BAR CINEMA バーシネマ | 銀座BAR EVITA.のブログ

銀座BAR EVITA.のブログ

ようこそ EVITA.へ! 

誰かと語る、グラスと共に。自分と語る酒と共に。

ここでは当店のホームページで書ききれないことを語ったり近況報告などをさせていただきます。

このコーナーでは、2013年から小学館さん

ブログ『大人の逸品』の中で連載していた

記事を、転載許可を戴きご紹介致します。

BAR CINEMA

~この映画に乾杯!

第1回 : 

『カサブランカ』

~シャンパンとシャンパンカクテル~

BAR CINEMAへようこそ。

このバーでは、皆さまの記憶に残る映画の

ンを彩った素敵なお酒を、

映画の時代背景

お酒の由緒・成り立ちと合わせてご紹介し、

賞味いただきます。


Here's looking at you , kid.
お酒が映画の名シーンと言えば、
やはりこれ
1942年に公開された『カサブランカ』。
ハンフリー・ボガード演じる主人公リックが
、かつての恋人イルザ(イングリッド・バー
ン)に向かって語るこの台詞です。
「君の瞳に乾杯」という日本語訳(故 高瀬鎮夫氏
)による神憑り的な名訳といっていいでしょう。
男なら、一度は言ってみたいこの台詞。
しかし、実際に口説き文句として使ったらどう
るか...、怖い!
私にはとても使いこなせる言葉ではなさそうで
(涙)。

この映画は、第二次世界大戦下のフランス領
ッコのカサブランカを舞台にした物語です
1940年、ナチスがヨーロッパ各地を次々と
占領し、人々はポルトガルの首都リスボン
行きの航空券を求めてカサブランカへ集まっ
きます。
かつてパリで「オーロラ」というバーを営んで
たリックも、今はこの地で「リックス・
カフェアメリカ」というバーを経営して
いました。
こへ、パリで行方がわからなくなってしまっ
イルザが現れて....。

この映画の中でたびたび登場するお酒が、

フラスの銘酒シャンパンです。

二人がパリのバーで「君の瞳に乾杯」していたの

シャンパンで、その銘柄はマム。

エチケット(ラベル)に斜めに入った赤いライン

が目印で(映画はモノクロなので色は分かり

ませんが)、現在の商品のランアップでいうと

「コルドンルージュ」というシリーズになるで

しょう。


ご存じの方も多いかと思いますが、シャンパン

フランスのシャンパーニュ地方で生産される

性のワインです。

なので、発泡性(スパークリ)ワイン=

シャンパンというわけではありません

パリから北東150kmに位置するこの地域で作ら

たブドウのみを使い、瓶内での発酵で自然に

た炭酸ガスで発泡するもの。使って良い

ブドウ種はシャルドネ、ピノノワール、

ピノムニエほ8種類と規定されており、

さらに一定のガス圧クリアしたものだけが、

「シャンパン」の呼称をることができるのです

(一般的に、シャンパンス圧は4.5~6気圧

くらい。そのほかのスパーングワインは

2.5~4くらいです)。

さわやかな酸味とブドウの果実味豊かなこの

お酒は、繊細かつ力強い泡立ちで飲むものを

魅了します。パーティーなどの祝宴の乾杯に

ふさわしいお酒ですが、2人が愛をささやき合

う時にも“効果的”なお酒です。


シャンパンと砂糖、苦味酒(ビターズ)で作る
カクテル「シャンパンカクテル」。

この映画では「シャンパンカクテル」というクラ
カルなカクテルも登場します。
ナチス抵抗運動の指導者で、イルザの夫ラズロ
(ポール・ヘンリード)がカサブランカに逃れて
て、リックの店に初めて現れるシーン。ラズ
はイルザとともにテーブル席に座ると、フラ
ンスを代表するオレンジリキュール「コアントロ
ー」を注文します。コアントローは甘口のお酒で
食後酒としてよく楽しめるので、おそらく二人
は食事を済ませてきたのでしょう。そこへ、
レジスタンスの仲間がラズロに近寄ってきます。
ラズロは妻のイルザをテーブルに残し、その男
待つカウンターに移って「シャンパンカクテル
をふたつ」とバーテンダーに頼みます。
このシーンのこのお酒は、仲間に会ったラズロ
高揚した気分を表しているのではないでしょ
うか。コアントローでその夜を締めるはずが、
思わず「乾杯」から再スタートになったのですか
ら。

シャンパンカクテルのレシピは至って簡単です。
グラスに角砂糖をひとつ入れ、アンゴスチュラ
ターズというラムをベースにした苦いお酒を
数的垂らします。そこにシャンパンを注ぐと、
シルクのような泡がきめ細やかに上がってきま
す。
最初のひと口は辛口のシャンパンですが、徐々
角砂糖の効果が表れて、甘い味わいに変わっ
ていくという、楽しいカクテルです。
ビターズさえあれば、ご家庭でも手軽につくれ
から、ぜひお試しください。

第一次大戦の時に、パリのアンリ・バーで誕生
たカクテル『フレンチ75』。

最後にもう一杯。「フレンチ75」というカクテル
登場します。これはフランスの勝利を祈って
生まれたカクテルで、75口径の大砲がその名の
由来です。レシピはドライジン、レモンジュー
ス、砂糖をシェイクしてグラスに注ぎ、さらに
シャンパンを注ぐというもの。
リックにフラれたフランス人女性イボンヌが
リックの店のカウンターで、ドイツ兵と2人で
オーダーするのがこのカクテルです。彼女の周
りの客は「ドイツ兵と飲むなんて、なんて女だ」
とささやきますが、そのカクテルの意味を考え
ると皮肉に思えてます。このシーンは、この
カクテルの由来を知らずにオーダーしてしまう
ドイツ兵を小馬鹿にしているのかも知れません。

ちなみに、フレンチ75のシャンパンを普通の
ソーダに代えると、ジンフィズになります。
ですが、フレンチ75を作る際にはより注意が
必要です。
普通のソーダと違い、シャンパンには酸味が
あります。だから、同じ調合で作ると味が酸
っぱくなってしまうのです。かといって、
レモンジュースの量を抑えると間の抜けた
感じになってしまう、、、。
ということで私はレモンジュースも砂糖も
ガッチリ入れてしまうようにしています。
ただし使う砂糖は和三盆。甘味がさわやかな
和三盆を使うことで、酸味とのバランスが
うまくとれ、風味豊かな味わいに仕上がると
思います。
フレンチと和の出会いで生まれるこの一杯、バー
テンダーとしての腕の見せ所です。


1972年 東京 八王子生まれ。銀座と新宿のバー
で研鑽を積み、2004年銀座にバー・エビータ
オープン。
※この記事は「大人の逸品」
ブログ(小学館PAL SHOP)
に掲載された記事の転載です。
撮影/小倉雄一郞