「石井さん、石井さんはいませんか?」
バスガイドのきれいなお姉さんの声が車内に響いている。
私はバス座席に小さくなって聞こえないふりを
していた。
中学3年の修学旅行のバス車内の出来事だ。
私たちがバスに乗り込むとしばらくしてガイドさんは、
「これから歌をうたってもらいます。
歌う人は皆さんの名簿から私が指名しますね。」
と楽しそうにアナウンスをした。
私はそれを聞いて氷ついてしまった。
なぜかというと極度の上がり性の私は人前で話すのはもちろん
歌をうたうなんてトンデモナイことだったのだ。
そして息をひそめてじっとしていると、一番に指名されたのは
何と私だった!
あいうえお順の名簿がうらめしかった。
「それにしてもなんで自分なんだ」
考えても仕方ないことがグルグルと頭の中を回る中で
ダンマリを決め込んだ。
「石井さんはお休みですか?」
バスガイドさんのきれいな声が響き、
同級生はシラッとしていた。
しばらくしてちょっと困ったガイドさんは別の人を
指名し、何事もなかったかのように歌が始まった。
自分は恥ずかしくて消えてしまいたかった。
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これ以外にも学生時代のエピソードにはことかきません。
社会人になってからもそうでした。
職場の朝礼で 「朝の一言」 というのが
何週間かおきに回ってきました。
たったひとこと、1分くらい話せば済むのですが
当番の1~2週間前になると心臓がドキドキして
きました。
当日のことを考えるだけでも仕事が
手につかなくなるくらいでした。
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話しているとずっと続きそうなのでこれだけに
しておきますが(苦笑)、ともかくひどい上がり症でした。
でも今は、まだそこそこの上がり症ですが
症状はだいぶ和らぎました。
年を重ねて面の皮が厚くなったというのもありますが(笑)、
考え方を変えることで上がり症の症状が大きく変わる
ことが分かったのです。
当時の私は人前で話しをする前には次のようなことを
考えていました。
・ 下手な話をすると(自分の)頭が悪いと思われるのではないだろうか
・ (自分が)話している時オドオドないだろうか
・ 途中で支離滅裂な話になったら(自分は)どうしたら良いのだろう
考えることは 「自分の~」 「自分が~」 「自分は~」 ・・・
すべて自分のことでした。
そして考えれば考えるほど心配や不安な気持ちが
高まって上がってしまうのでした。
話は変わりますが、あなたはバスや電車に遅刻しそうになって
なりふり構わず走ったことはありませんか?
もし経験があれば分かると思いますが、
そんな時には周囲の目なんて気になりませんよね。
目的 (間に合うこと) を達成することに必死だからです。
上がり症の改善にもこの原理が役立ちます。
自分のことをあれこれ考えるはやめて、
相手のことや話す内容に集中するのです。
・ この人たちは自分の話をわざわざ聞いてくれるんだな。
・ どうしたら少しでも身のある内容にすることができるんだろう。
・ これと、これと、この内容が理解してもらえればいいな。
・ この内容を加えれば楽しんでもらえるかも。
などなど、とにかく
「相手を気持ち良くさせることに集中」
します。
1週間後に大勢の前で話をするけど上がり症で
困っている ・・・ といった方はぜひやってみてください。
相手のことに集中できれば上がり症は魔法のように
一瞬で消え去ります。