初見の方へ:声優のすみぺこと上坂すみれさん、音楽、映画多めの趣味ブログです。

「太陽を盗んだ男」は昔からずっと気になっていたが、すみぺが毎週土曜「上坂すみれのおまえがねるまで」昨日8日の最新回で言及したのを機にようやく観た(9分0秒~)。

 

 

沢田研二演じる理科教師が手作りで原爆を完成させ警察に要求を突きつけるが、その内容が「ナイター中継の延長」「ローリング・ストーンズ来日」「5億円」。しかも菅原文太演じる警部のいっそ50億でどうだ、どうせ政府なんてろくでもないことに金を使ってるんだからという申し出を断る始末。

ナイター中継の中途半端さは長年にわたって野球ファンの最大級の不満だったし、1990年に初来日が実現するまでストーンズはメンバーの前科ゆえに入国許可が下りず日本のロック・ファンにとってまさしく幻の存在だったし、5億円という金額も最大の人気スポーツだったプロ野球でも1億円プレイヤーはレアだった(ゆえに話題になった)80年代の感覚からすると十分過ぎるほどの大金。1979年公開ながら80年代の世相ならリアルタイムという世代にもリアリティのある要求なのだ。

それにしてもだいぶ後年の作品だがついつい比較してしまうかわぐちかいじ「沈黙の艦隊」の政治性に対してあまりにも小市民的な凡庸さ。そこに共感するなら、画面からこちらを見つめるジュリーの虚ろな眼差しに映る自分もまた凡庸な存在なのだ。

なお、付け加えるなら東西両陣営間のデタント(緊張緩和)で核戦争の脅威が後退していた時代だからこそ原爆がオモチャのように扱われる本作が成立したのかもしれない。まさに公開年の79年にソ連がアフガニスタンに侵攻してデタントは終わり、核戦争の恐怖が日常の80年代が訪れてフィクションの世界も「北斗の拳」「AKIRA」等を生むようになったのだから。