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そしてその面前でひざまづき、報告する。
「キョウコ女王陛下、我がCFギルドに集まりし強者56名、只今参集致しました。何卒閲兵頂きたく存じます。」
キョウコと呼ばれたその女性は、それを聞くとゆっくり顔を上げ、広間を見回した。
そして一通り見回すと、ファストを見下ろしてその唇を開く。
「ファスト総統、そちの統率が優秀である事、わらわは嬉しいぞ。」
それを聞くと、ファストはさらに語調を高めて返答する。
「ははっ有り難き幸せに存じます。」
ファストの言葉に続き、下にいた青いバシネットの人物が兵士の前へ歩み出た。そして、手に短剣を握ってそれを掲げる。
「皆の者ー!キョウコ女王陛下に命を捧げる覚悟は、出来ているかーー!?」
その青いバシネットの奥から響く野太い声が、瞬く間に建物全体に響く。
すると今度は、会場内にこだまする「ウォーーーー!」という声、声、声。いや、これはもはや空気の揺れとでも言うべきか。

いつのまにか謁見スペースに戻っているファストが、両手を挙げてそれを鎮めると、キョウコの方に向き直って再びひれ伏した。
「………キョウコ女王陛下。我らCFギルドの繁栄のため、何卒お力を頂戴致したく、謹みてお願い申し上げます。」
ファストの奉上を聞くと、一旦静まった兵士達に再び活気が戻る。
「オー!!ネオ・CFバンザーイ!ファスト総統、バンザーイ!キョウコ女王陛下、バンザーイ!!」
にわかに広間が大歓声に包まれた。集まった猛者達は、口々に万歳を唱えている。
そして、ひとしきり騒がしい時間が流れた。
「フフフ、よかろう。わらわの力、ネオ・CFギルド繁栄の為に使うがよい。」
そう言うと、キョウコ女王が立ち上がり、玉座の横に立てかけていた杖を手に持つと、力強くそれを掲げた。
「天空を征す天龍、海原を征す海龍、大地を征す地龍の名の下に集いたる者共よ。聞け、三界に響く雄叫びを。わらわキョウコは、三界を統べる龍神に選ばれし者なり。わらわに付き従える者は、永久(とわ)に滅びぬ力を得るなり。さあ、今こそ三界を越え、汝らの望むがままにその大いなる力、解き放つがよい!」
女王が長い言葉を言い放つと、杖の先端部からまばゆい光が放射され、広間全体に広がった。
直後、広間に集まった灰色ローブの兵士が各々光の塊となり、天井を突き破るように何処かへとバラバラに飛んでいった。
しかし、不思議な事に、天井を突き破るように出て行ったにも関わらず、天井には全く穴が開いていなかった。

広間に集まった全員が飛んで行ったのを見届けた後、ファスト総統が再びひざまづいたまま口を開く。
「有り難き幸せ。皆がブリタニア全土で歓喜の声を上げておりましょう。女王陛下、CFギルドにどうか永遠の繁栄を。」
「うむ。皆がわらわを讃えればそれでよい。ネオ・CFギルドは永遠に不滅なり。」
そう言うと、女王はそのまま建物の奥へと消えて行った。
ファストはそれを上目遣いで見届けると、すくっと立ち上がり、本部出口へ向かう。
「……私が貴女を讃えれば、でしょう。女王陛下……。CFギルドリーダーである私が、ね。ククク。」
そう言って冷ややかに笑うと、彼は本部を後にした。

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「ひょっひょっひょっひょっ。まあそんなに怖がる事は無い。オヌシが気をつければ済むことじゃ。」
そう言い終わると、会武爺はゆっくりと空へ浮かび始めた。
「よいか。変換の解除は同じ突起をもう一度押せばよい。あとはオヌシが使って色々試すのじゃ。では頼んだぞー。」
そのまま会武爺は空の彼方へと消えて行った。
「おーい、爺さん!待って下さい!ちょっとーー!!」

「爺さん!!」
ハッと気がつくと、もうすぐ森の夜が明ける頃だった。
「………夢……だったのかな?」
そう思い、身の回りを探ると、見覚えのある筒が落ちていた。それは紛れも無く、会武爺から渡された斬魔聖龍刀だ。
その横には、ブリタニア全土が記された地図も有った。よく見ると、各地に印が付いている。
「これは……。あ、CFと書いてあるや。じゃあこれはギルド支部だろうか。………うわ!17箇所もあるよ………。」

地図には既に17箇所ピンが打たれていた。
その範囲はブリタニア全土に及び、北は北極から大陸を通り、果ては南端部を超えてジェロームに至っている。
「CFギルドがこんなに大きな組織だったなんて……。想像以上だなぁ、かなり大変な旅になりそうだ。」
コウは斬魔聖龍刀を手に取り、地図と一緒にカバンへしまうと、CFギルド討伐の旅に出発した。

ちょうどその頃………。

第四章    CFギルド女王、キョウコ
「ネオ・CF!ネオ・CF!ネオ・CF!」「ウォーーーーーー!!」
大広間に不気味な、野太い歓声が響きわたる。ここはCFギルドの本拠地がある、ジェローム島。
いや、正確には、その本島から少しだけはずれた小島である。
今この大広間には、手に槍や斧、大剣を持った兵士と思われる者達がおよそ数十名、片ひざをついて並んでいた。
少し奇妙なのは、その全員が鉄製バシネットを被っており、灰色のローブを纏っている事だ。

大広間の少し奥には、広間より少し高くなった場所にきらびやかな椅子があり、そこに美しいドレスを着た女性がさも偉そうに座っている。
しかし、顔が黄金のバシネットで覆われている為、その素顔はおろか、表情さえもうかがい知る事は出来ない。
彼女が座っている椅子の脇には、奇妙な形をした杖が立てかけてあった。儀式にでも使うような、先端に赤い宝石が埋まった杖である。
また、椅子の正面には、少しばかりの謁見スペース、その先には小さな階段が有り、謁見スペースと広間部分とを行き来できるようになっている。
そして広間の階段前には、青いバシネットを被り、真っ赤なローブに身を包んだ3人組がいて、その女性に向けて敬礼している。
その視線を遮る様に、謁見スペースに立っている男が居た。
黒マントに黒ローブを纏い、黒のウィザードハットを被った男。CFギルド前リーダー、ファストである。
この場で素顔を出しているのは彼だけのようだ。と、彼がうやうやしく女性の前へ向かっていく。

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「そうですか……。何だか他力本願だなぁ……。」
呆れた、情けない。そう言わんばかりのコウであったが、
「どうじゃ、引き受けてはくれぬか?んん?」
と、会武爺がコウの顔を覗き込むようにして言うと、彼は目線をそらしつつ、暫く腕組みをして考える。
「そりゃあ、僕だって、悪い者勝ちの世界なんてゴメンだし。……まあ乗り掛かった船だ。引き受けましょう。」
コウがそう言うや否や、会武爺は飛び上がらんばかりに喜んだ。無邪気なもんである。
「そうか!やってくれるか!おおぉぉ、長く待った甲斐があったわい!!」
そして、会武爺がスッと手を上げると、突然頭上の闇が割れて光が差し込み、その奥から小さな筒が降りて来た。
その筒が会武爺の手に納まると、割れた部分は何事も無かった様に閉じてしまった。
その驚異的な光景を目の当たりにして、コウは少し固まっている。
「さあ、では受け取れ青年よ。これこそ、魔を断ちて悪を祓う聖なる刀。その名も『斬魔聖龍刀』じゃ。」
会武爺の手に収まっているその筒について、少し説明しよう。
長さは約20センチ程の円筒で、色は金色。メッキかどうかは判らない。
表面全体に強そうな龍の彫刻が施され、先端部分に小さな突起が1つだけ有る。
どうやら、その突起は何かのスイッチのようだ。
「これを使い、悪しき者を断つのじゃ。」そう言うと、コウにその筒を渡す。
コウははっと我に帰ると、渡された筒を一通り見回した。
「へー、結構綺麗なアイテムですね。でも、刀っていう割には、これ刀身が無いですけど?柄だけで戦うのはちょっと………。」
すると、会武爺が得意げに説明を始めた。
「ふっ慌てるでない。その小さな突起を押すことで、光り輝く刃が突起側の先端から現れる。そしてオヌシの体は、無敵の『イビルバスター』へと変換されるのじゃ。」
「無敵?イビルバスター?何ですかそれは。」
頭上に?が浮かんでいるコウに対し、鼻息を荒くしつつ会武爺が解説を続ける。
「よいか?刃の部分がオヌシの前に現れたとき、オヌシには全身をくまなく覆う鎧が装着される。」
「ふむふむ。で、その鎧というのはどんな物なんですか?」
「則ち、全ての攻撃魔法を跳ね返す盾、全ての攻撃に耐える鎧、短い間だけじゃが超高速移動の出来る具足、唯一その刀を使いこなせる手袋、そして、隠れし者を見抜く顔覆冑(ノーズヘルム)。これがイビルバスターの能力じゃ。」
「それは凄い!!うわー、これが変身ボタンかー。よーし!」
コウが突起を押そうとすると、会武爺が大慌てで制止する。
「ちょっと待たんか!まだ話は終わっておらんぞ!ここからが重要なのじゃ。」
「……ちぇ」
少し残念そうなコウを落ち着かせながら、更に会武爺の解説は続く。
「……よいか?確かにイビルバスターは強い。しかし、その能力はオヌシのスタミナを消費して具現化する。スタミナは少しずつ刀に流れ続けるから注意じゃ。」
「この刀はスタミナを使う、と。ふむふむ。」
「それから、一般人には正体を悟られるな。これはイビルバスターの秘密を守る為じゃ。」
突然に難しい制約を聞かされ、急にしりごみをするコウ。
「・・・もし、誰かにばれたりすると?」
「ワシにも判らん。もしかしたらその刀に命を吸い取られるかもしれんのお。」
「いっ命を!?」
にわかにコウの背筋を冷たいものが駆け抜ける。そして、それを見透かすように会武爺が笑う。

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一瞬、会武爺の目を見すえたコウ。悪意は無いように思ったのか、
「………まあ、伺いましょう。」
そう言うと、その場にあぐらを組んで座った。
しかし、刀は構えたまま会武爺に向けている。
刀を向けられた会武爺は、それを少し横目でちらりと見る。
が、大して気にしていない様子で、一度コホンッとせき払いをして、淡々と語り始めた。
「オヌシはCF、クリエイトヒューチャーという名のギルドを知っておるか?」
「あー、……えーと。まあ余り詳しくないですが、名前位は知ってますよ。ベスパーにチラシがありましたから。」
酒場に貼ってあった大きなチラシがコウの脳裏に浮かんだ。仲間を募集するあのチラシである。
「ウム、よろしい。そのギルドは今でこそ大規模な犯罪ギルドじゃが、つい最近までは弱小ギルドだったのじゃ。」
「へー、そうだったんですか。でも、じゃった、と言うのは?」
コウが聞き返すと、会武爺はもう一度咳払いをして続ける。
「つい最近、ギルドリーダーが交代したのじゃ。その者の名はキョウコ。それまで副頭領の地位にいた女じゃ。」
「キョウコ……ですか。」
コウは先ほどまでとは違い、少し真剣な顔をする。本人は全く意識はしていないようであるが…。
「それからというもの、CFギルドは何でも有りの非道ギルドとなった。殺人、窃盗は言うに及ばず、詐欺、略奪、集団暴行と、挙げれば限が無い。」
「うっ……まさかそこまで非道いギルドとは………。」
コウが驚くのを尻目に、会武爺は話し続ける。
「彼らは巨大な力を持つと、いくつかの町を自分達の支配下に置き、町の収益をかすめ始めた。人々に圧政を敷いている場所すら在るのじゃ。」
「まっ町を占領!?じゃあベスパーも占領されてたって事か………。」
驚くコウを前に、さらに畳み掛けるようにして会武爺は続けた。右手に握りこぶしを作りながら。
「そこで、何とか彼奴等を止める為、儂は秘伝のアイテムを正義感溢れる者に託す事にしたのじゃ。」
「正義感溢れる者って……それが、僕であると?」
しかめっ面から一転して照れ笑いをしつつ、彼は自分を指差している。
「左様。オヌシならこの役目、必ずや果たせるであろう。」
会武爺は目を輝かせながら力強く語るが、コウは逆に目を細め、冷ややかな表情に戻る。
「でも、そんなアイテムを持ってるなら、あなたが止めればいいでしょう?」
その言葉を聞くと、会武爺はにわかに声のトーンを落とし、涙声になった。
「………確かに、儂の元へ助けを求める者もおった。ふびんで仕方無かったのぉ。じゃが、儂には何も出来ぬ。」
「え、何故です?」
その問いを聞き、今度は待ってましたとばかりに勢いづく。先ほどまでの畳み掛けモードだ。
「儂はあくまでも『世界を見守る者』じゃからな!!」
えっへんと胸を張ってまで言い放つ会武爺。
「……………………。」コウは改めて目を細め、さも呆れたと言わんばかり。
「……………………。」そんな彼の痛い視線を受けて気まずくなったのか、会武爺も沈黙してしまった。
しばしの沈黙。が、それに耐え切れなくなったのか、堰を切ったように会武爺が話し出す。
「じゃっじゃが、ただ手をこまねくだけでは世界が悪に染まってしまう。それは何としても避けたいのじゃ!」
と、必死に訴えた。

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そして、傍らの木に馬を繋ぐと、花園のど真ん中で、ごろんと仰向けになる。
「何か、拍子抜けしたなあ。これでもちょっとは期待してたのに。」
苦笑しながらも、少し淋しげな色が漂っている。
「ここへ来たみんなは、同じような虚無感を感じたんだろうか…。」
空はあいにく曇り始めており、唯一の楽しみである星空も期待出来そうに無かった。
「ふぁぁ…………。ZZz………」
いつの間にか眠ってしまったようだ。拍子抜けしたことが、旅の疲れを倍加させたのだろう。あっという間に爆睡している。

今はおよそ夜の2時過ぎ頃だろうか。早く寝付いたためか、空の異変に目を覚ますコウ。
「うわ、雷か。こんな夜中に起きるはずだよ……。」
空にはいつの間にか雷雲が広がり、時折力強く雷鳴が轟いている。
「こりゃ珍しい位に強い雷雲だな。……一雨来るかも……。」
コウが慌てて雨に備えようと体を起こした瞬間!!
どこかで人の声らしき音がしたかと思うと、凄まじい光と音がコウを包む!
「うわあぁあぁぁ!!」
そして、その光と音だけの世界から開放された時、もうろうとなる意識の中で、彼は何故か見覚えの無い老人を見たのだった。
そして、彼の意識は一旦ここで途切れる。

「ひょっひょっひょっ。こんな所で寝ておると、モンスターに殺されてしまうぞい。」
「うー、うーん……。」
コウがゆっくり意識を取り戻したのは、朝日差し込む森では無く、完全な真っ暗闇の中だった。
「うー………ん、ここは?僕は確か雷に打たれて……。」
「ふむ、元気に復活しおったわ。これならもう、心配いらんのう。」
不思議な色のローブをまとった謎の老人が、復活したコウを見て笑いながら言う。
この老人、左手にランタンを持っていて、明かりは点いているのだが、辺りを照らしている様子は無かった。
「あ、あなたは一体!?」
コウが思わず刀を構える。
「ひょっひょっひょっ。儂か?儂の名は会武爺(えむじい)。この世界を見守る者じゃ。よくぞ虚偽の仮面に惑わされる事なくこの地へ来たな、若者よ。」
会武爺と名乗った怪老人がゆっくりとコウに近づく。
この怪人物を前にした時から、何故かコウは臨戦態勢を解くことが出来なかった。
「ひょっひょっひょっ。そう恐れずともよい。取って喰おうと言う訳では無いからのぉ。」
「……では、一体何の用ですか。何故突然僕に雷を落としたんです?」
身構えたままコウは、目を細めて疑いを強めつつ質問をぶつける。
「ほお!…あれが儂の放ったものじゃと、よう分かったのう。」
会武爺の、この隠しもしない反応には、逆にコウの方が驚いた。
どうやら若干ハッタリもあったらしい。
しかし、すぐに強気の顔に戻る。
「…意識がばらばらになるときに、あなたのような変な老人を見ましたからね。」
そう言われた会武爺は、一瞬ばつが悪そうに顔をしかめたが、すぐに何事も無かったように次の話を始めた。
「……まあそれはどうでもよい。実は頼みたい事があってのう。」
「……頼み事?ですか?」
「そうじゃ。聞いてくれぬか?」