ライノセラスはジュエリー業界でこそ、大メジャーなCADシステムだが、他の工業系の業界では、その上位に、SolidWorksとか、CATIA、Alias等のミッドクラスからハイエンドのCADシステムがメインで使われており、ライノセラスは、その補助的なモデリングをするモデラーとの位置付けだということである。
で、それらのモデラーは、ソリッドモデラーなので、ライノセラスのようなサーフェスモデラーというのは、実は、少数派らしい。
ワタシも含め、腕に覚えのあるライノ・ユーザーが、「じつは、これもシングルサーフェスでできてるんだよね。…」みたいによく自慢しているが、他の業界では、有り得ないことらしい。(笑)
というのも、ライノで作ったデータを上位のCADシステムに受け渡すためには、それでは成立しないんだそうである。
先日遊びに来てくれた、実に三十年間CADデータを作ってきたというU氏の言葉なので、間違いないことなのだろう。
現在開発中のプログラムや、先般の"EVANCE RRAP"など御覧に入れたところ、「なかなかよくできているけど、これは、ライノセラスで完結しているもので、ハイエンドのモデラーにこのまま持っていくのは、難しいと思う。」ということだった。
聴きようによっては否定的に聞こえるけど、ワタシは、そうは思わなかったのである。
つまり、ワタシがこの、ライノセラスという少数派のサーフェスモデラーしかよく知らないので、こういった発想が生まれたので、逆に、CAD全般を知悉していたら、おそらく決して生まれなかったアイディアなわけである。
コロンブスの卵じゃないが、ワタシが想定している用途で使ったら、性能、とくに計算スピードでこれを凌ぐものを作るのは、なかなか難しいのではないかと思うのである。
それはライノがサーフェスモデラーだから成せるワザなのだ。
そもそも、ジュエリー業界では、ライノセラスだけでモデリングは完結しているわけで、それらのハイエンドCADシステムみたいに、空力や、強度や、カムの嚙み合わせのシミュレーションをするのでなければ、これで問題ないわけである。
不自由だったり、無知だったり、世間が狭かったりするからこそ、独自なものが生まれるということもあると思うのである。
メジャー化、グローバル化されることによって、東京でも、ベルリンでも、パリでもロンドンでも、アムステルダムでも、街に並んでいる商品は、同じようなものばかりで、ちっとも面白くないのである。
ジャズマニアなら知っている人も多いだろうが、ジャンゴ・ラインハルトというギタリストがいる。
彼は、若いときの火事によって、左手の薬指と小指に障害が残った。
だが、それを克服することで、独自の奏法を生み出したのだ。
有名なモダン・ジャズ・カルテットの名曲「ジャンゴ」は、彼への多くのトリビュート作品のうちのひとつである。