第12話 書籍レビュー
『不道徳な見えざる手』
今回は、ジョージ・A・アカロフ、ロバート・J・シラー共著の
『不道徳な見えざる手』をレビューします。
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■何故この本を手にしたのか。
まさに表紙と帯に釣られたのです。
〇表紙には
『不道徳な見えざる手』の副題として、「自由市場は人間の弱み
につけこむ」とキャッチコピーにあります。
〇また帯には
ノーベル賞を受賞者による衝撃作
経済とは釣り師とカモの永遠の戦いである。と…
〇帯の裏にも
賢いはずのあの人がなぜカモられてしまうのか?
結婚式、お葬式、新車購入、住宅購入、金融商品、医薬品、選挙、
広告、ポテトチップス、タバコ、お酒…
知らずに皆んな釣られている。
〇表紙2には、
誇張、歪曲、隠蔽、水増し、ぼったくりはなぜなくならないのか?
この本は知的傑作だ。「見えざる手」のイメージががらりと
変わるだろう。:アラン・プラインダー
利益追求は豊かさだけでなく、だましも生み出すことを
示している。:ジョセフ・スティグリッシ
面白くて真面目な本。自由市場の標準理論がしょっちゅう間違う
ことを教えてくれる。:ダニ・ロドリック
すばらしい本だ。「行動革命」以降の最高の経済学。
:サミュエル・ボウルズ
〇そして表紙3
ジョージ・A・アカロフ:2001年にノーベル経済学賞受賞
ロバート・J・シラー:2013年ノーベル経済学賞を受賞
ここまで書かれると手にしない理由が無くなります。
■本書の概要
いつの時代になっても、人の弱味や勘違い等につけ込み、
欲しくもないもの買わせるような詐欺師は存在してきました。
「釣り」と「カモ」の事例から、アダム・スミスの主張した
「見えざる手の限界」を指摘し、現在の経済を読み解くための
意欲作だと考えられます。
一般的な経済学者は、こうした人の弱みにつけ込む詐欺は時折
起こる例外的な事象として捉えているのですが…
この著者たちは、あらかじめ自由主義システムに組み込まれている
と主張しています。
つまり経済は、「釣り師」と「カモ」の永遠の戦いであると…
また、社会心理学者のチャルディーニは「影響力の武器」
において、
セールスマンや広告主たちがどのようなテクニックを使って私たち
を誘導しているかを解き明かし、その対応策を示してくれました。
同じように本書の著者たちは、私たちがどのように「釣られる」
のかを解き明かし、それを防ぐための手段を提示してくれます。
□経済はごまかしに満ちている。(まえがき)
私たちの問題の多くは経済システムそれ自体の性質から生じている
と考えています。
私達著者2人は自由市場システムの崇拝者として本書を書いた
のですがその中で人々がもっと上手く方向性を見つけて欲しい
と願っています。
経済システムはごまかしだらけだし、皆んなもそれを理解して
おくべきです。
皆んな自分の尊厳と誠実さを保つために、このシステムを乗り切る
必要があります。
本書はあらゆるさ詐術を仕掛けられていて、自衛の必要がある
消費者の為に書いています。
ビジネスマンの為に、政府役人の為に、ボランティア、慈善家、
オピニオンリーダー達の為に書かれています。
そして将来にわたる仕事を前に、どうやってそこに個人的な意義を
見付けられるだろうかと思っている若者たちの為に書かれています。
こうした人々には全て「釣りの均衡研究」が役に立つと思ます。
つまり阻止しようという勇気ある手だてを講じない限り、
システムにごまかしと詐欺を組み込んでしまう経済の力の研究です。
□「釣り」と「カモ」について
「釣り」という単語はオークスフォード英語辞典によれば、WEBが
確立し始めた1996年に登場したようです。
「釣り」の定義は、インターネット上で特に有名な企業のふりを
したりするような作業を行い、個人情報を得たりすること、騙す
ことにより、個人情報を狙いオンライン作業を行なうことだと…
本書で私たちは「釣り」という単語に、新しいもっと広い意味を
つくり出しています。
コンピューターに関連する定義を比喩と考えています。
釣りを違法と見るのではなく、ずーっと一般的で歴史的にもずっと
さかのぼる定義であるとします。
「カモ」は理由はどうあれ、うまい事釣られてしまう人物です。
カモには2種類あります。心理的なカモと情報的なカモです。
「心理的なカモ」もまたさらに2種類に分れ、一つは感情が常識を
蹴倒す場合です。
もう1つは、認知バイアスのせいて現実を誤解してしまう場合です。
「情報的なカモ」は意図的に誤解を招くより、作り上げられた情報
に基づいて行動する場合です。
□カモ釣りがよく見られる4分野
どんな人も望んでいない、カモ釣りがよく見られる四つの広い領域
があります。
①個人の財務的な安定性に関する分野
②マクロ経済の安定性をめぐる分野
③人々の健康をめぐる分野
④政府統治の質をめぐる分野
この4分野それぞれで、カモ釣りが人々の生活に大きな影響を
持っています。
本書のねらいはカモを釣る側を沢山あげて、それが私たちの生活に
どれほど影響しているかを示すことです。
人々の活動、思考、目標、そしてその目標の失敗に影響が見られて
います。
一部の事情は日常生活で起こり、他はもっと系統的で専門的なもの
になります。例えば金融市場などです。
私たちはもっと広く定義されたカモ釣りに対する保護を必要と
しています。
□筆者紹介
〇ジョージ・A・アカロフ
ジョージタウン大学教授。2001年ノーベル経済学賞受賞
著書に
『アニマルスピリット』(シラーとの共著)
『アイデンティティ経済学』(レイチェル・クランドンとの共著)
〇ロバート・J・シラー
イェール大学スターリング経済学教授
2013年ノーベル経済学賞受賞
著書に
『アニマルスピリット』(アカロフとの共著)
『それでも金融はすばらしい』
『投機バブル 根拠なき熱狂』
『新しい金融秩序』
『バブルの正しい防ぎかた』など
〇山形浩生(やまがた ひろお)
1964年東京生まれ。
東京大学工学部系研究科都市工学科修士課程修了。
マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。
大手調査会社に勤務するかたわら、科学、文化、経済から
コンピューターまで、広範な分野での翻訳と執筆活動を行なう。
アカロフとシラーの前著『アニマルスピリット』や、
『アイデンティティ経済学』、
『それでも金融はすばらしい』を翻訳
クルーグマンほか『国際経済学』
ヒゲティ『21世紀の資本』、
アトキンソン『21世紀の不平等』(いずれも共著)
ワグナー&ワイツマン『気候変動クライシス』
等の翻訳を手がけています。
□本書のおもな主張
・経済システムは、ごまかしだらけで皆んなもそれを理解すべきだ。
・競争市場は、革新的なビジネスヒーローのやる気を引き出し
報いるのに長けてている。
・また一方で誠実とは言い難い行動を促す圧力も推奨されている。
・人々は驚くほどしょっちゅうカモとして釣られている。
・カモ釣りはいたるところに存在している。
・私たちの肩の上の猿は、私たちに深刻な影響を与える。
・悪いのは釣り師ではない、釣られる人でもない、カモ釣りを促す
システムだ。
・住宅購入や結婚式等特別な買い物はカモ釣りの絶好の機会だ。
・最悪の不景気をいくつも招いた最大の原因は金融市場の
カモ釣りだ。
・健康にとって、有害内容が未だに後を絶たない理由もカモ釣りだ。
・政治、選挙は最も単純なカモ釣りを起こしやすい。
・「カモ釣り」と「癌」には類似性がある。
・経済学者の市場理解には問題がある。
興味深いことが沢山書かれてあります。
現段階ではさっと読んだだけなのですが…
さらに深く読み込んでみたいと思っています。
個人的には楽しい本だと思っています。
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