司馬先生「花神」11…村田蔵六が出現したわけ⑤
蔵六を世に送り出した桂小五郎について大事なことが書いてあるので書く。
中巻p360 桂は執念深い男だった。さほどの才能もない桂が明治の元勲に
なりえたのはこの性格に関係ある…とある。執念深い人間が蔵六を見出し
トップに行くように丹念にしつこく育てた。要は蔵六の才能だけでは世に
出られなく、それを補う役割として執念深い男の関与があった…という事を
記しておきたかった。
さらに攘夷に燃えてた長州人は熱血・無頼・狂気と言った表現であるが
蔵六は冷徹・沈着・冷静で技術者を自覚しており、一般的長州人とはまじわりも
なく、対局をなしていたと読める。小五郎が蔵六を見込んだのはそういう所と
書かれている。周囲の狂気に同調せず、技術者に徹した、徹せられる才能が
あったと理解した。
次に勝海舟が「長州に村田蔵六がいては、とても幕軍に勝ち目はない」とp386に
書いてある。勝は蔵六に会ったことがないそうだが、なぜそう思うのか。
まず蔵六が幕府雇われの教授であったから面識はなくとも名は知っていた。
そして蔵六が書いた兵書の翻訳や解釈も読んだそうだが、これには海舟は
驚かなかったと書いてある。驚いたのは蔵六は見たこともない欧米の軍事技術の
本質を見極めていたこととのこと。という事は勝も見極めていたことになる。
上記の一文は軍事を知らない私には理解できないが想像するに
①その解釈がとても理論的で分かる人には(要は勝には)水が流れるように
腹落ちした
②一方幕府体制300年弱の軍事体制が戦国のままで①の理論にとても敵対不可
であることがよく理解できた
③そのために必要な兵器・組織体制・運用が理論的で書物の上で既に勝てない
ことが理解できた
④幕府側に蔵六ほどの有能な理論家・作戦家・実行家・政治家・熱意ある人材
がいないことも勝はわかっていた
ということと想像している。とすると技術者としての知識の高さ+本質を
見極める才能が蔵六にあったことが読み取れる。そうか…でもな凡夫の私には
その本質が理解できないんだな。この場合の本質とは…
さて幕軍との戦いが始まったが、p408 山口に大村益次郎という人がすわっている
かぎり、戦いがいかに惨烈になっても負けることはない…と書いてある。
そういう風聞が流れたらしい。これ戦にもっとも大切なことだと思う。
不安な兵士に安堵感と自信を与える。さらに持ってる兵器は最新だという事実。
さらに薩長同盟がある。なるほどな数が多くてもこれでは幕府は勝てない気が
してきた。しかし幕軍にもフランス指導の歩兵部隊があるから素人の私には
まだ腹落ちしない。が、有能な指揮者がいないことは明白だから、そこかな。
ここで結論めいたことが書いてある。p409 司馬先生の数多の書籍に中で
何度か書かれているが「人間の才能の中でもっとも稀有なものは軍事的才能」
日本史の中でもそれを持っていたのは源義経、織田信長くらいなものと。
蔵六もそれを持って世に生まれたらしい。でもそれを言っちゃうとそれで終わり。
軍事的才能を持った男が幕末の長州に現れ、国家を一新する…そうなんでしょうが
それでは「わかりました。すいません」で終わり。でも終わりたくないので
続けることにする。
別件だがこの項の最後に筋とは無関係ながら書いておきたい人の名を掲げる。
岸静江 浜田藩の目付け役で関所を守っていた。たった一人で関所の役目を
全うし、長州軍の銃弾を受け、亡くなった男の中の男。30歳。深く尊敬する。
こういう一般には無名の偉人が歴史上雲霞の如くいる。司馬先生のおかげで
少しでも知ることができる。感謝。