モノゴトにはなんでも裏と表があるのに、
いまは裏を見ない。
ないことにする時代だなって。

去年、「 悪人 」という妻夫木さんが主演された映画が公開されました。
ご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。
これはなかなか興味深い映画で、
今の日本という国と日本人について、
いろいろ考えさせられる内容でした。
これから観る方もいらっしゃるでしょうから、
あまり詳しくは書きませんが、
どこにでもいる若者が主人公です。
私もうる覚えなので、多少違っているかも知れませんが、
その若者には両親がいなくて、
長崎の漁村で土木作業員をしながら、
年取った祖母 (樹木希林) を養い暮らしています。
仕事をして家に帰って、という
なんの変化もない退屈な毎日の中で、
深い孤独を感じていて、
『出会い系サイト』に登録するんですね。
そこで出会った女性に彼なりに
本当の恋心に近いものを抱くのですが、
いろんな状況が重なって彼女を殺してしまう。
主人公、そして出会い系サイトで出会って
殺されてしまった被害者の女性、その父親、
そして後から彼と巡り会って
彼を深く愛するようになり一緒に逃避行する恋人。
それぞれが簡単に割切れない事情を抱えて
それでも一生懸命生きている。
人間が生きるということのキツさや、
おろかさというものが、
きれいごとではなく、
非常にリアルに描かれています。
特に私の印象に残っている(思わず号泣してしまった)シーンは、
主人公が犯人だと分かって逃亡している時にね。
そのことが世間に知れ渡ってきて、
田舎の小さな街ですから、
大騒ぎになる訳です。
彼の実家で、一体なんでそうなったかも
良く分からないで当惑したおばあちゃんが暮らしているところに、
昼夜を分たずマスコミが詰めかけて、
容赦なく責めたてる。
「おたくのお孫さんが人を殺したことについてどう思いますか?」
「出会い系に入って女性を殺してしまうような孫を育てた罪を
世間に申し訳ないと思わないんですか?」
おばあちゃんは、ただおろおろするばかりです。
そのおばあちゃんがバスに乗って出かけようとすると、
わーっとマスコミが追いかけてくる。
そこでバスの運転手が、
そのマスコミを一喝して追い払って、
おばあちゃんだけを乗せた後、
「あんたは何にも悪くない。しっかりせんといかんね」
というようなことを言うんです。
( セリフはちゃんと覚えてないから
正確にはちょっと違うかもしれませんが )
人として生きることの深さというものを感じたシーンでした。
もちろん、他人の尊い命を奪うというのは、
人としてしてはならないことです。
ただ、それは生まれながらに悪い人、
私とはまったく違う特別な人のことではない、
ということを認識するということが
大事なのではないかと思うのです。
人間は誰しもいい部分と悪い部分を持ち合わせている。
人は誰でも他人に言えないような
キズや痛みや矛盾を抱えている。
さぼりたかったり、
人をうらんでしまったり、
他人が不利益をこうむると分かっていつつも
ずる賢く立ち回ったりする感情というものを持っている。
それが人間という生き物であって、
正しいことだけをして生きる、
勧善懲悪というようなことって、
現実にはありえないと思っています。
人は神様じゃないですから。
正義の剣を振りかざして、
正しいことを人にも強要していく人が、
一番おそろしいと思うことがあります。
別に悪いことを推奨している訳ではないんですよ(笑)
ただ、そういう、
いいところも悪いところも含めてあわせもったものが、
自分も含めて人間なんだと思うことができると、
人に対してのキャパが広がる、というか、
真っ向から否定したり敵対するだけでない見方
というものができるようになるのではと思います。
そして両面を持った上で、人は誰しも、
人として、
その人なりに人生をより自分らしく充実させ、
深めていきたいと努力している。
誰かを愛したいし、愛されたい。
それができるのが、人間のすごさだと思うのです。
そんなことを思うと、
今までだったら、ありえない、
許せないで終わってしまったことに、
少しその先が見えることがあるかもしれません。
そして、その視点をもつことは、
自分の自分自身を見つめる目線も変えてゆくのではと。
いまの日本は、こう生きよう、
これが正しい生き方です、というような
教科書通りの型にはまらない人は受け入れない。
というよりもないことにする、
という思想が蔓延しているような気がします。
それはそのまま、自分自身に対しての姿勢にも影響しますから、
こうあらねばならない、こうあるべきだという、
目指すべき理想と、そうできない自分との
ギャップに苦しむことが多いかもしれません。
自分も人も結構だめなところもあるけれども、
それも含めて受け入れていく。
誰しも、その人なりに一生懸命に生きている。
だけど、失敗もするし、だめだめな時もある。
愚かさを含めて人間なんだって認めてあげられると、
人に対しても自分に対しても、だいぶ優しくなれるし、
愛おしいと思えるのではと思っています。
今日は同時多発テロから11年目の日ですね。
あらためて亡くなった方のご冥福を心よりお祈りいたします。
人として生かされていることに感謝して、
自分も他人も大事にしたい。
そんなことをあらためて思う朝でした。
みなさんの今日が、あたたかい光につつまれますように!
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