まあ、ワタシが始めた頃と違って、ジュエリーCADも普及して、普通になった。
ある程度の規模のメーカーなら、使っていないほうがおかしいくらいになった。
勿論、個人で使っている人も沢山いるだろう。
「そんなもん、使いモンになるか。」と・・・馬鹿にされていた十数年前が、すでに大昔のような気がする。(笑)
しかし、ワタシもそうだが、多くの方が指摘されているように、「ジュエリーCAD」が一般的になったからといって、ジュエリー業界がさほど変わった訳ではない。
そもそもが、ジュエリー業界というのも変わった業界である。
中小零細メーカーが殆んどで、それでもちゃんとやっていけているみたいである。
他の多くの産業のように、企業の集中化、集約化が進まない業種である。
なぜ進まないのだろう。・・・
ワタシが初めに入った会社は、山梨でも指折り数えられるようなメーカーで、当時はバブル絶頂期だった。
したがって、全国区の異業種の超有名企業が触手を伸ばしてきたが、本気で手を出さなかったのは、ジュエリー産業というのは、煎じ詰めると、結局職人の手作業に依存する訳で、大企業の得意なマスプロダクションにとことん馴染まない業態だったからだとワタシは分析している。
勿論、何社かの大手で独占するよりも、小さなメーカー(個人も含めて)が、沢山あったほうがデザインのバリエーションが多彩になること、基本的に技術があれば一人で完結できてしまうので、企業化するメリットが無いことなど挙げられるが、これも、煎じ詰めれば、個人の手作業レベルの仕事だから。・・・ということに集約される。
で、CADを使っても、原型の修正、仕上げや石留めなど、最後は職人の手作業に頼る訳で、原型やさん(なかにはCADに仕事をとられて転職した人もいたかもしれないが。・・・)が、CADを使うようになっただけのことだったというわけである。
しかし、たとえば、わが社が開発した「ジャストフィット3D枠」のように今まで職人の領域だと思われていたものも今後、システム化が進んでいくだろう。
「ジャストフィット3D枠」は、熟練した職人が時間をかけてヤスリを擦って調整して、合わせられるレヴェルを遥かに超えるレヴェルでの石とのフィット性を効率よく実現してしまう。
職人さんがいくら時間をかけても、手作業でこれを超えるのは不可能だろう。・・・
ワタシが始めた頃は、「ガチガチの原型しか作れない。」と云われていたジュエリーCADだって、いまでは、それなりの人が使えば、まるで手作りのような複雑な曲面で構成されたものでも容易に出来るようになった。
今後も、どしどしデジタル技術は進化していくのは間違いない。
また、同じジュエリーCAD使いでも技術レヴェルの差はいままでに比べて更に開いていくだろう。
それが、いいことなのか、悪いことなのか、ワタシにはわからない。
でも、そうなってくると、状況は微妙に変化していく可能性は、小さくないかもしれない。
3Dプリンターが街の電気屋さんで売っている時代、大企業の製品でもいろいろカスタマイズできるのが当たり前の時代だからね。
まあ、でも、当分は、彫り留め、磨きと石留めの職人さんの仕事はなくならないだろうけど。・・・(笑)