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「とにかく、閣下だけでもお逃げ下さい!」
青クローク、いやジョーヌはそう主張するが、
「弟の部下を2人もやられて、おめおめとアイツに顔を合わせろっていうの!?」
ソネーヨは何か勝算でもあるのか、先ほどまでの弱腰を一転させ、強気だ。
『天命を、受けろーーーー!』
2人が言い合っている隙に、密かに接近したイビルバスターが斬魔聖龍刀を振り上げる!
「閣下!!」
ジョーヌがとっさに盾をソネーヨの前に出し、斬魔聖龍刀を受け止めた!しかし、光の柱が現れる様子は無い!?
『な、なに!?』
「調子に乗るな!この野郎!!」
イビルバスターが驚いた一瞬の隙を突き、刀を盾で押し返したジョーヌ。
そのまま、空いている右手でコウの体を押し飛ばした。大きく尻もちをつくイビルバスター。
「閣下ー!今です!お早く!!」
ジョーヌが振り返りざまにそう叫ぶ!しかし、その直後。
『天命を……』
空を見上げながらそうつぶやくイビルバスター。そしてジョーヌを見据え、体勢を立て直す。
「!?まだくるか!」
『受けろーーー!!』
飛びかかるようにジョーヌの背後を斬りつける!
みたび強く光り輝く斬魔聖龍刀。そして現れる光の柱。
斬りつけた勢いで回転し、背中からバッタリと地面に倒れるイビルバスター。
「ああ、ジョーヌーーー!」
ソネーヨの悔しさと悲しさが入り混じった叫びも、光の柱と共に夜の森に消えていった。
赤、黄、青のクローク剣士3人を、苦闘しつつも倒す事に成功したのである。

『さて、と。』
イビルバスターが起き上がり、ソネーヨに刀の尖端を向ける。
『もうお前一人だ!ソネーヨ!』
しかし、ソネーヨは動じていない。先ほど見せた強気は、どうやら虚勢ではないようだ。
「よくも、弟の部下を全員……!…でも!今のアンタは以前の化け物とは違って、理性があるみたいね……。」
何か意味深な発言と共に、ソネーヨが呪文を唱え始めた。
「An Ex Por…」
『何をするつもりだ!そんな魔法、私に勝つには無意味だぞ!』
「フンッ。誰がアンタに掛けるって言ったのよ?私が掛けるのは…」
そう言ったソネーヨが、イビルバスターから視線をそらし、その背後に移った。
「そこの娘よ!」
と言い放った直後、イビルバスターの背後から「きゃあっ!!」という女性の声!
驚いて振り返ったイビルバスターの目の前には、いつから居たのか、エリーゼの姿が有るではないか!
しかも、完全にパラライズの魔法を受けて、身動きが取れないでいる。
『なっ!?エリーゼ!?何で君がここに居るんだ!!』
「おやおや、知り合い?だったら話は早いわね。さっさとその武器をしまって!武装解除するのよ!」
ソネーヨの勝算とは、いつの間にか戦いを見に来ていたエリーゼだったのである。
何故ここにエリーゼが居るのか?それについては、少し時間軸を戻る必要が有る。
イビルバスターが、ちょうど3人の回転戦術に苦戦していた頃。場所はエリーゼの家、エリーゼの部屋。
ここで、彼女は机に向かって考え込んでいる様子だった。流石に落ち着きを取り戻し、冷静になっている。
「何で私、逃げちゃったんだろう…。血なんて見慣れてたはずなのに……。」
窓から外を見る。
「コウの言ってたやるべき事って、やっぱりあいつらを退治する事なのかなぁ。」

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他の2人も、青クロークにぶつかるまいと手綱を右へ左へと切り、陣形は意外にあっさりと崩れてしまったのである。
『今だ!!』と青クロークの馬の両前脚を斬魔聖龍刀で切り払う。
馬が苦しげにヒヒーーン、といなないた直後、前のめりに倒れ込むと、青クロークも「うわっ」と落馬してしまった。
「「「!ブル!!」」」
赤と黄クローク、そしてソネーヨの3人が同時に青クロークに向かって叫ぶ。
それを横に聞きながら、イビルバスターが青クロークに向き直る。
そして、斬魔聖龍刀を縦横無尽にブンブン振り回し始めた。
すると、本人は気づいているのかどうか、刀身が2倍の長さになったではないか!?
「なっ!そんな馬鹿な!?」
青クローク、いやブルはそれを見て狼狽し、恐怖に体を震わせ始めた。
『うおおーーーー!』
気合いと共に突撃したイビルバスターは、斬魔聖龍刀を横薙ぎにして振るう!
そしてブルのバシネットを直撃した斬魔聖龍刀!そこから、まばゆいばかりの光があふれ、ブルを光の柱が包み込んだ!
「「ブルーーーッ!!!」」
赤、黄クロークの2人の絶叫が夜の森に響く。
その光の柱が消えると同時に、ブルの存在、いや痕跡はその場から消え失せていた。
『…そうか、バシネットに斬魔聖龍刀をぶつければ、討つことが出来るのか…。これが、天命を与えるって事か?でも、この疲れは一体…』
ふと斬魔聖龍刀を見るイビルバスター。そこには、伸びた刀身が怪しく光っている。
『うお、刀身が伸びてたのか!余分に体力が吸われるのはこのせいか!?でもこれなら!』
「あ、アンタ何なの?…ねぇ何なの!?アンタ、一体何なのよ!!?」
ソネーヨが狼狽する。イビルバスターがソネーヨに向き直り、『私は正義の使者だ!』と叫びながら刀を振り上げる。
「「いけません!閣下ーーー!」」
とっさに赤クロークがソネーヨの前に飛び出してきた!黄クロークはソネーヨの背後を固めに回る。
『天命を、受けろーーーーー!』
気合いと共に、イビルバスターが斬魔聖龍刀を振り下ろした!その刀身は、僅かにバシネットをそれてクロークへ命中!
しかし、先ほどと同じように刀身から光があふれ出し、赤クロークは光の柱の中へ!
「ルージューーーー!」
叫ぶソネーヨが、光の柱へ手を伸ばそうとした瞬間。
「なりません!閣下!」
と、ソネーヨの左腕を掴んで引き戻す黄クローク。と同時にカランカラン、という音と共に転がるロングソード。
いつの間にか馬から下りていた上に、とっさに武器を棄ててソネーヨを引き戻していたのだ。
「ジョーヌ!何をするの!!」
「閣下をシターカ様の元へお連れするのが我らの任務です!これ以上は…」
と、2人が言い合っている間に光の柱は消滅。赤クローク、いやルージュの痕跡も、乗っていた馬と共に消滅していた。
『これは……クロークでも同じなのか?ん?』
突然イビルバスターの目の前に「残り時間 5分」と表示が現れる。
『なっ!マズイ!時間が有ったんだ!』
再び刀身へ何か意を込める。すると、長さが元に戻ったではないか。そして、
『ふぃー、残り時間の表示が消えた…。延びたって事か。よし、これなら何とか!』
イビルバスターが、残った2人を見ると、まだ何か言い合っていた。

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3人が同時に散開すると、イビルバスターの周りを一定の間隔を開けてグルグルと回り始めたではないか。
「や、やめ…」
…もはやこうなっては、ソネーヨの命令も声にならない。恐怖に包まれた彼の頭の中は、もはや正常に機能していないようだ。
「「「おおおーーー!!!」」」
と、突然3人は素早くイビルバスターの左前方、右前方、左後方の3方向から同時に突っ込む!
一方、どれを相手にするか迷うイビルバスター。
『ええーい、てりゃー!』
適当に斬魔聖龍刀を振り回す。だが、タイミングが合わず斬撃は外れ、代わりに
「「「ふんっ!!!」」」
と3方向から同時にロングソードを振り下ろす3人組。
見事に全て直撃し、『ぐあっ』とうめくイビルバスター。痛みは殆ど鎧が吸収しているが、衝撃だけはそのまま受けるようだ。
再び距離を取り、グルグルとイビルバスターの周りを回る3人。
『くそ!次はいつだ?いや、それより迷っちゃだめだ。的を絞らないと…』
斬魔聖龍刀を正面に構え、盾を左に構えつつ、3人の動きに合わせてその場で回転を始めた。
これなら敵の1体は確実に補足出来ると考えたのだ。
しかし、すぐ向かってくると踏んでいたイビルバスターの予想とは違い、今度は一向に攻めてこない。
やがて……。
『マ、マズイ。気分が…悪くなってきたぞ…。』
イビルバスターが、フラフラっと少しよろめいた。前屈みになり、呼吸を整えている。
その時を待っていたとばかりに、3人組が一斉に「「「とうっ!!!」」」と突っ込み、再び同時に斬りつけた。
『ぐっ、くそぉ!狙ってたのか!?』
苦し紛れに斬魔聖龍刀を振り回すが、ブォンという空しい音だけが聞こえる。

この様子を見ていたソネーヨは、目の前で戦っているのが自分の恐れる化け物とは違っている事にようやく気づいた。
「な、なーんだ。おどかしやがって…。変化する前ならこっちのものよ!3人とも、気絶させないよう注意して戦いなさーい!」
ソネーヨが下した指示に、「「「了解!!!」」」と答える3人。
『…き、気絶?一体何の話…?いやそれより』
目の前にいる3人をどうやって分散させるか、その事の方が、イビルバスターにとって重要だった。
目まいは治まっているものの、彼らの3点同時攻撃を防ぐには、何か打開策を見つけなければならない。
「「「それっ!!!」」」
『ぐぅっ!』
「「「えやぁ!!!」」」
『いてっ!』
その間にも、同時攻撃は繰り返される。
「これならどう?Kal Vas Flam……」
ソネーヨもフレイムストライクの魔法で攻撃を始める。
『うわチチチ!!』
火傷こそ負わないが、ファイアフィールドの時よりは熱く感じたようだ。
『くそ、このままじゃムダに時間が切れる…こうなったら!』
その刹那、イビルバスターの脳裏に、『天命を与えよ』という謎の言葉が突然浮かんだ。
『!何だ?…いや、そんな事よりも、今やらなきゃならないのは!』
素早く横に構えていた盾を正面へ構え直し、『正面防御一点突破ぁあ!』のかけ声と共に、回る3人組の方へ突進する!
「何と!!?」イビルバスターの正面に突っ込む形となった青クロークが、思わず手綱を引き、馬を急停止させてしまった!

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バッグから斬魔聖龍刀を取り出し、スイッチに指をかけ、「変換!」カチッと押し込んだ。
筒の先端からオレンジ色に光る刀身が伸びて強く輝く。そして刀身から飛び出す、9体の黄金に輝く龍。
それらが、コウの両脚、両手、両腕、胴、頭の各部位を護る黄金の鎧に変化し、次々に装着される。
そして最後の1体がオーダーシールドに変化してコウの左手に収まった瞬間、全身の装備が真紅に染まった。
『変換完了!イビルバスター!!』
会武爺に言われた通りイビルバスターへと変換を終えた彼は、その場で耳を澄まし、敵の接近に備える。
しばらくすると、遠くからドドドドッという音が近づいてくる。

さて、ここで少し時間を戻し、場面を移そう。
今はちょうどコウが雷に打たれて気絶している時。
場所はネオ・CFギルドの第十五拠点。
ちょうど、3人組がソネーヨを迎えに来たところだ。
「「「ソネーヨ閣下ぁ、お迎えに上がりましたぁ!」」」
3人同時にソネーヨを呼ぶと、しばらくして拠点の扉が開いた。
「お前達、うるさいわよ!あの化け物が近くに居たらどうするのっ!!」
出てきて早々、甲高い声で3人を叱りつけるソネーヨ。
「はあ、申し訳御座いませんでした、閣下。」と赤クローク。
「馬はご用意しております故、お早くお乗り下さい。」と青クローク。
「しかしお言葉ですが、閣下のお声の方が我らより数段大きく聞こえ」と黄クロークが言いかけると、
「やかまっしぃ!…ゎょ。…もういいわ、急いでここから離れるわよ。」
そう言ってサッと馬にまたがる姿は、1つの拠点を任せられるだけあって、どことなく優雅にも見える。
「「では、私ら2人が先導します。」」と赤と黄のクローク。
「私が最後尾を。」青のクロークがそう言って、ソネーヨの後方へ回る。
「よし、出発するわよ!」
ソネーヨが手綱を強く引くと、ヒヒーーンと馬が後ろ足で立ち上がる。
その着地に合わせて、3人が同時に馬へムチを入れ、ちょうど全員同じスタートを切ったのである。
そして、第十六拠点へと向かう。その先にイビルバスターが待っているとは知らずに。

おぼろげに聞こえていた馬の蹄の音が、どんどん近づいて来た。
しかし、あと僅かというところで、突然馬が急停止したではないか。
「うわああああーーーー!!!」
けたたましい叫び声を上げたかと思うと、直後にドサッと馬から落ちた音が聞こえた。
「オレンジに光る刀……、紅い鎧…、ばっばけものが何故ここに!!?」
狼狽し、恐れおののき、腰が抜けた様子のソネーヨ。
一方、斬魔聖龍刀の尖端を4人に向けるイビルバスター。
『待っていたぞ!CFギルドの悪党め!』
そう言って、今度は天を指し、
『正義の使者、イビルバスターが、お前らを倒してやる!』
内心、決まったと思っているイビルバスターだが、場の空気は少し白けている。
「…化け物ですと?この赤い奴がですか?」と呆れたように青クローク。
「我らは、閣下をお守りする護衛役。」と黄クローク。
「ならば、立ちふさがる者は全て、」と赤クローク。
「「「斬ってよし!いざっ!!」」」

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困惑するコウが、苦し紛れに
「僕は……仲間が、そうだ。仲間が見えたから合流しに行くんだよ!」と言ってみる。
「ウソよ!そんなのウソ!」
が、案の定エリーゼは一歩も引かない。
「じゃあ証拠を見せようか。ほら、これはネオ・CFギルドのメンバーしか使えない武器だぞぅ!」
そう言って、斬魔聖龍刀を取り出して見せる。だが、それを見てエリーゼは「きゃあーー!」と悲鳴を上げた。
反応が余りに大げさだったのを不思議に思い、コウが斬魔聖龍刀を見る。と、そこには大量の血痕がびっしりと付いていたのである!
「うおっ、と!そ、そーら、これが証拠だ!」
そう言いながら、斬魔聖龍刀をエリーゼに見せつけるコウ。だが、内心は決して穏やかではない。何せ覚えがない血痕なのだ。
だが、おびえ始めたエリーゼを離すチャンスと見て、精一杯強がって見せる。
「い、いやーー!」と、ついにエリーゼが家へと逃げてしまった。
「よっよーし、これで追ってこないだろう。今のうちに!」
斬魔聖龍刀をカバンにしまい込み、3人が走っていった方へと向かう。
「おかしい、何で斬魔聖龍刀に血痕があるんだ!?もう乾いてて取れそうにないし。」
走りながら必死に血の跡を拭おうとする。だが、水にでも浸さなければ取れそうになかった。
その時。にわかに空の雲行きが怪しくなり、雷鳴が響き始めた。
「ん?変だぞ?急に雷雲なんて。」
コウが立ち止まり、雨宿り出来そうな場所を探そうとした瞬間!
突然目の前が真っ白になり、意識がどこかへ吹き飛んだ。雷の直撃を受けたのだ。
コウは、その場にばったりと倒れてしまったのである。
「うーん、…ここは?」
コウが目覚めると、夜のものとは比較にならない、闇の中だった。
「ひょっひょっひょ。また会うたな、青年よ。」
ぼうっと闇の中から、ランタンを持った老人が現れた。
「え、会武爺!? 何で?ここは秘密の花園じゃないのに…。」
意外すぎる再会に、戸惑うコウ。
「そんな事はどうでもええ。で、どうじゃったかな?」
「何がですか?」質問の意図を読み取りきれないコウ。
「イビルバスターとして悪を斬った感想じゃよ。素晴らしい力だったじゃろう?」
どうやら何か感想を聞きたい様子の会武爺。期待で目が輝いている。
「え?いや、確かにすごい力ですけど、でも斬った覚えは無いですよ?」
コウは自分には身に覚えがない血痕の事や、気絶して起きたら違う場所に居たこと等を会武爺に話した。
「ふうむ、おかしいのぉ。記憶を一部失うただけじゃなかろうか?勝手に動くはずは無いしのぉ……。」
「とにかく、斬り殺した感覚は一切ありませんでした。」
「そうか、まあ覚えとらんなら仕方がない。まぁ頑張ってのぉ。ひょっひょっひょ。」
会武爺が笑いながら空中へと浮かんでいく。いつか見た光景だ。
「そうそう、もうじきここへ連中が来るでのう。変換しておくんじゃぞ。良いな?」
そう言い残して、闇の中へ溶けるように消えた会武爺。

「ええ!?」
と叫んで起き上がったコウ。辺りはまだ夜だったが、完全な闇では無い。どうやらあれは、会武爺の特別な空間だったようだ。
「もうすぐここを、ネオ・CFギルドが通る?さっきの奴らかな。よし。」
周囲を見回す。だが、人の姿は無いし気配もない。