「子供帰ってきた?」
そう尋ねてきたのは、某設備会社社長Gさん
60代後半のGさんは、とても朗らかで褒め上手な人だ
息子1が、大学生になっていることを話したのはもう1年以上前だが、それを覚えていて、その話を振ってくる
「滅多に連絡ありません。元気にしていると思います」
と、答えると
「男の子は、それくらいでちょうどええよ」
と、Gさんは言う
「それじゃー、下の子ももう大学生?」
「今、高3です」
「そうかー。それじゃあ、あと1年もせんうちにジムインさん寂しくなるなぁ」
「そうなんですよ」
「たまに子供のところへ遊びに行ったりすればいいが」
「そうですね」
「ジムインさんは、趣味ってあるん?」
「趣味?!」
私は、趣味といえるものが無い…
やりたくないこと、見たくないもの、会いたくない人ならすぐに思いつくが、好きなこと・もの・人は、なかなか出てこない
「趣味ないん?」
「特にないですねー。趣味ありますか?」
相手に聞かれたことを質問し返す
これは、会話の基本だそうだ
「僕はなぁー」
と、目を輝かせて話すGさん
質問して正解だったんだ!と、ひとり納得する私
「ジムインさん、バイク乗らんの?」
「はい、乗ったことないです」
「一度も?」
「あ、はい。一度も乗ったことないです」
「じゃあ、登山は?」
「しないです」
「え??登山せんの?」
「あ、はい。しないです」
「それじゃー、なかなか、趣味は見つけれんわなー」
どう答えるのが正解なのか分からない
私の答えはこちら
スゥーーーーーー
言葉が出てこなくて、息を細く吐いただけ
「なんかいい趣味が見つかったらええなぁ~」
と、Gさんは言い残し帰って行った
きっと、
「バイクと登山だけじゃないですよ~」
とか、
「他にも選択肢あるじゃないですかぁー」
とか、とかとかとかとかとか言い様は沢山あったはずだ
この究極の2択とも言えるバイクと登山の質問にもっと興味を示すべきだったのか、献身性を持って会話を続けるべきだったのか未だに分からない
ただ、私の中の会話魂にパトラッシュが寄り添って来たから、
疲れたろ?僕も疲れたんだ…
と、会話魂がパトラッシュとスリープ状態になってしまった
結果
スゥーーーーーー
となってしまい、会話を終わらせてしまった
これは、Gさんが帰るきっかけを与えられたと変換してみればいいのではないだろうか
従って、ある意味、会話美人なのかもしれない