Separation 市川たくじ著 アルファポリス ★★★☆☆

悟と裕子のふたつの物語。
「Separation-きみが還る場所」と「Voice」の2編が収められています。

この2つの物語は主人公の名前は同じでも全く違った設定です。
2人にとって別の未来が用意されていて、それぞれの話を僕たちに語ってくれた。
そんな感じがします。

この2つの物語は、後につづく「恋愛寫眞」や「いま、会いにゆきます」の原石でした。
まだ、作家として自覚が無いうちに発表した2つの物語を、作家として自覚をもった作者が、原石を磨き上げて宝石として「恋愛寫眞」や「いま、会いにゆきます」を発表したのではないかと思います。

しずかに、ひっそりと感動を与えてくれる作品です。
俺たちの旅 青春編 鎌田敏夫 著 角川文庫 ★★★☆☆

1970年代に放映された中村雅俊主演の青春ドラマの小説版です。

単純でまっすぐでその日一日を楽しく生きようとする大学生カースケ(中村雅俊)。
その同級生でいつも自分はダメだと思い込んでいるオメダ(田中健)。
カースケの小学校の先輩で何をやってもドジってしまうグズ六(秋野大作-当時津坂まさあき)。

生きることの悩みや喜びを感じながら成長していく青春物語。

もう何十年もたっていながら、小説にかかれている一つ一つの場面がドラマの映像となってよみがえります。

ビデオも無い時代だったので(あったのかもしれませんが家にはなかった)何を差し置いても放映時間には家にいるようにしていた記憶があります。
初めて自分のお小遣いで買ったレコードもこのドラマの主題歌でした。A面の主題歌よりはB面のドラマのエンディングに流れる「ただお前がいい」がお気に入りでした。

登場人物はみんなどこかに「やさしさ」を持っており、本質的に人間悪い奴はいない、と思わせるような作品です。
さらば、荒野 北方謙三著 角川文庫 ★★★☆☆

企業機密を持ち去り失踪した弟。
この事件をきっかけに主人公は事件に巻き込まれていく。

これでもかというくらいに人が死んでいくのは、なにかやるせないです。
こうなってほしい、という展開をことごとく裏切られました。

感覚的に何か決着がつかない感じです。事件は終わりましたが…。
ブラディドールシリーズの第一作目ということで、まだ序章なのかな。
※ブラディ・ドールとは主人公(川中)が経営するクラブです

何気に購入した本ですが、シリーズ第一作目でよかった。
順番に読んでいこうと思います。
行きずりの街 志水辰夫著 新潮文庫 ★★★☆☆

十数年前に女生徒とのスキャンダルで東京の名門校を追われた元教師。
郷里で塾講師をしていた彼は、失踪した教え子を探すべく東京へ。
教え子の失踪は彼を学校から追放した関係者たちが大きく関わっていた。
初めて知る自分が追放された真相。
過去のわだかまりを清算すために、真相を追究していく男の物語。

読み進めていくうちに、何か妙な感覚がまとわりついていた。

元妻が主人公にいったことばでそれが何かわかった。
「~あなたは肝心なところでわたしを必要としない男性だということなの。それはすごく淋しいことなのよ、女にしてみたら」

別れた妻も僕に同じようなことをよくいっていた。
主人公はなんとなく僕に似ているのだ。

ハードボイルドの主人公としては、かなり情けない。
別れた妻に未練たらたらだったり、変に理屈っぽい言い回しが多かったり。

人によって、好き嫌いがはっきりする作品のような気がします。

身にしみたことば
「まったく、男ほど感傷的で、独りよがりで、依頼心が強くて、空想的な思考しかできない生きものも少なかった。これではリアリストの女に勝てるわけがない」
いま、会いにゆきます 市川拓司著 小学館 ★★★★☆

とてもシンプルで、さりげなく愛というものを感じることができる物語です。

夫(たくみ)と息子(ゆうじ)を残し、死んでしまった妻(みお)が生前に残した言葉の通り、再び二人の前に姿を現す。記憶を無くして。
ありえない話はさらにありえない、けれどとても素敵な結末へとつながっていきます。

竹内結子さんと中村獅童さんで映画化されたらしいですが、その二人があんなことになってしまい、なにか作品を汚されたように思ってしまうのは僕だけでしょうか?
ちょっと、かなり、残念です。

なんてことを、言ったらゆうじに言われそうです。

「そうなの?」