日曜日(21日)のことだ。以前より機会があればと思っていた、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」を日比谷の映画館に見に行ったのだ。予約したのは前日夜。最前列しか空席がないほどの人気だったのは昨年7月の公開を考えたら少し驚いたが、アカデミー賞受賞効果もあるのだろう。最前列は正直、躊躇したが、ほぼ真ん中の席をシニア割引1300円で予約した。この日は東京は終日曇りで、時折雨がぱらつくような天気だったが、自宅から映画館までの往復は少し遠回りして歩くと決めて実行した。往路は第一京浜まで南下して、立会川駅近くにあるカットハウスで長くなった髪を切り、そして品川駅まで旧東海道を歩き、そこからは運河沿いを歩きながら、新橋駅近くで再度第一京浜に出て、ジーパーズという輸入ゴルフ製品を扱っているところで、最近出たばかりのドライバーを見に行き、それからランチをして日比谷公園近くの映画館までというものだ。結論から言うと、この通りに事は運ばなかった。まず、カットハウスだが、ここは週末は一人でやっているのは、以前たまに立ち寄ったことがあるので知っていたが、先客が3名いたので、諦めざるを得なかった。カットハウスをパスしてからは、上述した通りの経路を歩いたが、距離の見積りが少し違っていたようで、途中でゴルフショップに立ち寄ることは諦めて真っ直ぐ映画館へと、幾分歩速を早めて向かったのだが、開始時刻の正午まで30分を切った頃に漸く到着できたのだ。ランチは一瞬考えたが、どうにも空腹なので取ることにし、少し歩くと新橋から続くガード下飲食街があるので、そこで提供が早そうな立ち食いそば的な店を探したが、見当たらない。仕方ないので、目に入ったランチを提供する居酒屋の前で鳥そばのメニューを見つけ、中にほとんど客がいなかったので、ええい、ままよと入った次第。そして注文した鳥そば大盛りが提供されたのが、11時43分くらいで、熱々の鳥そばを急ぎ食べて店を出たのが11時50分だった(あまり味わう余裕はなかったが、結構、おいしかったような)。映画館到着は開始5分前。トイレに立ち寄り最前列に着席したのが2分前であった。

今思うと、ここで無理をしたのが良くなかったのかもしれない。前々日まで海外出張で、前日は週末にもかかわらず終日本社で会議があり、やはり体は疲れていたようなのだ。映画劇場最前列に座った途端に、心地よい疲労感とともに私を襲ったのが、猛烈な睡魔であった。結局、寝まいと抵抗するものの、目を閉じたら数分経過していたなんてことが幾度かあり、肝腎の部分の視聴をすっ飛ばしてしまったのだ。主人公の少年が母親の妹である継母を追って入り込んだ不思議な世界で若い女性に助けられたところで記憶がまばらになり、途中でご先祖様と会って何か話をしていたような場面を眺めながら(見たとは書かない)、気づいたというか覚醒した時は、母親と思しき少女と禁を犯して産屋に入っていた時なのだ。この映画を見た方はわかると思うが、私が睡魔と戦い、そして負けてしまった時にスクリーンに流れていたはずの場面を見逃したのでは、一番重要な筋がフォローできるはずもない。最後の現世界に戻る場面は一種の敗北感をとももにスクリーンを見つめているしかなかったのだ。それにしても、わざわざ3時間近くも歩いて見に行った映画なのになんたることか。この気持ちが本ブログのタイトルである。

復路は、それでも往路で果たせなかったカットハウスの立ち寄ることに留意しながら、クラブの試打ができるジーパーズ大崎店を目指すことにした。だが、この日は私の日ではなかった。カットハウスは見つけられず、しかも芝の増上寺を過ぎてから、勘違いで道を少し間違えてしまい、結構な遠回りをする羽目にもなり、カットハウスは笑点に間に合う時間に帰宅するためには必然諦めらざるを得なかった。ジーパーズ大崎店には予定より遅れて無事着いたのだが、興味のあったクラブ(テーラーメイドのミニドライバー)は米国より入荷済みで、実物を見ることもできたのだが、店側の判断で、新製品とはいえ見た感じは昨年発売のものと違いがわからないとのことで、試打クラブは昨年発売のモデルしかなかったのだ。確かにシャフトも昨年モデルと全く同じ、ヘッドも文字デザインは別物だが、形状はどう見ても同じにしか見えなかった。斯くして、この日は、予定したこと全てが成就せず、一つだけポジティブにとらえるとしたら、4万歩近くの約30キロを歩いたことくらいであったのだ。そんな日もあるということだ。

連休前の今週はこのような始まり方をして、そして本日は、都内の本社への引越しであった。新事業本部が本社に設置されてその担当となり、5年目にしての異動となった。これまで都内から毎日多摩川を渡り、多摩丘陵の丘を登って通っていたのが、明日からは都内23区となり、多摩川を渡る事はなくなった。これまでの郊外の河川のある里山的な丘陵の雰囲気が都心の桜並木に様変わりするが、自宅からの私鉄最寄駅へは変わらず区立公園内を通ることになるので(山手線利用は、所要時間は少し短いがやめた)、都心の自然の移り変わりをあらためて注意深く見ていこうと思う。