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「きっ貴様の太刀筋は横薙ぎのみ!見切っ…!?」
影の繰り出したそれは、まさに一閃!!ゾールの左肩から右脇腹にかけて深く斬られていたのだ!
鮮血がしぶきと化して飛び散り、声にならぬ声で何かを言いつつ崩れ落ちるゾール。
そして倒れた瞬間、その体が爆発!後には細かくなった肉片と血痕だけが残っていた。
その傍らに立ち止まり、それを見下ろす真っ赤な影。その鎧は、返り血で更に紅く染まっていた。
そして前方をひたすら走っているソネーヨに視線をやった後、小さくつぶやいた。
『時間切レカ。』

場面変わって、ここは正義の神殿付近にあるネオ・CFギルドの第十五拠点。
一見すると、周囲を森に覆われ、建物の屋根さえ木で隠れる程の小さな普通の民家に見える。
しかしここが、この辺り一帯を管轄する支部を兼ねた、ソネーヨらの居城なのである。
今は逃げ帰ったソネーヨしか居ないのだが、誰かと話しているようだ。
『はいよ、こちら第十六きょて』
「私だ、第十五拠点長のソネーヨだ。拠点長のシターカを出せ!今すぐだ!」
家の中にはコミュニケーションクリスタルを前に、何やら必死な様子のソネーヨが居た。
『ああ、ソネーヨ閣下でしたか。今拠点長は昼寝の最中で』
「今すぐ叩き起こしなさい!兄が大ピンチだと伝えるのよ!ああもう、じれったいわねぇ!」
口調は普段に戻ったものの、まだ慌ただしい。
『シターカ様を起こすんで?およしになった方が…』
「ウルサーイ!さっさと起こしなさい!あなたも死にたいの!?」
鬼気迫るソネーヨの声色に圧倒されたのか、相手も
『わっ、わかりやした!今すぐに!』
と言うや否や、クリスタル越しに聞こえてくる程の足音を立てて、シターカを起こしに行った。

しばらくして、シターカという拠点長と、先ほどの男が会話しながら近づいてくるのが聞こえてきた。
『んだよう、人が気持ちよう寝とる時によう』
『いや、申し訳ありません。ソネーヨ閣下がどうしても、と。』
『兄貴が?珍しいな・・・はいはい、どうしたんだよう?』
クリスタルから、いかにも気だるそうなシターカの声が聞こえてきた。
「遅いわよ!・・・まあいいわ。そっちの強い奴を数人迎えに寄越しなさい!今からそっちへ向かうわ!」
ソネーヨがそう言うと、シターカはひどく驚いた様子で、
『えぇ!?兄貴がこっちに?そっちの連中はどうしたよう?』
「変な奴に斬り殺されたのよ!もう化け物というか、豹変っぷりがすごいのよ!」
『・・・いや、話が読めねぇからよう。まあいいや。んじゃとりあえず部下数人を出すわいよう。』
両者は数分のやり取りを交わし、シターカの部下が出迎えに行くことに決まった。
「とにかく急ぎなさいよ!?」と最後まで念を入れるソネーヨ。
『はいはい、じゃあ気ぃ付けてよう、と。』
シターカがいかにも面倒くさそうにそう言った直後、ソネーヨの目の前にあるクリスタルが、赤く点滅した。
「あっ!切りやがったわね!」
それはシターカが通話を終了した事を示す合図だった。
「あいつ~~!」
その後ソネーヨは、何か思い立った様に、家の奥から1枚のクロークを取ってきた。

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激怒したシュラが、メイスの奥義であるコンカッションブロー(震動撃)を繰り出し、イビルバスターの脳天を直撃!!
ドゴォッという鈍い音を残しつつ、大きくはじき飛ばされるイビルバスター!
「はーっはっは!こいつは装甲を貫通して衝撃を与えるんだよ!思い知りやがれ!」シュラは大喜びである。
一方、はじき飛んだイビルバスターは、そのまま木に直撃!
余程すごい勢いだったのか、バキバキッという轟音を立てて木が倒れた!
イビルバスターもその根元にバッタリと倒れたまま、ピクリとも動かなくなってしまった……。
どうやら脳天への衝撃で、気絶してしまったらしい。
「ほほう、感心したわシュラ。でもね、そういうのは最初に出しておきなさい!」
ソネーヨが嘆息しつつシュラの不手際を責める。その横で仲間達は「おーーっ」と歓声を上げていた。

もうもうと上がる土煙が晴れ、動かなくなったイビルバスターがさらけ出される。
「どうやら仕留めたみたいね。一応、お手柄だったと誉めておくわ、シュラ。」
「いやぁ、あんな奴ぁ屁でもねえでさ。それより、逃げた若造を追いやしょう!」
どうやら逃げたコウを何が何でも捕らえたい様子のシュラ。
しかしこの時、わずかではあったがイビルバスターに起こった異変に気づいた者は、まだ誰もいなかった。

そのわずか10分ほど後、正義の神殿に近い森の中を、ソネーヨともう一人が何やら大慌てで、まるでさまように走っていた。
他の仲間は見あたらない。別々に行動しているのだろうか。仲間の方はしきりに背後を気にしている様子だ。
「拠点長!私が最後のしんがりになりますから、何としても第十五拠点にたどり着いて下さい!」
そう叫んで、刀を抜く。どうやらこの男はシュラではない。他の仲間の一人だ。
彼はソネーヨを先に行かせ、自らはソネーヨに背を向けて立ち止まった!
「た、頼むぞ!ゾール!あんな奴まともに戦えば、アタシの命が危ないからな!」
振り向きもせず、そう言ってなおも走っていくソネーヨ。本気で慌てているのか、口調が先ほどとはだいぶ違っている。
「さあ来い!化け物め!」とゾールが叫んだその視線の先、つまり後方には、彼の居る方へ走ってくる真っ赤な影がいた。
そして行く先に立ちふさがっているゾールの姿を認めたその影は、何故かその場に立ち止まったのである。
「さあ、勝負しろ!化け物!」
ゾールが勇んで刀を構えると、影の目が不気味に赤く光った。そして手にしたオレンジ色に光る刀を天へと垂直に掲げた。
するとその刀が、力強く青色の光を発し始めたではないか!
それを見たゾールは、「今度は青色だと!?」と驚く。
そしてすぐ何かに気づいた様子で、「はっ……ばかな!なぜそれを知っている!?」と叫んだ。
直後、刀身の色がオレンジから青色に変わったのを確認した影は、左足を少し後ろへ引いた。
次いで重心を低くし、刀を左の腰の位置に持って行くと、キッとゾールを視線に捉えた。これは、いわゆる「抜刀術」の構えである。
その構えに入った直後、突然影が前に向かって滑り出した!そう、足を全く動かさずに高速移動しているのだ!
そして、『ウオオヲォォォォーッ!!』という不気味なうなり声と共に、一気にゾールへと迫った!

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ソネーヨが尋ねると、回りの仲間も手に武器を持ち、臨戦態勢に入る。
すると、その男はオレンジ色に光る刀の尖端をソネーヨらに向け、こう答えた。
『私か?私はイビルバスター!この世の悪を葬る為にやってきた、正義の使者だ!!』
それを聞いたシュラは、また湯気を出して激昂する。
「あぁ!?何が正義の使者だ!ったく、今日は次から次へと邪魔が入りやがる!」
そしてイビルバスターを指さしながら、ソネーヨに向けて懇願する。
「兄貴、いやソネーヨ様!こいつで名誉挽回させてくだせえ!」
ソネーヨは他の仲間をチラリと見るが、誰もシュラに反論しないのを見て、
「……いいわ。ただ相手は武器を持っている。存分にお前の得物を振るいなさい!」と指示。
ソネーヨの許しを得て、バッグから鉄製のメイスを取り出すシュラ。そしていかにも嬉しそうに
「へへっ、やっとこいつの出番だ!いくぜ赤い野郎!ウラーーーー!!」
ブンブンとメイスを振り回しながら突進する!対するイビルバスターも、盾を前に出して防御態勢を取り、そのまま突撃!
『うおおーーーー!』
しかし、防御に気を取られすぎたのか、盾を前に出しすぎていた。その為に腰が大きく引けてしまっている!
「へっ、てめえ腰が引けてるじゃねぇか!そんなへっぴり腰で俺様と戦おうたあ!」
シュラがメイスを大きく振り上げたタイミングで両者が激突!
思い切り振り下ろされたメイスを盾で受け止めたイビルバスター。
『うああぁぁぁ!』とそのまま斬魔聖龍刀で切り込もうとする!
しかし、シュラは最初の一撃を加えた直後に身をクルッと左回転させ、イビルバスターの斬撃を回避しつつ、彼の左後方へ回り込んだ!
「甘ぇんだよ!!」
回転して勢いがついたメイスで思い切りイビルバスターの背中を打ちすえた!
斬撃をかわされて勢い余った所へ背後の衝撃が加わり、『うわっ』とそのまま前のめりに倒れ込むイビルバスター。
「そおれそれ!はーっはっはっは!」
その隙に、と倒れたイビルバスターの背中をメイスで殴りまくるシュラ。ガイン、ガインという乾いた金属音が辺りに響く!しかし、
『こ、これは…。全然痛くないぞ!』
イビルバスターの堅い装甲は、メイスのダメージを殆ど吸収していた。
痛くないのを確かめたイビルバスターは、すぐさま横転して起き上がり、間合いを取る。
「助太刀するわよ、シュラ!In Flam Grav……」
ソネーヨがファイアフィールドの魔法を唱え、素早くイビルバスターの回りを火柱で包む!
「おお、さすが拠点長。まるで異国に聞く火計ですな。」と、横の仲間がソネーヨの英断を称える。
しかし、当のイビルバスターはケロッとしている。
『何だ?急に温かくなったぞ?まるで温泉だ。』と、余裕である。
堅い装甲は打撃だけでなく、炎の熱まで殆ど吸収するようで、熱さを感じるまでには至らないようだ。
だが、ソネーヨの助太刀に対し、シュラは逆に焦りを感じていた。
「こんにゃろー、ふざけんじゃねえ!!これでも受けろ!ウラーーーー!!」
再びイビルバスターに突進するシュラ。
『ふふん、何でもかかってきなさい!』
先ほどの事もあってか、全く避けようとも身構えようともしないイビルバスター。
むしろ首を差し出し、人差し指でチョイチョイと「当ててみろ」という素振りを見せる。
「なめんじゃねぇーーやーーー!!」

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大急ぎで「ソネーヨ様ぁー!」と叫びながら、声のする方へと向かうシュラ。
一方、コウの意識はまだ有ったが、どうにか起き上がれる程度しか動けない。
「ぼ、僕も万事、休す……かな。はは……」
しかし、すぐに仲間を引き連れて戻ってくると思われたシュラだが、何やらもめているようだ。
「……そんな!…邪魔が……逃げたんでさぁ……」
「うるさーーい!言い訳……ないノ!」
どうやら、子供達を取り逃がした事を責められているらしい。
「こ、この隙に…」と、どうにか起き上がったコウは、シュラ達に気づかれないよう奥の茂みに身を隠す。ここで一旦体力の回復を図るようだ。

ソネーヨが連れてきた仲間は、みんなシュラ同様、灰色のローブをまとい、鉄製のバシネットを被っていた。
見た目の違いは、履いている靴や色違いのマントを身につけている位で、どうやらこれでお互いを識別しているようである。
その仲間を横目に見ながら、ソネーヨの正面に立って経緯を説明するシュラという構図である。
やがて、乱入者が子供達を逃がしたというシュラの説明をようやく信じたソネーヨが、
「よーし。じゃあ、その乱入者を処刑するわ。ここへ連れてくるのよ!」
とシュラに命じる。それを聞いた他の仲間は大喜びだ。彼らの言う処刑とは、その場にいる全員が参加するなぶり殺しの事だからである。
「わかりやした。お待ちを。」
一礼してコウの元へ急ぐシュラ。しかし、その時既にコウは茂みから移動して、別の場所にいた。
「このままじゃ、奴らに殺される……。でも、ここなら…。」
そう言って、刀をバックパックにしまい、代わりに斬魔聖龍刀を取り出す。
「相手はどうやらネオ・CFギルドのメンバーだし、やってみるか……。」
見つからないよう更にソネーヨ達から離れたコウ。
そして、斬魔聖龍刀のスイッチに指をかけ、「変換!」カチッと押し込んだ。
すると、筒の先端からオレンジ色に光る刀身が伸び、それがまばゆく輝いたかと思うと、刀身から黄金に輝く龍が9体飛び出した!
その龍が、コウの両脚、両手、両腕、胴、頭の各部位を護る黄金のプレートメイルに変化し、次々に装着されてゆく。
そして最後の1体がオーダーシールドに変化してコウの左手に収まった瞬間、全身の装備が真紅に染まった。
『変換完了!イビルバスター!!』(声もコウとは違って聞こえる)
そう気合いを入れた彼は、改めて装着された装備を見る。すると、どの装備にも必ず龍の顔が模様のように付いていた。
次に腕をブンブン振り回してみる。だが、重装備な見た目とは違い、何も着ていないかの様な身軽さだ。
『軽い、これなら思い切り動けるぞ!それに、さっきまでの傷が全部治ったみたいだ。よーし!』
イビルバスターは、急いでソネーヨ達のいる場所へ戻った。

「ソネーヨ様、奴が逃げた!くそったれ、もっと痛め付けてやりゃあよかった!」
コウに逃げられたと知ったシュラが、地団駄踏んで悔しがる。
その様子を見たソネーヨが、他の仲間に向かって
「よし、全力でそいつを探し出すのよ。」と指示を出した、その時。
『まてーー!!』
という声が背後から聞こえた。全員が振り向くと、そこには深紅の鎧に身を包んだ見慣れない男が立っているではないか。
「なッ、何者!」

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次々に子供達を捕まえようとするが、スルリスルリと腕の間を抜けて逃げ回る子供達。
そうしている間に、子供達は森のどこかへと逃げ去った。
「よーし、これでいい。無事に親御さんの所へ帰ってくれよ…。」
コウはそうつぶやきながらナイフをカバンにしまおうとしたその時。
「てんめぇーー、よくもやりやがったな!!生かしちゃおけねえ!」
そう言ってコウの胸ぐらを掴むシュラ。かなり激昂しているようで、バシネットの穴から湯気が昇っているのが判るほどだ。
「あ……ははは。まっ、まぁ落ち着いて、落ち着いて。」
コウが引きつった笑顔でシュラをなだめようとするが、全く聞こうとしないシュラ。
「うっせえ!このネズミ野郎が!!」
そう言って、ドンッと突き放す。尻もちをついて倒れるコウ。
「いっててて。まあ待ってくれよ。じゃあせめて質問させてくれ。なぜ子供達を捕まえた?」
よろめきながら、立ち上がりざまにコウが問う。
「うるせぇ奴だな!金がいるんだよ!金が!」
そう言うや否や拳を振り上げて殴りかかってくるシュラ。それをギリギリ右へ避けるコウ。
「あんた変わった格好してるけど、ひょっとしてネオ・CFギルドの人?」
少し間合いを取って再び質問をするコウ。
「おおよ!第十五拠点長ソネーヨ兄貴一の配下、シュラ様たぁ俺様の事だ!!」
答えながら、パンチを繰り出してくるシュラ。だが今度はサッとかがんで避けるコウ。
避けられたと気づいたシュラが、そのまま肘落としに変化させようとするが、それに気づいたコウは、横転してギリギリかわす。
「へっ!なかなかやるじゃねぇか。部下に欲しい位だぜ?」
「いやぁ、正直僕も驚いてるよ。まさかネオ・CFギルドがこんな近くに居るなんて!」
起き上がったコウは、すぐさま攻めに転じようと刀を取り出した。
「(姿を見られているから変換が出来ない……、それならこいつで勝負だ!)」
そして、シュラの灰色ローブを思い切り横薙ぎにして切り裂いた。しかし、
カーン、という金属音が響き、コウの体が小刻みに震えた。
「甘いぜ!ネオ・CFギルドの鍛冶頭、ゴートの鎧を斬ろうなんてな!」
両手を組んでコウの頭めがけて振り落とすシュラ。今度はドゴン、と鈍い音を立ててコウの脳天へ直撃!
「ぐっ、うぅ……!」よろめきながら2、3歩後ずさるコウ。しかし、
「そらっよ!」と繰り出された右フックが、今度はコウの腹に命中!
がくっ、とその場にひざをつき、刀を杖代わりに地面へ突き立てながら、シュラをキッと睨んでいた。
「そういやガキを逃がしてくれた礼をしてなかったなぁ。はーっはっはっは、オラオラァ!」
シュラが笑いながらコウの脇腹や顔を蹴りまくる。
その一撃一撃を受け続けながら、コウは逃げ損ねた自分の不運と、使う事の出来ない斬魔聖龍刀を恨んだ。

しばらく一方的に暴力を振るったシュラは、ボロボロになったコウの首筋を掴み、持ち上げた。
ヒューッヒューッとどうにか息をする程度になったコウを見て、フンッと思い切り放り投げた。
そして、ドサッと落ちるコウを見たちょうどその時、遠くから自分を呼ぶ声に気づく。
「お!兄貴が帰ってきた!へへっ覚悟しとけよ?」
シュラを呼ぶ声は複数有った。どうやら他の仲間とやらを連れてきたようだ。