選択と覚悟 | こころもよう

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日々、感じたこと、考えたことを綴るブログ

昨日、術後1ヶ月の検診に行った。

 

 

手術直後に

手術台の上で聞いた担当医師の言葉と

入院中、病室に回診に来られた際に聞いた

今後の見通しについての話を

冷静に、総合的に考えてみると

術後に行うBCG治療(予防治療)は

ほぼ、免れられない状況であることを

自分なりに受け止め

受け入れる気持ちになっていた。

 

 

「生検の結果次第では......」という

一縷の期待を抱いてしまうようなフレーズも

確かにあったけれど、なるべく、その言葉に

縋り付かないよう自分を諌めてきた。

 

 

 

だから、昨日は

「今日からBCG治療を開始します」

という言葉が、医師から発せられることを

95%、確信していた。

 

ならば、せめて

副作用が、少なくて済むことだけを

祈り、願おうと心に決めていた。

 

 

 

けれど

 

担当医師の言葉は、残りの5%の中にあった。

 

 

手術で採取したがん細胞を検査したところ

俗にいう「顔つきが悪い」がんではなかった。

 

BCG治療は

再発予防のための治療ではあるけれど

100%再発がないわけではない。

 

BCG治療は

何回やれば十分だということは言えないし

それなりの副作用はある。

 

上皮がん(尿路上皮がん)は

とくかく、再発しやすいがんである。

10回くらい手術を繰り返す人もいる。

 

多発性の場合

目視で確認できなかったがん細胞を

手術で取り残した可能性もゼロではない。

 

.........

 

 

 発せられる担当医師の言葉は

一語一語、私の胸にしっかりと届いた。

 

 

「その上で.....」と一旦、言葉を切り

「これから先、どうするかは、私(医師)と

Mさん(私)の相談で決めましょう」と

私の心の中を覗き込むような目で言われた。

 

 

悩ましい選択を

今、ここで、しなくてはならない。

 

 

診察室に入る前まで

 

再発のリスクは避けたい

辛くても、治療はやった方がいい

治療から逃げてはいけない

もっともっと辛い治療に耐えている人も

世の中にはたくさんいる

自分を信じて、治療を受け入れよう

 

と、繰り返し自分に言い聞かせて

固めてきたはずの決心と覚悟が、少しずつ

心の中で緩み始めるのを感じていた。

 

 

オプションはたくさんある。

 

 

あるけれど

問題に直面すると

心が頑なになり

視野が狭くなり

全貌が見えなくなり

必要以上に自分を追い詰めて

もう、これしかない、と悲壮な思いで

手近にあるオプションを選んでしまう。

 

 

その、強迫観念的な自己暗示から

じわじわと解放されていった。

 

 

自分の心と体を痛めつけるのではなく

自分の心と体にやさしくなりたい。

 

 

そう望んでいる自分の心の奥の声が

聞こえてくる。

 

 

最終的に

再発のリスクも覚悟した上で

「予防治療を、今回は、やらない」

という私の結論を医師に伝えたら

「わかりました。私もそう思います。

その方向で行きましょう」と

うなづいて下さった。

 

 

わずか5〜6分で出した

ファイナルアンサーが

たとえ、間違っていたとしても

今は、心静かに「YES」と思える。

 

 

帰宅して、私の選択を夫に話したら

「君のことだから、きっと

治療をしたいって先生に言ったと思った。

意外だった」と言われた。

 

普段の用心深い私のことを

彼はよく知っている。

 

 

帰り道、芝公園をゆっくり歩きながら

もう、誰だかわからないすべての人々に

心から感謝したいような気持ちになった。

 

 

 

新しいノートの

最初のページを開いたような

新鮮な未来の時間が

目の前に開かれたような気がした。

 


 

 

 

クリップ

 

 

目を凝らし 耳を澄ませば

いろいろ 見えてくるものが ある