テキスト版で読みたい方はここをクリックして下さい

すると全員が急に静まりかえった。
「もういい!お前らに策が無いのはよく判った!CFとは一旦和解!その後で連中を懐柔し、うちへ吸収する!以上だ!」
そして、その場に居るメンバーをギロリと見回した後、一人の男を指差して、こう怒鳴った。
「アルス!てめえがジェロームのCF本拠へ出向け!和解を成立させてこい!」
だが、当のアルスは困惑している様子。
「で、でも親分!和解ったって、何を条件に和解するんです!?」
「あぁ?決まってるだろう!うちのエリアに手ぇ出すな!うちもおめえらにゃ手ぇ出さねぇ!これで十分だ、わかったか!」
「あ、アイサー!」
翌朝、アルスは密かにトリンシック港からジェロームへ出発した。懐へポートリアスの手紙を携えて。

船旅を終えてジェローム島へ着いたアルスは、港で使者である事を告げる。すると島の中にある小屋へ案内された。
ドアを開けて中に入ると、そこにはテーブルと、向かい合った椅子が置かれていた。
片方の椅子へ座って待つこと数時間。突然ドアが開き、黒マント、黒ローブの青年がやってきた。そして開口一番、
「あんたがLHEの使者か。待たせたな。」
そう言って、向かいの椅子に青年は腰掛けた。
「俺がCF、いや、ネオ・CFギルド総統、ファストだ。女王の代理として、交渉に当たる。」
そう言いながら足を組む。何とも横柄な態度を取る青年だ、とアルスは思いつつ、冷静に
「リトル・ハンターズ・アイの使者、アルスだ。まずはこれを。」
と、ポートリアスの手紙を差し出した。それを手に取り、読み始めるファスト。
「なになに?『田舎不良ども、元気そうだな。俺はリトル・ハンターズ・アイ頭領のポートリアス。とりあえずうちのアルスを使者として丁重に扱え。』
『我がリトル・ハンターズ・アイはお前ら田舎不良と戦うつもりは無い。和解に応じるべし。応じるならば、今アルスが手を差し出しているから握手で応えるように。』
だと?」
手紙を持ったままファストがアルスを見た。すると彼は文面にあるように、ファストへ手を差し出している。
「ファスト総統、親分は口は悪いが、和解を望んでいるのは本当だ。応じてもらいたい。」
そう言って、大きくうなずいた。だが、ファストはすぐには応じず、続きを読み出した。
「ふん、こっから気になるんだがな?『それと、うちのエリアで暴れているお前らの仲間を今すぐ引き上げさせろ。迷惑だ。そして二度とジェロームから出てくんな。』
『うちもジェロームには一切手ぇ出さねぇから。安心しろ、そんな田舎全く興味はネェ。』・・・ずいぶんナメたヤローだな、お前の親分は。」
彼の黄色の両目には確かに怒りが灯っている。そうアルスは直感で感じ取った。
「それは要するに、お互いのエリアを尊重しあおうと言う事を言いたいのであって」
「黙れ!この俺様を田舎者呼ばわりした挙句、このジェロームに押し込めようってのか!?」
怒号に言葉をさえぎられ、ひるんだアルスは、そこから何も言えなくなってしまった。
「いいか!CFギルドの進む道はなぁ!他人に決められるもんじゃねぇ!帰ってそう伝えろ!」
そう言って席を立ち、小屋を出ようとするファスト。しかし彼のマントを必死につかんで食い下がるアルス。

テキスト版で読みたい方はここをクリックして下さい

第三幕    森に潜む小さな狩人の瞳
さて、今度はトリンシック郊外に広がる森の中が舞台。
この森には、非常に多数の狩人が棲んでいる。その狩人こそ、「リトル・ハンターズ・アイ」、通称LHEと呼ばれるギルドである。
このギルドは、大変悪名高く、CFギルドが台頭する以前はブリタニア一の悪人集団として有名だった。
旅人は襲われて金品を奪われた。町の財産に至っては、盗み出してはそれを町人相手のオークションにかけて、高値で売っていた。
コウとロックを長時間追い回し、ガードの一閃で即死した盗賊も、この森から獲物を求めてはるばるやってきたのであった。
だが、彼らがこの森から離れてでも活動をし始めたのは、ネオ・CFギルドが彼らの前に現れるようになってからで、それまではトリンシックのみに目標を定め、他の町には見向きもしなかったのである。
そんなネオ・CFギルドに勝るとも劣らない、いや、むしろ先達である彼らとネオ・CFギルドの衝突は、これから綴る悲劇によって幕を開けたのであった。
これはちょうど、ジェロームで結成されたCFギルドが、ネオ・CFギルドとなった頃の話である。

トリンシックへの入り口を見張るように配置された物見台で、3人の男が下を見張っている。
「そういや兄貴、ネオ・CFギルドって知ってるか?」
その内の1人がそんな事を言い出したのは、日が沈みかけた夕刻の事だ。
「ああ、新参の田舎不良か。何でも、やり方がうちとそっくりだってな。」
兄貴と呼ばれた男は腰に下げた酒ビンを取り外し、それを煽ってまた望遠鏡を覗く。
「お、そいつはオレも聞き覚えあるぜ。ワルの未来を作るんだってな。でけえ事言ってるけど、ジェロームを出たこと無い田舎者らしいな。」
もう1人は望遠鏡を片手に、懐の干し肉を取り出してかぶりついた。
「うちが気にしても仕方ないのか。だから噂程度にしかならないのか。」
言い出した男がそうつぶやくと、先ほど兄貴と呼ばれた男が怒り出した。
「おいアルス!下らねえ事考えずにしっかり見張っとけ。今夜はブリティンへの夜行荷馬が出るって話なんだからな!」
「・・・わかったよ兄貴。」

しかし。ネオ・CFギルドは飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を拡大し始めた。
ジェロームどころか、海を渡ってトリンシック近郊にまで姿を現すようになっていったからだ。
こうした状況の中、LHEの内部でも対策会議が開かれた。
「田舎者が調子に乗ってるだけだ。どうせこれ以上北へ進めはしない。」
LHEのリーダー、ポートリアスはこう切り出したのだが、周りはなかなかこれを認めない。
「目の前に突然現れた奴もいたんだ。そんで俺の獲物を横取りしやがった!」
「少しの間やり合ったが、連中の腕力は桁違いに強かった。ありゃきっと何かある。」
「俺は戦ってないが、連中の雰囲気は異常だっていうのはわかるぞ。」
「最近じゃネオ・CFとか名乗ってるらしいが、連中が目立つようになったのはそれからじゃねえか?」
もとより会議慣れしていない猛者だからか、いつの間にか互いの情報交換会になっていた。
「えーーーーい、やっかましい!!」
ざわついた場の空気を嫌ったのか、ポートリアスが一喝する。

テキスト版で読みたい方はここをクリックして下さい

そして、オークブルートを神とあがめ、ユーやコーブの近くを通る人達を襲い、奪った財産や宝物、時には体の一部を奉げている。
そんな人間の敵とも言える彼らも、第一幕で登場した反CFギルド連合に加盟している。
と言っても、ただ盟友を襲わないだけであり、見返りとして資金や物資の提供を受けているのだが。
では、何故彼らはCFギルドと敵対するのかというと、このような経緯がある。
かつて、CFギルドのファストが、コーブ村の近くで彼らの襲撃を受けた時の事である。
「・・・やれやれ。この辺にはおかしな連中が居ると聞いてはいたが、本当だとはな。」
「命が惜しければ、有り金全部置いていけ。ま、どうせこの辺には沢山のオーク様がいるから、助かりゃしないがな。」
森の中を延々と続く道の真ん中で、黒いローブに身を包んだファストと、それを囲むようにオークマスクを被った男が数人。
オーク男達は、ファストを完全に取り囲んで、じりじりと間合いを詰めていた。
「忠告は有り難いが、あいにく俺は急いでるんだ。邪魔すると命はねえ。」
ファストの黄色い瞳が、オーク男の1人をじっと睨んだ。
「どう見りゃそんな大口叩けるんだ?バカが。お前の様なただの人間が、オーク様にかなうわけが無いんだよ!」
そう言うと、オーク男達が一斉に飛び掛った。が、次の瞬間にファストの姿が消え、オーク男の背後に現れた。
「うぜえんだよ、タコが。Corp Por・・・」
呪文詠唱後、すぐにエナジーボルトが放たれ、オーク男に命中。
バチバチッという火花が飛び散ると、「うぐっ」といううめきと共に、その場にうずくまるオーク男。
その足元からは、小さな光の粒が螺旋を描きながら空中へ昇っている。どうやらパラライズの魔法に掛かっている様だ。
残りのオーク男達が少しひるむと、その僅かな隙を突かれて、たちまちフレイムブラストの火柱に包まれたり、エクスプロージョンによって肉片を四方に散らしたりしていった。
周りのオークが加勢に現れるが、パラライズフィールドを張られて近づけない。
その間に召喚された土エレメンタル2体によって、オーク達はボッコボコに倒されていった。
まさに、動きを封じられたオーク男の視点から地獄絵図が展開された訳である。
辺りはオークやオーク男による阿鼻叫喚の渦に飲み込まれた。
だが、パラライズの魔法が解けたオーク男が一目散に逃げようとするのを、ファストは見逃さなかった。
再びパラライズの魔法をかけたファストは、そのオーク男にこう語ったのである。
「おい。もう二度と俺様の邪魔をするんじゃねえぞ?邪魔したらこうなると、上の連中に伝えておけ。」
そして、こう付け足したのである。
「そうそう、俺様の名前を言っとかねえと意味無かったな。俺様はCFギルドの長、ファストだ。よく憶えて帰れよ?」
それだけ言うと、彼は大きく笑いながら去ろうとする。
「ま、待て!何故ここまでしておいて殺さない!?」
パラライズに動きを封じられながら、彼はファストにそう問うた。が、ファストは振り返りもせずただ一言、
「殺す価値も無い雑魚だからだ。」
と言い残して去った。
この事がきっかけで、CFギルドとオーキッシュ・マスクメンは正式な交戦状態となった。
反CFギルド連合に彼らが加盟する日は、それから間もなくであった。

テキスト版で読みたい方はここをクリックして下さい

会議場に集まったのは、3人の参謀と私の4人。全員の着席を見て、私は机の上にアロパーニが持ってきた報告書を置き、内容を読んで聞かせた。
そしてその後、我がギルドの方針を巡って激論が展開された。
「援軍を送れば、我がブリタニアセーフティーズの守りが手薄になる。物資援助にとどめるべきです。」
参謀の1人、マローの慎重な意見を聞くや、ジョンが口を挟んだ。
「しかし、彼らの報告によれば、彼我兵力差は2対1というではないか。我々の物資援助だけで戦う事は難しいのではないか?」
すると今度は、ジョンの意見に乗るようにして、積極派のテイラーがマローに論戦を吹っかける。
「ナイツオブミノックは我らが第一の盟友。物資も兵力も割こうではないか。彼らをみすみす窮地に追いやる事は無い。」
「いや、我らにも必要な兵士の数がある。今これを割るような事があれば、いつ隙を衝かれてしまうかわからんのですぞ!?」
「では、ナイツオブミノックの要請を蹴ればよいと、そうおっしゃるのか?」
「そうは言っておらん。ただ、兵力を出すのは必要最小限だと言っているのだ。」
「兵法の中には、攻城戦をして勝つ為には3倍の兵力が要るとある。敵の拠点が城で無いにせよ、同等の兵力は必要だと思うが、いかがか?」
いつのまにかマローとテイラーの2人が論争をし、ジョンがずっとそれを聞いているという、いつもの構図が出来ていた。
だが、ずっと2人の話を聞いていたジョンが、突然何かひらめいた様にうなづくと、2人の間に割って入った。
「いや、待った。…そもそも我々の役目は、陸軍から委任された都市部警護ではないか。事情を話し、兵力は陸軍から捻出してもらえばよかろう。」
ジョンのこの意見に、私の心は揺れた。マローとテイラーも、「その手があったか」と言わんばかりの顔をしている。
そう、我々は王国首都、それもブリティン城内に拠点を置いているからこそ、反CFギルド連合の盟主を名乗れるが、決して規模が大きい訳ではない。
陸軍をうまく説得出来れば、盟主の面子も保てる上に兵力の心配をせずに済む。結論は出た。
「今のジョンの意見、私も同感だ。陸軍の兵力を割いてもらい、我が援軍とする。物資は我がギルドより捻出する。」

再びアロパーニを私の部屋へ呼び、兵士と物資の援助申し出に同意する旨を伝えた。
彼は非常に喜び、私との握手を申し出てきた。それに応じたのは言うまでも無い。
我等は不倶戴天の敵、即ちネオ・CFギルドを等しくする同志なのだから!


第二幕    ユーとコーブの守人達
一方、またまた場面変わって、ここはユー近郊にある「オーキッシュ・マスクメン」の本部。
オークマスクを被った三十人余りの人たちが集まっていた。
賢明な読者諸君は思い出しているかも知れないが、彼らは以前コウとロックを襲ったオーク男が所属する組織である。
彼らはオークを人間より優れた種族とみなし、自分達をオークに最も近い人間、つまり「準オーク」であると宣言している。
その証としてオークマスクを被る事によって、オークから敵視されない唯一の人間となったのだ。

テキスト版で読みたい方はここをクリックして下さい

「グレイト・マスターに操られているとは言うものの、あの力を使わない手は無いからなあ。クックックック…。」
CFギルドリーダーが交代したと会武爺は言っていたが、どうやら大きく違うようだ。
彼等の裏には一体どのような秘密があるのだろうか?あの杖は一体何なのか?謎は深まるばかりである。


第五章    敵か味方か?反CFギルド連合!
第一幕    ブリティンとミノックの守護者
場面は再び変わって、ここはブリティン城の中にあるギルド「ブリタニアセーフティーズ」の団長室。
窓辺で静かに、長身の女性が少し憂いを含んだ表情で、どこか遠くを見つめていた。


空は少し曇り、日差しが所々で雲の裂け目から差し込んでいる。
こんな気分はいつからだろう?今日のような天気の日が、これほど疎ましく思うようになったのは・・・。
そんな言葉が頭をよぎる。
コンコンッ
窓から空を見ていると、不意に背後の扉が叩かれた。
「誰だ?今は余り人と会う気分ではないのだが。」
扉の向こうに居る相手にそう言った私だったが、
「ナイツオブミノックのアロパーニ、進軍報告で参りました!」
その一言で私の陰鬱な気分は吹き飛んだ。盟友ナイツオブミノックからの使いだからだ。
「わかった。入りたまえ。」
私の返事がよほど待ち遠しかったのか、来訪者の青年はすぐに扉を開けてきた。
「失礼します!」と入ってきたアロパーニは、私の姿を認めると、一瞬驚きの表情を見せた。
が、すぐ自分の上官に対するのと同じ様に敬礼した。
「どうした?私の顔に何か付いていたか?」
私がそう尋ねると、青年は敬礼したまま
「いえ、ただ、盟友の団長殿が女性とは知らず・・・。しっ失礼致しました!」
と、声を大にして言った。こわばった顔から緊張しているのがよく判る。
「敬礼はもういいから、用件に入ってくれ。」
私がそう言うと、彼は懐から何か紙切れを出して読み上げた。
「ナイツオブミノック団長より、ブリタニアセーフティーズ団長殿へ!我らはCFギルドミノック支部の場所を特定する事に成功。」
その部分を聞き、私の胸は小躍りした。CFギルドの支部が各地に点在する事は以前から報告を受けていたが、巧みに偽装されていて、どこにあるのか今までよく判っていなかったからだ。
「おお、それは確かなのか?」
思わず確かめると、彼は「確かな情報であります。」と答えた。そしてそのまま続きを読み上げる。
「これを壊滅せんとするも、判明した敵戦力は当方の2倍強なり。至急援軍派遣及び物資の補給を要請するものなり。」
「なお、我らはアロパーニ帰還より3日後に総攻撃を行う予定。」
そこまで読むと彼は紙を再び懐へとしまった。
「報告は以上です。援軍及び物資補給の有無をお答え下さい。」
彼にそう言われた私は、答えに困り、ひとまず「参謀たちと相談しておく」とだけ答えて、彼を城の中にある賓客室へ招き、そこでしばらく待ってもらう事にした。

すぐに参謀たちを召集した私は、盟友からの援助要請を説明し、これの対処について話し合いを始めた。