連日の雨と風のせいで
庭先に茂るキンモクセイから散りゆく花びらは
隣接する駐車場まで、その欠片が舞い踊り
車体をオレンジに覆い尽くす。
湿気が身体に纏わりつく曇り空の下
久しぶりに池袋徘徊。

整然と混沌が交わり合う
快活で浪漫溢れる街。
しのぎを削るラーメン激戦区で
今でこそ有名な無敵家だが
私が上京した頃、まだ行列は出来ていなかった。

五差路の交叉点を渡り
ジュンク堂裏、郵便局の手前
かぶら屋隣り。
以前の職場近くで、
私の食生活を支えてくれた
ベルデが閉店していたのは愕きだった。
入れ替わりの激しいこの地で
32年続いた、老舗の弁当屋。
特に私が好きだったのは、
唐揚げニコニコ弁当、350円。

ニコニコとは…
にっこりスマイルでは無く、
唐揚げ弁当の、唐揚げは4個入りで
醤油とガーリックの味付けをしたものが2種類あり
どちらかを選ぶことが出来る。
両方をチョイスし、2個づつ
または、1個と3個でも可能だが
多くの常連たちは、醤油とガーリックを
2個づつ頼む。
『唐揚げ、2個2個で‼︎』
と注文するのが通例で、
ニコニコ弁当として愛され続けた。
ヒロ伊藤(ONS)は当時の思いを
ブログにも綴っている。

ベルデの歴史は、幕を閉じ
豊島区役所も移転、時の流れと共に
変わり続ける街、姿を変えて在り続けるもの。

長い間、工事中だった南池袋公園は
綺麗に舗装され、オープンカフェで
談笑する会社員や学生たち。

季節が変わり、旅立ちの時だろうか
スズメたちよりも、一層大きく
ウグイスが鳴き声を張り上げていた。