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「では、以上で御前会議を終わる。各自持ち場に戻り、与えられた任務を開始せよ。」
みんなやれやれと言った表情で退室していく。それを見届けてから、改めてファストがキョウコの前にひざまづく。
「キョウコ女王陛下。我らがCFギルドに逆らう愚か者は、もう間も無くで処刑できましょう。どうか、御心労あそばされませぬよう…」
畏まって奏上するファストであったが、キョウコは、それを途中で打ち消すように、
「ネオ・CFギルドは、わらわ在る限り何も案ずる事は無い。ファスト総統、そちの統率に期待しておるぞ。」
とわずかに言い残し、広間を出て行った。
その様子を、また意味深な笑みを浮かべて見届けた後、彼も退室したのだった。
その後、イビルバスターがシターカを圧倒的な力で討った場面に居合わせ、大慌てで逃げ去った中の数人が第十四拠点へ逃げ込み、「赤色の具足を身に着けた何者かが、光る刃でシターカ閣下を討ち取ってしまった。」と報告した。
第十四拠点長のネープルは驚いたが、報告している者全員が目の前で目撃している事で情報に間違いはないと判断し、本部へ通報した。そして、その報告を受けた将軍ゼウストは、すぐさまファストへこの情報を伝えた。
「確かなのか?そんな伝説めいた報告が。」
と最初はファストも疑っていたが、
「ネープルは弓使いが多いライジングサンに当たっているんだぜ!?奴に限って虚偽の報告をするとは思えないぜ!」
と強く報告内容を支持した事で、ファストも報告を受理した。その上で、
「今後、この謎の敵を【真紅の的】と呼称する。全拠点にこの旨を通知しておけ。」
とゼウストに指示を出した。
「合点だぜ!それにしても、会議が終わってすぐのタイミングで情報が入るなんて、今日は良い日だぜ!早速通達を出すぜ!」
ゼウストは喜んでファストの部屋を退出したが、ファストの表情は険しい。
「まさか、爺英夢(じいえいむ)が裏で手を引いている、などと言うことはあるまいな。真紅の的が使うという技、奴がキョウコに渡したあの杖に通じるものがある気がする…。だが直接訊く訳には…。」
ファストは独り、思案を巡らせている様子だ。それにしても、キョウコに杖を渡したという爺英夢とは一体何者なのだろうか。

第三幕 弓師の町にご用心。
さて、スカラブレイを目指しているコウだったが、先程までの薄曇りが一転して突然雲が厚くなり、加えて雲行きが怪しくなった。
「うわ、また急に…こりゃ降ってくるかな。」
そう思っていた矢先、遠くで雷鳴が轟いたかと思うと、瞬く間にコウへ雷が直撃した。
「ま、また…」
コウがバタリと倒れる。

「ひょっひょっひょっ、コウよ。オヌシには良い報せじゃゾ。」
真っ暗な闇にボウっと会武爺が浮かんでいた。
「やっぱり会武爺だったか、今度は何です?」
コウはあからさまに不機嫌を顔に出す。
「オヌシが倒したソネーヨについてじゃよ。今しがた終わりの世へ向かったでな、その顛末を教えてやろうと思うてのう。」
それを聞いてコウに少なからぬ驚きと期待の色が浮かんだ。もう先程の不機嫌は消えている様子である。
「そ、それは是非!エリーゼの墓前で報告したいですから。」
「いや、それはならん!先に言うた通りあの娘はもうグレイトマスターに転生しておる。その墓にはもう何の意味も無い。時間の無駄は許さぬ。」

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「最近、我がネオ・CFギルドに対し、愚かにも反抗する者が現れた。その者とは如何なる輩か。」
読み終えると、キョウコは幹部を見回し、静かに「開会」とだけ告げた。
それを聞くや否や、ゼウストが挙手をする。発言許可を求めているようだ。
「まずはゼウストか。これは確かに貴公の管轄だな、では報告せよ。」
ゼウストはすっと起立すると、太い声で報告を始めた。
「この案件については、シターカ拠点長からの報告を受けているぜ!現在詳細を各地に問い合わせ、また同時に警戒態勢を敷いているぜ!しかし、襲撃を受けた第十六拠点と、助けを求めて来たという第十五拠点とは連絡が取れないぜ!」
それを聞くと、ファストの眉がピクリと動いた。
「…まだ結論を急ぐべきではないぜ!だが、俺の考えを申し上げるなら、これらの拠点は殲滅の憂き目に遭っているかと思われるぜ!」
そういい終わるとゼウストは静かに着席した。
「我がCFギルドには敵が多い。残念な事だが、それは事実だ。問題は、その不届き者が何処のギルドに属する者か、という事だが…」
ファストが感情を殺したような声でゼウストの報告に答える。と、すぐにリリーが挙手をする。
「リリー人事官か。発言を許可する。」
許可を受けて、リリーはのらりと起立する。
「そのことにつきましてはー、早急に敵性ギルドの拠点近くにあるー、我がネオ・CFギルド拠点から数名を選定しー、調査に当たらせますー。」
そう言い終わると、彼はひょうひょうと席に着く。
「リリー人事官、調査は出来る限り迅速に行うように。また、不測の事態に備えて、いつでも戦闘可能な態勢で臨むのだ。」
そう聞いたゼウストが再度挙手をし、起立する。
「武具についての報告が遅れましたぜ。現在、ネオ・CFギルド戦闘員に対する武具の配備率は、約…」
そこまで言いかけたゼウストは、一瞬だけゴートの顔を見てから「70%ですぜ!」と結んで着席した。
すぐさまファストはゴートを指差して首を軽く上下に数回振り、起立を促す。すると苦虫を潰したような顔を浮かべてゴートが起立した。
「ゴート鍛治頭!至急、拠点全員に装備を配布する体制を調えよ!一刻も早くだ!」
彼が起立するや否や、烈火の如くゴートを叱責するファストと、それを睨むように見つめながら聞くゴート。
この張り詰めた空気は相当重いらしく、リリーはそっぽを向いて逃げの一手である。
ゴートは声を震わせながら、
「…わかりもうした。しかしながら!」
一気に噴出す『何か』を一瞬こらえた後、深呼吸して気持ちを落ち着かせて続ける。
「武具の作成にはそれなりの日数が掛かりもうす。少しお時間を頂けもうせぬか?」
しかし、それを聞いたファストは、怒髪、冠ならぬ帽子を衝く勢いで怒号を発した。
「ならぬ!この後すぐにでも取り掛かれ!我らCFギルドの同志を見殺しにしたいのか!!?」
この空気には、キョウコでさえ、息を殺しているかのような詰まった呼吸音を立てている。
「……わかりもうした。」
しばしの沈黙後、ゴートはそう言って静かに着席した。しかし、目は相変わらずファスト総統を睨んでいる。
それを見て、これ以上会議を続けられないと判断したのか、キョウコが静かに口を開く。
「もうよい。大儀であった。みな、それぞれの立場から、このネオ・CFギルドを守り立てて欲しい。」
ファストもその言葉を救いに思ったようで、すぐさま後に続ける。

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コウの指が地図の上を往復する。
「そう言えば、ソネーヨもシターカも、赤色のバシネットを被ってたっけ。でも三色クローク剣士が被ってたのは普通の鉄製バシネットみたいだったし。やっぱり赤色のバシネットは各拠点のリーダーって意味だろうか。」
コウは記憶していないが、ソネーヨの配下だったシュラは、ソネーヨが第十五拠点長だと明言していた。
「そうすると、リーダーが2人死んだ訳だから、このガードポスト近くにある16のピンと、東にある15のピンは要らなくなったかな。」
そう言いつつ、地図からピンを2本取り除いた。コウは全く気付かなかったが、16のピンはちょうどオンシの場所だったのである。
「すると、次の目標は……ここか。」
コウの視線には、ここから南へずっと下った先、スカラブレイのすぐ北辺りに刺さったピンがあった。14と書いている。
「14番……どんな場所だろう。スカラブレイはまだ行った事がないな。」
スカラブレイまでの道順を一通り確認すると、地図を丸めてカバンへ納めた。
「あ、そうそう。アレはまだ有るかな?」
コウは何か思い出したように2階へ上がると、シターカが大量の肉を出してきた棚を開け、中を物色する。
「お、お、お。まだこんなに残ってたか~。」
先程まで死体に恐れおののいていた割には、落ち着きを取り戻したとは言え、早くも肉を見て平然とするどころか、嬉々としてそれに触れているコウは、案外図太い神経の持ち主なのかもしれない。
それはさておき、シターカはまだかなりの量の肉を隠していた様だ。しかし、実はその更に奥へコミュニケーションクリスタルが隠してあったのだが、コウは全くそれには気付かなかった。
カバンに入るだけ肉を詰め込んでからガードポストの外へ出ると、いつの間にか雲が空を占め始めている。雨はまだ降りそうにないが、時間が分からなくなるのは辛い。感覚ではまだ昼まで少し時間があるというところか。
「さて、それじゃ出発しようか。」コウが勇んで街道を西へ、そして南へと歩き出した。ちょうどその頃。

ここはジェローム本島にある図書館、の地下にある小さな会議室。ここでは時々、ネオ・CFギルドの幹部が集まって会議を行っているのである。今もこの場には幹部が緊急招集されていた。
その顔ぶれは次の通り。まずテーブル中央にある一際目立つ豪華な座席に、ネオ・CFギルド女王、キョウコ。キョウコの左側手前には総統ファスト。その左隣にはギルド内の人事を司る人事官リリー。キョウコの右側手前には戦争の指揮や拠点の状況を把握する将軍ゼウスト。その右隣にはギルド内の装備品を一手に生産する鍛治頭ゴート。以上5名である。なお、この面々はネオ・CFギルドの最高幹部でもある。
さて、キョウコとファストを除く全員が皆落ち着かないと言った表情で、ファストが開始の合図を出すのを待っていた。
すると、壁に掛けられた時計で時刻を確認したファストが、よく通る声で宣言する。
「それではこれより、女王陛下ご臨席による、御前会議を行う。女王陛下に忠誠を誓う者は、挙手にて応えよ。」
その言葉に、まずゼウスト、次いでリリー、それに少し遅れる形でゆっくりとゴートが挙手をした。ゴートの遅さに眉を一瞬ひそめたファストは、すぐにそれを抑えると、キョウコの方を向いた。
「それでは、まず女王陛下より、本会議の議題を御宣告賜りたく……。」
そう告げてファストが静かに最敬礼の姿勢を取ると、キョウコが手元の原稿を読み始めた。

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しばらくしてようやく痛みが和らぐと、呼吸を整え、足を滑らせた床へ思わず目をやるのだが、直ぐに後悔した。そこには血塗れの床、更にその上には誰かの左腕が落ちていたのである。
「う、わああああああ!!」
ヒザの痛みも忘れて思わず後ずさりしつつ、建物の奥へと逃げ込むコウ。事態を飲み込むにはまだ時間が必要の様だ。
「誰の、一体誰が、ああ、もう!訳がわからない!」
コウの悲痛な叫びを受け止めてくれる人は、残念ながら現れない。

建物の外はよく晴れた静かな朝だった。昨夜あれだけ激しい戦闘が起こっていたなど信じられない程である。
コウがこうしてどうにか外へ出てくるまでには、結局あれから小一時間程が必要だった。
あの腕が誰のものかは考えない様にして、ひとまずガードポストの近くへ埋めた。ベッドのシーツに床の血を吸わせては水桶で洗った。
そうして、ようやく平静を取り戻したのだった。
「ふぅ」と一つ息を吐いて、ふと通りを見てみると、ガードポストから外へ、そして通りへ向かって点々と続いている血痕に気が付いた。
「そう言えば、前にも似たような事が有ったなぁ。」
コウは嫌な予感を抑えながら恐る恐る血痕を辿って道を行くと、ちょうど左への曲がり角手前で一際大きな血溜まりと、そこを中心として辺りに血が飛び散った跡を認めたが、他には何も無く、これらが誰の血だったのか結局分からず終いだった。
「ここで爆弾を抱えて自爆でもしたのかな?……そんな訳無いか。でも、もしそうだとしたら、血以外の何かが残っていそうだけど…。」
そこで周囲を見回すが、以前と違って遺品らしき物は何も無かった。
コウは気を取り直して、シターカから聞いていたオンシとネオ・CFギルドの関係を確認すべく店へ向かう。
ところが、店舗は基礎まで含めて更地になっている。まるで最初から何も無かったかのように。
「あれ?おかしいな、ここが店だったハズじゃあ…?」
呆気に取られるコウであったが、よく見ると通りの家も所々が空き地になっているではないか。また、一部の家は扉が破壊されていたり、或いは「死んだシターカに付いていけ!勇者バンザイ!」と書かれた紙が貼られていたりする。
コウはそれを読んで、
「シターカが死んだ?すると、さっき見たあの血はシターカのもの?…でも………一体誰が?勇者って、僕以外にも、ネオ・CFギルドと戦ってる人がいるのかな?」
と首を傾げている。しかし、当然ではあるがいくら考えても答えは出なかった。コウは諦めて、改めて通りの家々に目を転じる。
今、コウが目にしている扉が破壊された家や更地になった家は、シターカの死により逃亡したネオ・CFギルドメンバーの家であり、そうでない家は彼らに虐げられつつもこの地に踏み止まって来た地元民の家なのだが、やはり今も人の姿は見えない。
「店が無い上に誰も居ないんじゃ、ネオ・CFギルドとの関係は確認出来ないや。それにしても、さっきの腕とかがシターカのものだとしたら、ホント後味が悪いなぁ。」
そう言うと、仕方なくコウはきびすを返して先程のガードポストへ戻り、1階のテーブルに地図を広げて、次の目的地を探す。
「えっと、今は、ここのガードポストに居る、と。で、ソネーヨはエリーゼの家……あ、この辺か。その東から三色剣士と一緒に西へ向かって来た。その三色剣士は、シターカの話だとこのガードポスト辺りから来た、と。」

ソネーヨ(アルファベット表記:Soneyo

年齢:25
性別:男
出身地:徳之島(誠島)
体型:小柄
髪型:黒のセミロング
愛用の武器:魔導書
好きな物:ファストからもらった「兄者クローク」
嫌いな物:うるさい子供

ネオ・CFギルドの第十五拠点長。

CFギルドでは珍しい徳之島出身で、ネオ・CFギルド第十六拠点長のシターカとは実の兄弟。
両親は共に善都を代表する芸能役者で、ソネーヨ、シターカの2人は幼い頃から演技の指導を受けていた。
特にソネーヨは、少年時代は顔が少し女性的だった事から、女形を担当。
大人になって青ひげを生やすようになった今でも、この時を全盛期と考えており、女性言葉を多用する。
ただし、男扱いされて怒ったりした時は男口調になる。
ファストに憧れ、魔法使いとなるが、魔法の腕前はそこそこ。しかし役者だけに早口言葉が得意で、高速詠唱による魔法の連続使用が可能。
この技能と、本人の知謀はファストにも一目置かれ、第十五拠点長に就任、ネオ・CFギルドになってからも異動は無かった。
性格は冷酷非情。卑怯な振る舞いを何とも思って居らず、交渉を行う際は先に人質を取って話を進めようとする傾向がある。

 

 

シターカ(アルファベット表記:Shitaka

年齢:25
性別:男
出身地:徳之島(誠島)
体型:大柄
髪型:黒のショートヘア
愛用の武器:ハルバード
好きな事:昼寝
嫌いな物:兄の小言

ネオ・CFギルドの第十六拠点長。

ソネーヨの弟で、兄同様、元役者である。女を演じる兄に対し、武器を手に踊る「武具舞踊」を演じていた。
武器の扱いに長けるだけでなく、拠点長ながら自ら陣頭指揮を執る事が出来る。

性格は冷徹ながら面倒くさがり。口調は「~だよう」という具合で、誰に対しても同じように接する。
元々CFギルドの第十六拠点はガードポストの近く(物語中の店舗「オンシ」)だったのだが、ガードポストが無人となったのを機に奪い取り、旅人の宿泊所に偽装し、何も知らない旅人の金品を強奪、転売していた。

ネオ・CFギルドになってからも、ファストはシターカを拠点長に留任させている事から、一定の信用は得ていた様子である。

大柄のごつい見た目からは想像し難いが、実は料理(焼き料理専門)の腕前は一品。