我が国は、比較的格差のすくない同質社会、教養レベルでも支配者層と庶民層の落差はさほどないと言われます。

1000年以上も昔、清少納言や紫式部など、女性が、それも必ずしも最上流階層でもなかった人たちが今でも読むに耐える著作を著したというのは、日本人の誇りです。こんなの日本だけです。

万葉集の昔から、現代に至るまで庶民でも詩(俳句、短歌)を嗜むというのは、日本ならでは。全体のレベルというか、底辺が広く、昔から文盲(非識字)の比率は低いといわれてきました。

 

ペリーが庶民の子供の読み書きができることに驚いたとの史実があります。 幕末には全国に1万5千以上の寺子屋があり、成年男子の識字率70~80%は世界一といわれています。

私もそういう民族の誇りを大事にしたいと思うものですが、ただ、こういう議論ってことさらに自尊心におもねる向きもあるので、どこまでが事実か、慎重に見る必要があるでしょう。

 

1世紀頃、中国から字がつたわるまで日本語には字がありませんでした。漢字を読み書きできる能力を持った人が増え始めたのは、仏教などがしきりに入り始めた6世紀から7世紀になってからのようで、そういう意味では新参者です。

 

ペリーのおそらく江戸での観察とは裏腹に、当時8割以上を占めていた農民層は識字率が低く、明治にはいってからの調査(1881年長野県北安曇郡常盤村=現在の大町市)で15歳以上の男子882人を対象にした調査では、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%、更に出納帳を書けるものは14.5%いたが、普通の書類を自分で書けるものはわずか4.4%、公布達や新聞を読めるものは1.7%しかいなかったそうです。女性に於いてはもっと低かったでしょう。


戦後、占領軍が全国の15~64歳約1万7千人を対象に行なったテストでは、かなさえ正しく読み書きできない」「かなはどうにか読み書きできるが漢字はまったく読み書きできない人」が2・1%で、「日本人の識字率は極めて高い」との評価を受けています。

一方では、このテストは記述式は25問で、まぐれ当たりの余地のある選択式は65問、読み書き能力があるとされたもの(90点満点に不注意などによるミスを考慮して補正)は6・2%にしかならなかったそうです。 

 

そういうわけで、多少額面通りではないにしても、ペリーの実感は概ね正しかったようで、欧米列強から「舐められない」ですみ、独立維持に貢献したのは事実だと思います。

 

で、話は現代。

もちろん識字率ほぼ100%ということになっています。

でも、最近、若い人とやや複雑な文章のやり取りをしていて、頭がクラクラしてきました。

長文でグダグダ書くのは老人の悪癖だと言われますが、込み入った多岐にわたる話をする場合は、どうしても長くなります。

やや込み入った依頼を長文で丁寧にお願いすると

ー 了解っす。

そんなに簡単に了解できるわけ無いと思い、箇条書きして個別に念押しすると

ー 調整します。

おいおい了解していたんと違うんかい。なにか、話通じているのかわからなくなってきます。

自分だって偉そうなこと言えません。観光に行って碑文なんか見るけど何が書いてあるのかさっぱり読めません。

スマホやパソコン使っているからちょっと込み入った漢字は書けなくなりました。読む方だって、画面を拡大するか、老眼鏡かけて目をカッと見開かないと読めない。これも一種の文盲。

 

(文盲という言葉は差別用語なんだそうですが、中身のない言葉狩りには与したくありませんので、ご容赦を)

 

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