封筒おとしたから「多動脳」という本を1年くらい前に勧められたので、文教堂で買って読んだ。「多動脳」は要するにADHDにはデメリットのみならずメリットもあるから前向きに生きようみたいな内容の啓発本で、おれが最も感銘を受けた内容が「人類はもともとアフリカの方にしかいなかったけど、スーパー多動症の人たちがあまりにも多動すぎたおかげで地球の至るところに移動し、人類という種を広めた」というところだった。
とどのつまり、ADHDの人がいなかったら、人類はアフリカに閉じこもったままだったのだ。おれは医者に言われたわけじゃないけど、自分のことをADHDなのではないかと常々思っていた。別に負い目があったわけじゃないけど、この本を読んだおかげで、なんというかステージが上がった気がした。なんと言っても、おれのような人間がいなければ人類はアフリカから出て来られなかったのだから。
それから封筒おとしたにADHDであることがいかに誇らしいかと因果を含めたのだが「この本を勧めるべきではなかった」と決然と言い放たれた。「多動脳」はおれの注意が欠如していたせいで、半分ほど読んだところで酒でびしょ濡れにして捨てた。新しい「多動脳」をアマゾンで取り寄せながら、新しいパラドクスを生み出してしまった、と思った。
あるとき、封筒おとしたからYouTubeのリンクが送られてきた。おれは仕事に行く前だったけど、封筒おとしたからのメッセージの開封はなによりも優先されるのだった。内容は重音テトの曲で、重音テトと言えばキャラクターを含めおれの好きなボーカロイドだ。重音テトと不純異性交遊的なアレコレに及べるなら、おれは魂を悪魔に売っても構わない。
ここにその曲のURLを直接貼っていいのかわからないから、曲の名前だけ書く。「BIRDBRAIN」とにかくこの曲を聴かないうちはこの先を読まなくていい。賭けてもいいけど、これは絶対にADHDの苦悩に苦しむ曲だ。
何度も聴いているうちにおれのADHDが盤石になったような気がして、封筒おとしたにそういう旨のメッセージを送り続けていたら、普通に無視された。ADHDの苦しみ、メリットが世間に受け入れられるのはまだまだ遠い未来のことかもしれない。まあ、おれは別に医者からADHDって診断を受けてるわけでもないんだけど。