによる力強いうねりを持つ本作は、簡素な作りでありながら、強く印象に残るものがある。もったりとした重量感ある低速リズムは、このジャンルが元々45回転のヴァイナルを33回転でプレイしたことから生まれたものであることを物語るもので、まさにベルジャン・ニュービートと呼べる曲である。
この後、徐々に洗練され、ハードコア・テクノやトランス等へ分化する。
ジャーマン・ニューウェーブ(プログレッシブ・ロック)、ハウス・ミュージック、ベルジャン・ニュービート…とばかりにトランスを成立させる駒が出揃ってきましたね。
さて、ここで多少流れを整理してみます。
70年代のジャーマン・ニューウェーブは、トランスの一要素、酩酊感と深みを印象付ける空間的奥行きなどの構築に貢献していくだけでなく、USディスコの影響で生まれたイタロ・ディスコとも結び付き、それがエレクトリック・ボディ・ミュージック/ベルジャン・ニュービートの一要素となっていきます。また、イタロ・ディスコは成熟した段階でUSディスコ・シーンへ波及し、Frankie KnucklesやRon Hardyにプレイされるなどして、ハウス・シーンの成立へも一役買うことになります。
ハウス・ミュージックのシーンからはアンビエント・ハウスやアシッド・ハウスという流れが生まれ、それがまたヨーロッパへ流入してベルジャン・ニュービートやハードコア・テクノなどの素地を作り上げていく…というのが、トランスへ至る大まかな流れですかね。かなり強引な整理ではありますが。
なお、USのデトロイト・テクノやスペインのバリアレス諸島の一つであるイビザ島で生まれたバレアリック、セカンド・サマー・オブ・ラブ等については、ばっさりと割愛します。確かに重要な要素ではあるのですが、話があまりにも複雑になるので別の機会へ譲らせて下さい(汗)。
では、いよいよベルジャン・ニュービートからトランスへと進む上での、通過点にあたる音源を紹介していきます。私は、この辺りのものを勝手に『プレ・トランス(トランス成立以前のトランス的クラブ・サウンド?)』と呼んでいますが、まぁこのブログでしか通用しない呼称ですね。

♪m-1 Alone (alley cat edit)
ドイツのダンス・ポップ・アクトであるCulture Beatのプロデューサとして有名な故Torsten Fenslauだが、実は彼もいち早くトランス的な音を手掛けていた先駆者だった。そんな彼の多数ある名義の一つによるシングルがこれ。
本作は、ドイツのシーンが如何にベルギーのニュービート・シーン寄りだったかを裏付けるものだが、同時にプレ・トランスとしても聴くことが出来る代物。角が立つベースラインを基調に、きめ細かいメロディラインが絡まり、どことなく冥界に引きずり込まれていくような曲調だ。
ここからは、ニュービートから派生したハードコア・テクノとも、また別の道が開けていく予兆が感じられる。

♪m-3 Luxuria (cutmaster g. techno age mix)
本来ならば先に紹介したE2-E4を下地とした『Sueno Latino(曲名)』を紹介するところだが、余りにも芸がないような気がするので、こちらを敢えて挙げさせていただく。
DFCチームがE2-E4をハウス・ミュージックに消化したことから提唱するようになったアンビエント・ハウスだが、当シングルもまた、その系譜に位置するものの一つ。クラブ・シーンの熱気から多少距離を置いたような、自然風景を喚起させる曲調は、そのままトランスとしてもおかしくないくらい似通ったものである。これら一連のアンビエント路線は、翌年にDFCが発表したコンピレーション『Ambient House』に纏められているが、後にジャーマン・トランス・シーンとも共振するチル・アウトと言われる路線の一端も、ここから始まっている。

♪m-1 Ultimo Imperio
♪m-2 Ultimo Imperio (remix)
当ブログのトランス関連記事で度々登場するユニットだが、またしても再登場。イタロ・ディスコからイタロ・ハウスへ歩を進め、アンビエント・ハウスの傑作Sueno Latino(上記参照)の大成功で名を成したDFCチームが、その真逆とも言える後期ベルジャン・ニュービートの影響を受けて作ったであろうシングル。
イタリアの低速コスミック・ディスコ帝王Daniele BaldelliのDJスタイルが、ベルジャン・ニュービートにおける原点の一つであるという逸話からも判るように、イタリアとベルギーのクラブ・シーンは何かと繋がりが深かった訳で、それがこのようなシングルの登場にも現れているとすることも出来るのでは。

♪m-1 The Age Of Love (flying mix)
♪m-3 The Age Of Love (boeing mix)
またぞろ有名作。重奏感ある荘厳なストリングスと、冷たい金属的なメロディが印象的な曲。
一般的にトランスの始まりとして認知されているだけでなく、Jam & Spoonのリミックスによりジャーマン・トランス・クラシックスとしても広く知られるシングルだが、本作を手掛けたBruno SanchioniとGiuseppe Chierchiaは元々イタリアのディスコ・シーンでの経歴が長いことからも察するに、上記で挙げたAtahualpaのシングルと同様、イタロ・ディスコ側からニュービートへと接近する過程を経て生まれたとするのが正しいと思う。

♪m-1 Freak Out
♪m-2 No Promises
ベルジャン・ニュービート・シーンからトランス・シーンへ移行し、現在もトランス・シーンで地道に活動を続けているPatrick Fasseauによる多数あるユニットからの1作。m-1はニュービートの攻撃的色合いを残しながらも、アシッド・ベースを下地に延々と引き伸ばされる涅槃のようなストリングスを絡ませた、ハード・トランスとしても通用するような曲調を披露。トランスの前身にベルジャン・ニュービートがあったことを裏付けるものの一つと云えるだろう。
m-2では逆に攻撃的曲調とは無縁の、柔らかい質感のストリングスとコーラスを全面に展開し、寂寥感溢れるディープ・トランス的な曲に仕上げられている。

♪m-1 He Chilled Out
♪m-1 He Chilled Out (remix)※another remix single only
後にR&Sレーベルで活躍するSven Van Heesを中心としたニュービート・プロジェクトによるシングル。敷き詰められた冷たい質感あるメロディラインと、暗闇に包まれていく海岸のような雰囲気を喚起させる曲調、まさしくトランスの前夜という風情だ。突如としてこのような音を手掛けたのは、やはりLenny DeeやJoey Beltram等、USハウス勢からの影響なのだろうか。実際この当時、ベルギーのシーン(R&Sレーベル)では彼らUSハウスのDJを紹介しようとする機運もあり、多分にその影響があったと推察するのだが、どうだろうか。
これを持ってしてトランスが始まったとは言い切れないだろうが、これまで挙げた要素がこの曲に凝縮されていると感じる。

(1990年/ Fourth Floor,Indisc,XL recordings)
♪m-1 Ease The Pressure (mental mix)
♪m-2 Ease The Pressure (hypnotic trance mix)
後にIndustrial Strengthを設立し、USギャバー・シーンで気を吐くことになるLenny Deeによる、ヨーロッパのシーンを意識して作られたであろうシングル。独特の質感を持つベースラインを下地に、無機質な電子音と囁くような声のサンプルが、まるで催眠を促すように展開していくm-1が秀逸。リミックスにあたるm-2は、どことなく郷愁感を刺激するメロディが加えられ、よりユーロ・トランスに近い曲調となっている。
この後、実際に彼はベルギーのR&SやイギリスのRising High等で活躍する機会を得ることになるのだが、そのきっかけである当シングルがプレ・トランス的作品だったことは、なかなか興味深いものがある。

♪m-1 The Calling
♪m-2 Eye Of The Mind
Joey Beltramと言えば、USだけでなく世界を又に掛けたテクノ・シーンの大御所として知られる重要人物。当時R&Sから発表した『Beltram vol.1』でハードコア・テクノの先駆者としてヨーロッパで大々的に名が知れ渡ったが、それと同時期に別名義でリリースしたシングルがこれ。
『Beltram vol.1』と同様にヨーロッパのシーンを意識した内容で、揺らぐようなストリングスとアシッド・ベースが靄掛かった闇のような情景を描くブレイクビート・トラックm-1、そのイーブン・キック版であるm-2とも、その後のトランスを予見するような曲調である。これと似た路線は、その後R&Sから何作もリリースされるシングルでも散見されている。

♪m-1 Space 3001 (UK mix)※remix single only
♪m-3 Andropolis (part 1)
R&SのオーナーRenaat VDNを始め、CJ Bolland、Cisco Ferreiraなど、錚々たる布陣によるユニットのラスト・シングル。
元はベルジャン・ニュービートのユニットだったのだが、本作ではUSハウス勢の影響なのか、リズムないしベース廻り共に洗練され、かなりハウス・ミュージック様式へ接近した内容となっている。
当時R&Sは既にハードコア・テクノ攻勢を始めていたが、このようなプレ・トランス的なリリースも並行しており、トランスの成立にも重要な役割を果たしていたと言えるだろう。深みあるベースラインと、コーラス・メロディが織り成す荘厳な雰囲気が印象的なm-3が、特にお勧めだ。
こうして挙げてみると、意外にもアメリカのDJが地味に重要な役割を果たしていることがわかりますね。アシッド・ハウスのDJ Pierre以外にも、Joey BeltramとLenny Deeがテクノ・シーンのみならず、ユーロ・トランス前段階にしても影響力があったということです。
さて、今回はこの辺にしておきますが、記事で書き落とした重要であろう作については、『何でこれは取り上げないんだ!!』と突っ込んで頂ければ助かりますので、是非とも指摘を宜しくお願いします。
それにしても、ここまで時代が下ったのにSven VathやCosmic Babyなどなど…といったジャーマン・トランス勢のディスクが紹介されませんが、この頃はまだ彼らもトランス的な音を手掛ける以前だし、今回の記事に見合う作でもなかったので見送りにしました。
また、黎明期のUKトランス勢についても触れるつもりでしたが、よく考えてみたら前に記事で書いたGuerillaレーベルの件でかなり触れてしまっているし、また次の機会に別な角度から取り上げたいと思います。
ではこの辺で…。