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「いいこと?アタシはこれから拠点に戻って仲間を呼んでくるわ。それまでに、こいつらを縄に掛けて木に縛っておきなさあい!」
「へい。わかりやした。」
ソネーヨがくるりと身をひるがえし、森の中へと消えていく。それを見送ると、懐から縄を取り出すシュラ。
そして子供達の方を見て、「へへっ」と笑う。
一方こちらは今起こった出来事を、木陰に隠れて見守っていた、コウである。
「あっという間の犯行、これは相当手慣れた連中だなぁ。もしかして、あのバシネットにローブを着た奴らが、ネオ・CFギルド…?」
注意しようとした矢先にこのハプニングに遭遇したので、出るべきタイミングを失っているようだ。
「心の準備ってものがあるよなぁ…。倒さないといけないって分かってても、こう、不意打ちじゃぁ……。」
ぶつぶつ言いながら、じっと様子をうかがっている。今はまだ、シュラに気づかれた様子は無い。と言うより、
「全っ然、周りを見てないな。」ぼそっとコウがつぶやいた。
さて、シュラが子供達の手を数珠つなぎに縛った時、タイミングを見計らったようにエネルギーフィールドが消滅した。
彼は縄の端を手に持つと、嫌がる子供達を力づくで引っ張っていき、
「……木につないで、ぐるぐる巻きか。ああ、女の子があんなに泣いてるのに、振り向きもしない。あ!」
シュラがわんわん泣く女の子の口に包帯を巻き付け、さるぐつわのようにした。
「ったく、うるさい奴だ。へへっ、これで少しは静かになるだろう。」
両手をパンパンっと叩くと、隣の木にもたれかけ、あぐらをかいて座るシュラ。そして、じーっと子供達を見張っている。
「こりゃ参ったな、近くには他に誰もいないみたいだし…。仕方ない。怖いけど、独りでやるか。」
コウはシュラに気づかれないように近くへ移動し、そばに落ちていた小石を拾う。
「よし、これで……」と辺りを見回すと、ちょうどシュラから少し離れた手頃な場所に茂みがある。
「うまく釣られてくれよ…、それ!」ポーンと小石を放り投げると、うまい具合にガサガサッという音を立てて転がっていった。
その音に気づいたシュラは、「ん?何だ!?」と驚いて立ち上がると、その音がした方の茂みを調べに行く。
「よし、今だ!」と、子供達に近づくコウ。右手の人差し指を鼻に当てながら、ナイフを取り出す。
子供達もコウに気づき、声を上げようとしたが、彼の右手のしぐさに気づいて黙る。
しかし、縄を斬ろうと刃先を当てるが、そこそこ頑丈なロープだったらしく、なかなか切れない。焦るコウ。
「ちっ、何だよウサギかよ!脅かすんじゃねえ!このっ!」
シュラが茂みの向こうでウサギを見つけたらしい。そして、脅かされた腹いせとばかりにドカッと蹴り飛ばす。
「やめて!ウサギさんをいじめないで!」
ちょうどその時、コウが縄を何とか切り終えたところで女の子がそう叫んでしまった。
「なんだと!生意気を言うじゃねえか、……って、何だてめぇは!!」
シュラがコウに気づき、急いで駆け寄ってくる。
「しまった!さあ、早く逃げるんだ!」
縄を引っ張り上げ、子供達の体を解放するコウ。
「わーーっにげろーー!」
「ありがとうおにいちゃん!」
「あっかんべーー、ヘンタイバシネットーー!」
みんな散り散りになって逃げ出した為に、おろおろとどの子供を捕まえるか迷っているシュラ。
「こっこの!おい!こら!おとなしく!しやがれー!」

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「このおはな、もってかえっておかあさんにみせてあげようっと。」
「ねーみてみてー!こっちのほうがきれいでしょ?」
森の中で子供達が何人かで遊んでいた。男の子は鬼ごっこ、女の子は花を集めているようだ。
その様子を見て、コウは木の陰に隠れながら、その様子をとても穏やかな顔で見ていた。
「懐かしいな、コーブの森でもあんな風に遊んでたっけ。」
しかし、すぐに重大な事に気づき、ハッとなる。
「そうだ、こんな場所で遊んでちゃ危ない。もし地元の子じゃないなら、この辺りに詳しくないはずだ。」
そう思って注意しようとした矢先、最悪の事態が起こってしまった。

時間軸は少し戻り、コウが子供達を見つけた時の事。ちょうどコウとは子供達を挟んだ反対側の木陰からも、二人の人物がそれを見ていた。
二人とも灰色のローブにバシネットを身にまとっているが、一人は赤いバシネットで、もう一人は普通のバシネットである。
「ソネーヨ兄貴、こんな所にガキが沢山いますぜ?どうしやしょ。」
普通のバシネットを被った人物が、野太い声で赤いバシネットの男、ソネーヨにそう言うと、なぜか普通のバシネットの男を殴りつけた。
「兄貴って呼ぶんじゃねえ!……ソネーヨ様とお呼び!」
ソネーヨが甲高い声で普通のバシネットの男を叱りつけるのだが、その声は明らかに男の声だ…。
「いててて…、すいやせんでした。ソネーヨ様。で、どうしやすか?」
ソネーヨは改めてそう訊かれると、うーん、と腕を組んで考え始めた。そして、
「まあ、ここは誘拐して身代金を頂くってのが定石だわね。…よし。アタシが魔法で壁を作るから、シュラはその間にガキを捕まえるのよおん。」
と指示を下す。
「よしきた。それじゃ早速始めましょうぜ!」
そう打ち合わせた二人は木陰から飛び出した。

ここで、時間軸は先ほどに戻る。
「よーし、そこらのガキんちょ達!動くんじゃねえわよお!In Sanct Grav…」
ソネーヨが女の子達の周りを回りながら、素早くエネルギーフィールドの呪文を4回唱え、花を摘もうとしている女の子ら数人を取り囲むように展開した。
「え?なになに?」
「なにこれー?でられないよぅ!」
「あーーん、こわいよ、こわいよぅ!」
女の子達は自分達を囲む壁に驚き、泣き出した。
「ウラー、おとなしくしやがれ!」
女の子を壁の中へ捕らえると、今度はシュラが、鬼ごっこをしていた男の子達を捕まえては、壁の中へ放り込む。
こうして、遊んでいた6人の子供達を捕らえた即席の牢屋ができあがった。
「こっからだせー!へんなおっさん!」
「こんなのひどいよー!」
「へんたいバシネット!」
「くそローブ!」
捕まった男の子達は、泣きはしないが、その代わり口々に二人の悪口を言いまくる。
「こっこのガキども!おとなしくしねーと、今すぐブッ殺すぞ!」
シュラが、湯気を出さんばかりに怒るが、ソネーヨがそれをたしなめる。
「おやめ!ガキんちょの言う事にいちいち反応するんじゃねえわよ!」
「うっ、すいやせん。ついカッとなっちまった。」
呆れた様子のソネーヨは、ふぅ、とため息を一つ。

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「む、女王陛下?……は…しかし……わかりました。」
後ろで2人の戦いを見ていた1人が誰かと話をし始めたかと思うと、突然剣を納めた。
「2人とも!引き揚げだそうですよ。……ライジング・サンの諸君。運が良かったですね?」
戦っていた2人が、4人の武器を突き上げて一瞬の間を作り、その隙に仲間と合流する。
「もう少しやり合いたかったが、仕方ねえ。あばよ!」
「なかなか楽しいひとときだったぞ。次に会う時が楽しみだ。」
「ふっ、機会があればまたお会いしましょう。……では。」
その直後、3人は大きな光に包まれ、来た時と同じ聞き慣れない音を残してどこかへと飛んでいった。
フェザウドら4人は敵襲を凌ぎきった疲れで、どっとその場に座り込む。
彼らが「瞬間移動」でどこかへ行った事などを気にするような余裕は、誰にも無かった。
「リョーメーよ、……被害は?」
震える声でビリューが尋ねると、彼は静かに「ギルド員の約半数、25人が死亡、5人衆の内チョーキンを失いました。」と答える。
「……そうか。みな弔ってやらねばならんな。ネオ・CFギルドを討って、な!」
内からこみ上げる怒りと恐怖で、ビリューは身を震わせていた。
この日からしばらくして、反CFギルド連合が結成され、ライジング・サンはその初めから加盟する事となった。

以上が、現在ネオ・CFギルドと敵対関係にあるギルドである。


第六章  叩け!悪の巣のネオ・CFギルド!
第一幕  正義の使者イビルバスター登場!
「えーと、今一番近くの拠点は……あった。正義の神殿近くにあるみたいだな。」
コウは、滝の近くで地図とにらめっこをしながら、現在位置と最も近い拠点を探していた。
「花園に行く時は全然気づかなかったけど、こんな近くにも拠点があったなんて。運が良かったんだなぁ。」
地図を再びしまうと、近くにつないでいた馬の縄を解く。
「ここまでありがとうな。どうやら歩きの方がこれから先は良さそうだから、お前は放してあげるよ。」
馬の鞍を外すと、ヒヒーンといななき、そのままいずこかへと走り去って行った。
「行っちゃったか。せっかくロックが捕まえてくれたけど、危ない戦いに巻き込むよりはマシだろう。」
そして、コウは再び歩き始めた。池を迂回し、目指すは正義の神殿。

「行きの時も拝んだけど、まさかこういう気分でまた拝む事になるなんて。でも、この近くも敵がいるんだ。気を引き締めようっと。」
正義の神殿に安置されたご神体のアンクにひとときの祈りを捧げるコウ。何を祈ったかは分からないが、その表情は真剣そのものであった。
「さあ、この近くを探索しよう。きっとどこかにいるはずだ。」
ひとまず、神殿から西の方角へ歩き始めるコウであったが、内心はかなり不安な様子である。
ひっきりなしに左右を見つつ、常に愛用の刀を握っていたのだから。
しかし、そんな彼の不安を一気に吹き飛ばすような出来事が起こったのである。
「あはははは、おにさんこちらー、てのなるほうへー。」
「まてー、まてー、まってくれよー。」
森の中から、子供達の歓声が聞こえてきた。

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森の民を自認する彼らだ、すぐにそれが尋常ではないと悟った。
すぐさま数名が拠点から飛び出し、音のした方へ駆けだした。森に妙な空気が流れ始める。

最終的に駆けつけたのは10人程の戦士だったが、その全員が息を呑み、森の中で呆然と突っ立っている。
無理もなかった。彼らの目の前に立っていたのは、それまで見た事のない「光を帯びた戦士」3人だったからだ。
「なっ、何だお前ら。見かけないツラだな。」
ようやく1人が声を掛けるが、光っている3人は互いの状態に驚いているばかりで、聞こえていない様子だった。
「聞こえなかったか?お前らいったいどこの……ぐっ!?」
その瞬間、光る1人が、手にした剣で胸を一突き!ぐらぁっと崩れ落ちる様に倒れる。
「ホトー!!」
9人が一斉に、倒れたホトーに近づくが、その時既に彼は息絶えていた。
「おお、体が嘘のように軽いですぞ?剣が自分の腕のように動きました。」
「うむ、どうやら女王陛下の力は本物のようだ。瞬間移動まで体験出来るとは。」
「負ける気がしねえな!こいつら試し切りにちょうどいいぞ!」
光る3人の戦士が、一斉に9人に襲いかかった。

「遅いと思わないか?10人も出て行って小一時間になるのに帰ってこないとは。これじゃ狩りの日が始められない……」
ビリューが、側近の部下に尋ねると、彼は少しうなって
「では、チョーキンを迎えに行かせますがよろしいですか?」
「うん、リョーメーの好きにして構わない。」
しかし、リョーメーの指示でチョーキンが出て行ってから、ものの5分で彼は戻ってきた。
「たっ大変です!出て行った全員が、何者かに殺されています!」
拠点はその声でたちどころに騒然となる。しかし、そのチョーキンも、不意に背後から剣で胸を突かれ、拠点の入り口で倒れてしまった。
そこから、光る戦士3人がゆっくりと入ってきたのだ!
「そうでしたか、ここはライジング・サンの拠点でしたか。そういえば、最近犯罪者殺しを始めたそうですね。くくく。」
「だ、誰だ!お前たちは!」
ビリューが狼狽し、部下たちは一斉に武器を手に取る。
「我らはネオ・CFギルドの戦士ですよ。ま、名前は名乗る必要無いでしょう?どうせ全員死ぬのだから。くっくっくっく。」
「おい、さっさと殺っちまうぞ?祭りの時間があとどれ位有るかわからねえからな。」
「そうですね、ではお二人さん、殺ってらっしゃいな♪」
その直後、ライジング・サンの拠点は血みどろの抗争舞台となった。2人の攻撃は瞬く間に繰り出され、次々に殺されるライジング・サンのメンバー。
そんな中、徐々に減っていく部下達を、ビリューは唯々見守るのみだった。リーダーは直接手を出さず、全体を見るのが掟だったからだ。
彼がこの掟をこの時ほど憎く思った事は無いだろう。だが、戦局は不利どころか絶望的で、辛うじて2,30人程が生き残っている状態だった。
ライジング・サンが誇る「5人衆」のフェザウド、フラウィング、コドラ、カショーの4人がこの2人と戦い、どうにか対等になったからだ。
フェザウドがハルバード、フラウィングが矛、コドラが槍を振るって二人を抑えつつ、カショーが弓で援護する。連携は完璧だった。
拠点が戦場と化しておよそ30分程が経過した時、にわかに3人の光が弱まり始めた。

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「待ってくれ!せめて和解だけは成立させてくれ!頼む!怒らせたのはこちらが悪かったから!」
と懇願するアルス。しかし、それがまずかった。ファストはカッと目を見開き、アルスをにらみ付ける。
「くどい!交渉は決裂だ!それと俺様のマントに薄汚い手で触るんじゃねえ!Kal Vas Flam・・・」
「・・・!ちょっと、待っ」
ファストの呪文詠唱に気付いたアルスが手を離した瞬間、彼の体を火柱が覆った。
「ぐあああぁ!あぁ!ぁぁあぁ!・・ぁぁ・・・ああ・・・」
悲痛な叫びと共に一瞬で絶命し、黒こげになったアルス。ぶすぶすと煙が立ち昇り、肉の焼ける匂いが部屋にこもる。
「ふん、愚か者共の辿る末路だ。」
死体を一べつし、小屋を後にするファスト。出口で待っていたゼウストが
「遅いぜ、待ちくたびれちまったぜ。」
といってあくびしてみせる。だがファストはそれを見ても変わらずぶ然とした表情で
「中の死体を処理しておけ。首は街中に晒し、無礼な使者が辿る末路だと内外に示すのだ。」
とだけ命じ、本部へ帰っていった。
数日後、ジェロームでアルスが晒し首になったとの情報がLHE本部のポートリアスに届いた。
「しくじったな、アルスめ。・・・こうなっちゃ仕方ねえ。CFと全面戦争だ!」
ポートリアスは憤然として全員に号令を出した。

その後、両者が戦闘状態に入って、機を見たようにブリティンで反CFギルド連合が結成されたとの一報がLHEにもたらされた。
これにLHEが応じ、連合ギルドに対し、地の利を生かした情報を提供する見返りとして、自分達の活動を黙認するよう求めたという。


第四幕    スカラブレイの森の民、その名は「旭日」
スカラブレイ島の東に広がる豊かな森。ここに、反CFギルド連合最後のギルドにして、スカラブレイの自警団を自認する傭兵ギルドが拠点を構えて居る。
その名は「ライジング・サン」。条件次第ではかつての恩義さえ忘れ、旧主と戦う事すらいとわない、約60人に及ぶプロの戦闘集団であった。
そんなある日の事である。

「そろそろ食料が減ってきたから、今日は狩りの日としよう。ちょうど依頼も無いし。」
ライジング・サンの現リーダー、ビリューによる提案で、その日の仕事は決まった。
「じゃあ、俺は海釣りに行ってくる。」
「船出なら俺も乗せてけよ、大漁約束するぞ?」
「ほんじゃ僕は一つ鹿でも狩ろうかな。誰か手伝ってよ。」
「ははは。鹿くらい一人で狩れないとな、食いっぱぐれるぞ。」
報酬は取ってきた食料に応じるとあって、メンバーの意気は上々だ。
彼らの言う狩りの日は、リーダーの気まぐれで行われる事が多い。前回は1ヶ月ほど前だったが、その前は半月ほどで行われている。
とにかくリーダーが気分次第で部下を動かすので有名なのだ。もっとも、ビリューは比較的温厚で、信頼も厚い為か、部下はよく彼に従う。
その日も、いつもとそう変わらない日常だった。しかし……。
シューーーーン
シューーーーン
シューーーーン
聞き慣れない音が森にこだまし、鳥たちが一斉に森から空へと逃げ出した。