3月2日MSNニュースには以前から右翼記事が。自衛隊の在その他旧作品から作と文豪作品を掲載する。 | europe123 Art OFFICE

2 марта. MSN News уже некоторое время публикует статьи правого толка. Состояние Сил самообороны и связанные с этим вопросы. Характеристики стран и многое другое. Будут размещены старые произведения и произведения великих писателей, такие как «Морихару Рюносукэ Акутагавы».
3 月 2 日 MSN News 刊登右翼文章已有一段时间了。 自卫队的状况及相关事项。 国家的特征等等。 刊登旧作以及《芥川龙之介的森春》等文学巨匠的作品。
3월 2일 MSN뉴스에는 이전부터 우익 기사가. 자위대의 본연의 방식과 그와 관련된 일. 국가의 특징 기타. 구작과 문호작품 “아쿠타가와 류노스케작 모리코 봄”을 게재한다.
March 2nd MSN News has been carrying right-wing articles for some time. The state of the Self-Defense Forces and related matters. Characteristics of countries and more. Old works and works by literary greats such as ``Ryunosuke Akutagawa's Moriharu'' will be posted.
3月2日MSNニュースには以前から右翼記事が。自衛隊の在り方とそれに関連する事。国々の特徴その他。旧作品と文豪作品「芥川龍之介作 杜子春」を掲載する。








 ニュースにもいろいろあるが、MSNニュースは、雑多な記事をある意図を持ち載せているのだが、右翼の記事が少なくなく、読まない方が利口・・所謂、物事を極端に歪ませた記事と言える。
 こういう会社の本社を調べたところやはりお粗末・・。
 同様に、ヤフーも似たようなもので・・とここまでくれば気が付くだろうが・・USAの会社・・やらせが得意なUSAなのだからそれも無理はない。



 自衛隊の在り方が今後非常に大きな問題となる。
 政府は相変わらず軍事費関連増税を目論んでいるが・・本当に自衛隊は必要なのか・・?答えは必要・・。
 ただ、政府だけにあらず・・どうして軍事力が必要なのかの理由については、先ず「仮想敵国」説・・一体どこの国がこれに相当するのか?
 歴史上或いは地政学的に考えたところで、この国の近くの国と言えば「South Korea」「North Korea」「China」あたりしかない事になる。
 富国強兵と言う言葉はずいぶん前のものであり・・現代の国際情勢にそのまま当てはめるには無理があり過ぎる。
 先ず先に、政府は同盟国というUSAから押し付けられた関係の維持を望んでいるが・・それでは領土問題にしても「竹島」が返還されないのは何故?
 韓国と言えば統一教会も然り・・交易面でも大したメリットは期待できないのだが・・日米韓合同演習の無駄使いの目的は?
 この国の国民も同じであるように「North Korea」のICBM実験その他を危惧と連想するのだろうが・・この国を攻撃する考えもメリットも無いのが現実。
 彼らの敵はあくまでもSouth Korea に他ならない・・以前にも申し上げたが・・大東亜戦直後に起きた朝鮮戦争・・この国にとり「東洋の軌跡」と西側諸国から言われた原因となった昭和の好景気は、朝鮮特需が齎したものである事は言うまでもない。
 だが、この朝鮮戦争は終戦に至っていない。つまり、イスラエルが盛んに餌として世界中を騙そうとしている「停戦」に素直に応じれば、テロ組織だけでなくアラブ諸国にとり大変な悲劇に通ずる・・。
 イスラエルの極右政権が目論んでいるのは「人質奪還」だけであり・・それ以外の事には全く関心がない・・しかもUSA・Anglo-Saxonが後押しをしているというのが実状。
 同様に・・南北朝鮮半島も未だに休戦状態であり・・軍事力で勝るものが勝利するのは当然だが・・此れを懸念しUSAが、近くに存在するこの国に迷惑をかけている。
 終戦後70年を経っても未だにUSAの基地が列島あちこちにあるのは・・本来は全くおかしなことに過ぎない。

 わき道に逸れる。

 Germanyはゲルマン社会であり、この国とは全く考え方が異なる上に・・現在の政権は、以前のメルケル女性首相と比較し右翼政権・・で、USAの基地がある。
 Europeと太平洋上の島国では、地政学的にも歴史上も考え方が全く異なって当然であり・・同一視する方がおかしなことになる。
 地続きである事は、あらゆる点で島国とは状況が異なってくる。過去発生した二つの大戦の結果「常習弱者」は必然的に決まった。
 枢軸国では、現在は女性の極右翼政権だが、二次大戦でNazisGermanyにとり足手まといになり・・挙句ムッソリーニは殺害された。
 弱者はITALY・・。
 連合軍ではと言えば・・NazisGermanyは第一次時単独で戦い敗戦後・・幾多の足枷を強いられた・・にも拘らず・・再び二次大戦で大日本帝国と組み、世界中を相手に戦った。
 では・・Europeに於き最も弱い国は・・France・・芸術面では優れていて世界一なのだが・・国民性や軍事力では常に劣っていた。
 まあ、現在NATO/EUの本部があるBelgiumのBrusselsが間に挟まっているが・・GermanyとFranceはほぼ隣同士・・。
 対戦が始まれば・・すぐにGermanyに侵攻され・・二次ではすぐにパリ市が無血降伏をしたため絵画が残った・・。
 世界一の弱小国と言っても良いだろう。
 偶々今では強気になっているマクロンがこんな事を言っている「・・核兵器のお陰で自信が持てた・・」正にその言葉が裏付けているように・・UKと並び核兵器を所持している・・イスラエルも同様で・・現在自信過剰になっているのがこの核兵器保有三国とGermany・・核兵器廃絶などは夢のまた夢が人類の現実でもある・・。
 Franceに滞在時に感じたのは・・下手なジョークばかりの国民で愛想は悪いし・・エールFranceの横柄な事・・今ではKLMオランダ航空を買収しているが・・オランダの方がこの国の女性からは評価が高い。
 また、巴里では黄色人種を見かけることは無いが、黒人やアラブ人はよく見かけるし、フランス女性と黒人男性のカップルも少なくない。
 タクシーの運ちゃんもジョークどころか詐欺師まがいの者もおり・・ペラペラ余計なしゃべりを交えながら・・運賃メーターのボタンを指で押していく・・あっという間に料金が上がっていくが・・平気のへいざ・・挙句・・注意をすれば・・下した場所は工事中の様な人影もない場所・・。
 翌日、地下鉄2号線とA号が交差している凱旋門のある Charles Gaulle E(ウムラウト)toile 駅の二つ 先の Courdelles 駅の近くにある大使館に苦情を言いに行った。
 通常は大使館では窓口の内側に訪問客を入れることは無いが・・用件だけに巴里警察に取り締まるよう厳重抗議・・口喧嘩になった・・ついでにコンセントを借りて充電・・(笑)。
 今は知らないが、海外では電圧が異なる国があるので変圧器が必要になることがあり、常備品・・巴里は250ボルトくらい・・。
 
 
 元に戻りお終いとするが・・。
 自衛隊の必要性は極限られてくる。
 軍事目的ではなく「防災を最優先するべき」であるが、災害は始終発生する訳ではない・・。
 まあ、海上保安庁で足りなければ・・例えばChinaの軍艦が近接水域を通過した際に並行するくらいの手間しかない。
 力関係で言えば、ChinaとChina=台湾の間にある尖閣は何れ国交が正常化した際に交渉するのがベストで今は無理。
 先日、USAではあるがほぼChineseだけの会社のChineseと話をした。「Chineseは台湾人の事をChineseと呼ぶ・・まあ、同じ黄色人種なのだから、この国も含め仲良くしなければいけないね?」「そうですね・・仲良く・・」「・・システム=IOS/ISO・半導体は既に旧い・・その他につき話す・・」。
 要は、政府の交渉の仕方が下手な事と、USAが絡めばどこもかしこも争いだらけになるという事に過ぎない・・。
 大体、安保条約・地位協定が全て元凶の源・・。
 実際には、USA国内で必ずしも「Far east =極東まで行くことは無い」という国民も少なくはない。
 「本土が攻撃をされたことがなく、兵隊以外の国民が一人も犠牲になっていない」などという国は、世界で唯一USAしか存在しない。
 今の世代では・・この事も次第に国民の間で問題化してくるのは言うまでもない・・現代では犠牲無しに国を守れるという事は難しく、既にUSAの時代は終わりを告げようとしている。
 それでも、未だに基地が存在すること自体おかしなことになる・・Europeは地続きで・・Chinaや露西亜などとも繋がっているが、この国は島国・・。
 自衛隊の存在理由=Warrant~が問われる時代となってきている・・。
 



 さて、時間も無くなったので旧作品と文豪作品を掲載する。

 「コピー」

 「そろそろ帰るか」

 午後は出掛けて直帰が多いから、久し振りに定時を過ぎてもデスクに向かっている。
 期末の纏めが控えているから整理をしておかないと出掛ける暇が無くなってしまう。
 誰もいなくなった・・とは言っても同じFloorの営業は数人い残りがいる。
 手っ取り早く済ますには、株主のレベルを一人を除き三段階ぐらいに分け、事業の進捗状況を分かり易く纏める。
 手際よく進めていくとどうにか目途がついてくる。此れならあと三十分もすれば帰れるとようやく肩の荷が下りたような気がした。
 一年に一度のこの作業を如何に上手く纏めるかにより株主の評価が決まって来る。
 日常の業務など三宅澄夫にとっては何の造作も無い事、役員の中でも却って目だち過ぎる程。
 其れで、期末の総まとめが最後の駄目押しのようなもの。
 役員の中には要領の悪い者もいる、というより地位に甘んじ過ぎ、プライドが高いだけでまるで見張り役。
 常にトップの地位にいる事でプレッシャーを感じる事もあるが、終わってみればまたトップ。
 プレッシャーを言葉で現わせば「・・いつ何時足をすくわれるのか・・」という事になるのだが。
 同僚の役員達からは、「また三味線を弾いている」と陰口を叩かれる・・が其れを気に留めるつもりは無い。
 十年も常勝という事は記録的な事に値するのだが、其れと裏腹な心中は他の者には理解できないだろう。
 常に実力と危惧は裏表の関係にあり、危うくなった時にどう手を打つかが個人差に繋がる。
 株主の接待などは、各株主の最も要望するところなど、既にお見通しなのだから、単純な作業のようなもの。
 当然ながら結果は事前に手中に収めたも同然なのだから・・他の連中は都度相手の顔色を窺いながら彼是(あれこれ)考えては手を打つ。
 その場での交渉となれば、相手に求められた事を遂行する際、後手後手となる分役立たずになる事も・・。
 作業も一段落し・・帰る事になったが・・営業の連中はまだ何人か残っているようだ。
 澄夫のデスクがあるブロックの蛍光灯を消した。



 帰宅をするには・・地下鉄から私鉄に乗り継げば最寄り駅まで小一時間程・・。
 と・・其処で嫌な事を思い出した。
 コピー機のスイッチを消し忘れた様な気がする。
 気になれば余計に・・戻らなければいけない・・と。
 其処でふと頭に浮かんだのは・・。
 先程残っていた連中の中に気心の知れている若者がいた・・。
 地下鉄の乗り換えホームに降りてから、スイッチの件を彼に電話する。
 再び・・風を巻き込むようにホームに入ってきた次の電車に・・。
 久し振りに遅くなったせいで・・車内は空いていた・・が、座席に座ろうとした瞬間。
「・・まだコピー機のswitchが付きっぱなしになっている・・」
 光景がはっきり窺えた・・「・・あいつ・・」。
 慌てて・・閉まりかけたドアの隙間からホームに飛び降りた。
 再び・・今降りたホームの反対のホームへと階段を駆け上がり・・電車に乗りこむと会社へ向かう。 
 「こんな事なら、最初から戻っていれば良かった・・」と・・。
 社のテナントはすぐ先。
 下に立ち九階の窓を見上げる・・やはり誰もいない様・・黒々とした窓ガラスに月の灯りが映っている。
 入口の顔認証センサーに顔を映す。
 すぐにElevatorが降りて来・・ドアが開いた。
 腕時計に目を遣ると、請負の警備会社が巡回に来る時間だ・・。
 九階まで上がりエレベーターのドアが開く・・と、微かな緑色の灯りが見えた。
 誰もいない。
 事務所に入る・・やはり・・警備員が背後から近づいてきた。
「・・ああ、どうもお疲れ様です・・こんなに遅くまで大変ですね?」
 愛想の良い声・・異常が無いかどうかを簡単に確認するだけ・・。
 窓の外から・・警備員の乗った車が走り去る音・・。
 コピー機のswitchを切りながら。
「・・全く役に立たない奴らだ・・」
 若者など早く帰る事しか考えていない・・事務所と廊下の仕切りのドアを閉めElevatorに・・。
 念のために・・仕切りのガラス越しに・・何も灯りがないことを確認・・。
「うん?・・」
 今切った筈の緑の灯り・・。
「・・故障?」
 コピー機には他の機能も備わっているのだが。
 突然、コピー機の音・・。
 ファックスが流れている・・嫌な音・・。
 今頃何だろう?と・・今度はスイッチではなく、流れてきたファックスの文面に視線を移す。
「・・しまった・・」
 自らの舌打ちの音が聞こえるような気がした。
 最大の株主との約束・・忘れていた・・。
 文面に目を遣りながら・・もう一つ忘れていた事に気が付いた。
 年一度・・いや、あの株主だけは特別・・こんな大事な事を忘れていたとは・・しかし・・言い訳など通用しない。
 飛び抜けた存在の株主・・。
 文書には大した事など書いてないのだが・・只・・すぐに信号が送られてきた。



「約束は守ってって・・?」
「ああ・・悪かったつい・・」
「鍵は持っているわよね?」
「勿論・・申し訳ない」
 役員室の金庫を開ける・・。
 金庫にしまっておいた風変わりな鍵・・絶対になくせない・・。
 鍵とはいっても・・先ず滅多にお目に掛れないもの・・。


 
 今からでも遅くは無いか?と・・返事は・・構わないわ・・。
 既にコピー機の灯りは消えている。
 足早に社を後にする。
 大事な約束を忘れていたとは・・気が焦る。
 先程まで帰るつもりでいたのだから・・間が抜け過ぎている。
 電車の座席には座らず吊革につかまる・・とても落ち着かない・・。



 待ち合わせ場所の高層ビルに着くと・・エレベーターで最上階・・更に屋上・・。
 彼女は、屋上のテラスにもたれている。
「・・お仕事の調子は如何が・・?」
「・・ああ、お陰さん・・いやあ・・済まない・・」
「・・でも、何でも見えるってあまりいい事じゃないわね?人類って憐れ・・でも、其れ迄は私が面倒みるから・・」
 澄夫は、彼女が何者かは勿論承知・・彼女が自分のマニュアルを手渡してくれながら・・互いの脳を行き来する・・途方もなく数えきれない・・情報・・。
 今まで・・業績を維持して来れたのも・・彼女のお陰・・。
 青い惑星に存在する大手会社の資本の出先は特定されている・・企業の買収などお手のもの。
 凡そ数百億年遥か彼方の「巨大な創造球体」が文明の故郷・・そこまで行きつくには「空間」「光」「時間」を自在に操らなければならない。
 人類という生命体の青い惑星消滅まではまだ一億年・・ただ・・その後は・・。
 尤も、宇宙空間におき、如何なる進化した生命だろうと・・何れは自然消滅する・・それは宿命・・。
 ただ、進化した「創造球体」は、青い惑星のように偶々恵まれた環境下で誕生したのではない・・自らがあらゆる可能な術を駆使し創造した結果・・。
 青い惑星の大気とは・・乾燥した空気1 Lの重さは、セ氏0度、1気圧(1 atm)のときに1.293 g。
 1 Lで1 gは一見小さいようだが、垂直に数十kmも積み重なれば、地表付近の空気には大きな重さ(圧力)がかかる。
 1気圧は1.033 kgf/cm2、地表では1 cm2あたりおよそ1 kgの物体が乗っているような力が圧力として加わる。
 1平方メートルあたり10トン。太陽系の衛星とは異なり、青い惑星には厚い大気の層があり、地表付近ではこの圧力のため空気は密集した状態となる。
 宇宙空間のような真空状態とは異なった様々な事が発生する。。
 従い、所謂、自然災害は最も脅威と言え、文明が記録をしている青い惑星の史上では、あらゆる生命体が何度か消滅をしている。
 また、宇宙空間から到来する巨大な隕石・惑星なども同様の結果を齎す原因となるが、案外人類が直前まで気が付かないという事もある・・つまり、空間が移動をすればそうなる・・。
 人類が最新の望遠鏡を駆使したとしても、太陽系から外側の空間は見えにくい。太陽系そのものも一体の空間と言える。
 また、光を操ることが不可能であれば、見える範囲にも限界が生じる。だが、仮に宇宙の果てまで見えたとしても、「創造球体」の様な、光を通さないモノを見る事は出来ない。
 現実には、人類が見る事の可能な範囲での宇宙空間が現実であるのかと問われれば・・「否」・・。
 理論的に、光は直進するのみ、空間は一切固定したものとし、時間が可変せず・相対的でないと信じればまた別になる・・。
 つまりは、広大且つ複雑な宇宙空間を自在に移動するなどは難しい。それは、単純な積算技術では通用しない事。
 一例とし、black hole の構造を視覚での推定温度・圧力とするのにも無理があるのと同様に・・宇宙空間には実に様々な構造が存在する・・。
 宇宙が常に拡がりつつあるとしたところで、其れは広大な宇宙の一部=住所が不明のような例えに過ぎず、人類の生涯で全く必要のないことであるが・・幾らでも挑戦するには問題は無い。
 


「大切なマニュアルでしょ?人類に見せたら拙いんじゃない・・?」
「其れはそうだ・・とんでもない事になる」
 宇宙の生命が幾ら進化していようが頭脳がどうだろうが、宇宙空間を自在に移動するには、彼等が創造し、自ら自己maintenanceをしながら創造者よりも遥かに高度な頭脳を持つに至る「第三の彼」の存在が不可欠になる。
 だが、彼女も、澄夫も遥か彼方から訪れた生命に他ならないという事だけは事実である。
 結論から言えば、人類はこれ以上進化する事は無理であるし、青い惑星の四つ足動物から少しばかり進化した生命体であるが、環境が異なってしまうよりは、其れで充分幸せなのでは・・。



 二人は頭脳間で・・のやり取りをするが、その・・はとても人類にはそぐわないものであるから、何も知らない方が懸命。
「そろそろ帰還する事にしたいのだが・・?」
「大丈夫・・そんなに先になる事は無いでしょう・・」
 二人、今暫しの別れとなるにしても・・そんなに遠くは無い先・・解消されるだろう・・。
 其れ迄は暫しの辛抱・・。
「・・私は何時も、此の惑星の黄昏の風景が好きでね・・何か芸術心をくすぐるものが感じられてね・・」
 二人は・・太陽系一体や衛星の優しい光・・煌めく宝石箱をひっくり返した様な星々の煌めきを見れば・・故郷を思い出す・・其れが二人の・・楽しみでもある・・。



杜子春
芥川龍之介

 或ある春の日暮です。
 唐とうの都洛陽らくようの西の門の下に、ぼんやり空を仰いでいる、一人の若者がありました。
 若者は名を杜子春といって、元は金持の息子でしたが、今は財産を費つかい尽して、その日の暮しにも困る位、憐あわれな身分になっているのです。
 何しろその頃洛陽といえば、天下に並ぶもののない、繁昌はんじょうを極きわめた都ですから、往来にはまだしっきりなく、人や車が通っていました。門一ぱいに当っている、油のような夕日の光の中に、老人のかぶった紗しゃの帽子や、土耳古トルコの女の金の耳環みみわや、白馬しろうまに飾った色糸の手綱たづなが、絶えず流れて行く容子ようすは、まるで画のような美しさです。
 しかし杜子春は相変らず、門の壁に身を凭もたせて、ぼんやり空ばかり眺ながめていました。空には、もう細い月が、うらうらと靡なびいた霞かすみの中に、まるで爪の痕あとかと思う程、かすかに白く浮んでいるのです。
「日は暮れるし、腹は減るし、その上もうどこへ行っても、泊めてくれる所はなさそうだし――こんな思いをして生きている位なら、一そ川へでも身を投げて、死んでしまった方がましかも知れない」
 杜子春はひとりさっきから、こんな取りとめもないことを思いめぐらしていたのです。
 するとどこからやって来たか、突然彼の前へ足を止めた、片目眇すがめの老人があります。それが夕日の光を浴びて、大きな影を門へ落すと、じっと杜子春の顔を見ながら、
「お前は何を考えているのだ」と、横柄に声をかけました。
「私わたしですか。私は今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えているのです」
 老人の尋ね方が急でしたから、杜子春はさすがに眼を伏せて、思わず正直な答をしました。
「そうか。それは可哀そうだな」
 老人は暫しばらく何事か考えているようでしたが、やがて、往来にさしている夕日の光を指さしながら、
「ではおれが好いいことを一つ教えてやろう。今この夕日の中に立って、お前の影が地に映ったら、その頭に当る所を夜中よなかに掘って見るが好い。きっと車に一ぱいの黄金おうごんが埋うまっている筈はずだから」
「ほんとうですか」
 杜子春は驚いて、伏せていた眼を挙あげました。ところが更に不思議なことには、あの老人はどこへ行ったか、もうあたりにはそれらしい、影も形も見当りません。その代り空の月の色は前よりも猶なお白くなって、休みない往来の人通りの上には、もう気の早い蝙蝠こうもりが二三匹ひらひら舞っていました。



 杜子春は一日の内に、洛陽の都でも唯ただ一人という大金持になりました。あの老人の言葉通り、夕日に影を映して見て、その頭に当る所を、夜中にそっと掘って見たら、大きな車にも余る位、黄金が一山出て来たのです。
 大金持になった杜子春は、すぐに立派な家うちを買って、玄宗げんそう皇帝にも負けない位、贅沢ぜいたくな暮しをし始めました。蘭陵らんりょうの酒を買わせるやら、桂州けいしゅうの竜眼肉りゅうがんにくをとりよせるやら、日に四度よたび色の変る牡丹ぼたんを庭に植えさせるやら、白孔雀しろくじゃくを何羽も放し飼いにするやら、玉を集めるやら、錦にしきを縫わせるやら、香木こうぼくの車を造らせるやら、象牙ぞうげの椅子を誂あつらえるやら、その贅沢を一々書いていては、いつになってもこの話がおしまいにならない位です。
 するとこういう噂うわさを聞いて、今までは路みちで行き合っても、挨拶あいさつさえしなかった友だちなどが、朝夕遊びにやって来ました。それも一日毎ごとに数が増して、半年ばかり経たつ内には、洛陽の都に名を知られた才子や美人が多い中で、杜子春の家へ来ないものは、一人もない位になってしまったのです。杜子春はこの御客たちを相手に、毎日酒盛りを開きました。その酒盛りの又盛さかんなことは、中々なかなか口には尽されません。極ごくかいつまんだだけをお話しても、杜子春が金の杯さかずきに西洋から来た葡萄酒ぶどうしゅを汲くんで、天竺てんじく生れの魔法使が刀を呑のんで見せる芸に見とれていると、そのまわりには二十人の女たちが、十人は翡翠ひすいの蓮はすの花を、十人は瑪瑙めのうの牡丹の花を、いずれも髪に飾りながら、笛や琴を節ふし面白く奏しているという景色なのです。
 しかしいくら大金持でも、御金には際限がありますから、さすがに贅沢家の杜子春も、一年二年と経つ内には、だんだん貧乏になり出しました。そうすると人間は薄情なもので、昨日きのうまでは毎日来た友だちも、今日は門の前を通ってさえ、挨拶一つして行きません。ましてとうとう三年目の春、又杜子春が以前の通り、一文無しになって見ると、広い洛陽の都の中にも、彼に宿を貸そうという家は、一軒もなくなってしまいました。いや、宿を貸すどころか、今では椀わんに一杯の水も、恵んでくれるものはないのです。
 そこで彼は或日の夕方、もう一度あの洛陽の西の門の下へ行って、ぼんやり空を眺めながら、途方に暮れて立っていました。するとやはり昔のように、片目眇すがめの老人が、どこからか姿を現して、
「お前は何を考えているのだ」と、声をかけるではありませんか。
 杜子春は老人の顔を見ると、恥しそうに下を向いたまま、暫くは返事もしませんでした。が、老人はその日も親切そうに、同じ言葉を繰返しますから、こちらも前と同じように、
「私は今夜寝る所もないので、どうしたものかと考えているのです」と、恐る恐る返事をしました。
「そうか。それは可哀そうだな。ではおれが好いいことを一つ教えてやろう。今この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったら、その胸に当る所を、夜中に掘って見るが好い。きっと車に一ぱいの黄金が埋まっている筈だから」
 老人はこう言ったと思うと、今度もまた人ごみの中へ、掻かき消すように隠れてしまいました。
 杜子春はその翌日から、忽たちまち天下第一の大金持に返りました。と同時に相変らず、仕放題な贅沢をし始めました。庭に咲いている牡丹の花、その中に眠っている白孔雀、それから刀を呑んで見せる、天竺から来た魔法使――すべてが昔の通りなのです。
 ですから車に一ぱいにあった、あの夥おびただしい黄金も、又三年ばかり経つ内には、すっかりなくなってしまいました。



「お前は何を考えているのだ」
 片目眇すがめの老人は、三度ど杜子春とししゅんの前へ来て、同じことを問いかけました。勿論もちろん彼はその時も、洛陽の西の門の下に、ほそぼそと霞を破っている三日月の光を眺めながら、ぼんやり佇たたずんでいたのです。
「私ですか。私は今夜寝る所もないので、どうしようかと思っているのです」
「そうか。それは可哀そうだな。ではおれが好いことを教えてやろう。今この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったら、その腹に当る所を、夜中に掘って見るが好い。きっと車に一ぱいの――」
 老人がここまで言いかけると、杜子春は急に手を挙げて、その言葉を遮さえぎりました。
「いや、お金はもういらないのです」
「金はもういらない? ははあ、では贅沢をするにはとうとう飽きてしまったと見えるな」
 老人は審いぶかしそうな眼つきをしながら、じっと杜子春の顔を見つめました。
「何、贅沢に飽きたのじゃありません。人間というものに愛想あいそがつきたのです」
 杜子春は不平そうな顔をしながら、突慳貪つっけんどんにこう言いました。
「それは面白いな。どうして又人間に愛想が尽きたのだ?」
「人間は皆薄情です。私が大金持になった時には、世辞も追従ついしょうもしますけれど、一旦貧乏になって御覧なさい。柔やさしい顔さえもして見せはしません。そんなことを考えると、たといもう一度大金持になったところが、何にもならないような気がするのです」
 老人は杜子春の言葉を聞くと、急ににやにや笑い出しました。
「そうか。いや、お前は若い者に似合わず、感心に物のわかる男だ。ではこれからは貧乏をしても、安らかに暮して行くつもりか」
 杜子春はちょいとためらいました。が、すぐに思い切った眼を挙げると、訴えるように老人の顔を見ながら、
「それも今の私には出来ません。ですから私はあなたの弟子でしになって、仙術せんじゅつの修業をしたいと思うのです。いいえ、隠してはいけません。あなたは道徳の高い仙人でしょう。仙人でなければ、一夜ひとよの内に私を天下第一の大金持にすることは出来ない筈です。どうか私の先生になって、不思議な仙術を教えて下さい」
 老人は眉まゆをひそめたまま、暫くは黙って、何事か考えているようでしたが、やがて又にっこり笑いながら、
「いかにもおれは峨眉山がびさんに棲すんでいる、鉄冠子てっかんしという仙人だ。始めお前の顔を見た時、どこか物わかりが好さそうだったから、二度まで大金持にしてやったのだが、それ程仙人になりたければ、おれの弟子にとり立ててやろう」と、快く願ねがいを容いれてくれました。
 杜子春は喜んだの、喜ばないのではありません。老人の言葉がまだ終らない内に、彼は大地に額をつけて、何度も鉄冠子に御時宜おじぎをしました。
「いや、そう御礼などは言って貰うまい。いくらおれの弟子にしたところが、立派な仙人になれるかなれないかは、お前次第で決まることだからな。――が、ともかくもまずおれと一しょに、峨眉山の奥へ来て見るが好いい。おお、幸さいわい、ここに竹杖たけづえが一本落ちている。では早速これへ乗って、一飛びに空を渡るとしよう」
 鉄冠子はそこにあった青竹を一本拾い上げると、口の中うちに咒文じゅもんを唱えながら、杜子春と一しょにその竹へ、馬にでも乗るように跨またがりました。すると不思議ではありませんか。竹杖は忽ち竜のように、勢いきおいよく大空へ舞い上って、晴れ渡った春の夕空を峨眉山の方角へ飛んで行きました。
 杜子春は胆きもをつぶしながら、恐る恐る下を見下しました。が、下には唯青い山々が夕明ゆうあかりの底に見えるばかりで、あの洛陽の都の西の門は、(とうに霞に紛れたのでしょう)どこを探しても見当りません。その内に鉄冠子は、白い鬢びんの毛を風に吹かせて、高らかに歌を唱うたい出しました。
朝あしたに北海に遊び、暮くれには蒼梧そうご。
袖裏しゅうりの青蛇せいだ、胆気粗たんきそなり。
三たび岳陽に入れども、人識しらず。
朗吟して、飛過ひかす洞庭湖どうていこ。



 二人を乗せた青竹は、間もなく峨眉山へ舞い下さがりました。
 そこは深い谷に臨んだ、幅の広い一枚岩の上でしたが、よくよく高い所だと見えて、中空なかぞらに垂れた北斗の星が、茶碗ちゃわん程の大きさに光っていました。元より人跡じんせきの絶えた山ですから、あたりはしんと静まり返って、やっと耳にはいるものは、後うしろの絶壁に生はえている、曲りくねった一株の松が、こうこうと夜風に鳴る音だけです。
 二人がこの岩の上に来ると、鉄冠子は杜子春を絶壁の下に坐らせて、
「おれはこれから天上へ行って、西王母せいおうぼに御眼にかかって来るから、お前はその間ここに坐って、おれの帰るのを待っているが好いい。多分おれがいなくなると、いろいろな魔性ましょうが現れて、お前をたぶらかそうとするだろうが、たといどんなことが起ろうとも、決して声を出すのではないぞ。もし一言ひとことでも口を利きいたら、お前は到底仙人にはなれないものだと覚悟をしろ。好いいか。天地が裂けても、黙っているのだぞ」と言いました。
「大丈夫です。決して声なぞは出しません。命がなくなっても、黙っています」
「そうか。それを聞いて、おれも安心した。ではおれは行って来るから」
 老人は杜子春に別れを告げると、又あの竹杖に跨って、夜目にも削ったような山々の空へ、一文字に消えてしまいました。
 杜子春はたった一人、岩の上に坐ったまま、静しずかに星を眺めていました。するとかれこれ半時はんときばかり経って、深山の夜気が肌寒く薄い着物に透とおり出した頃、突然空中に声があって、
「そこにいるのは何者だ」と、叱りつけるではありませんか。
 しかし杜子春は仙人の教おしえ通り、何とも返事をしずにいました。
 ところが又暫くすると、やはり同じ声が響いて、
「返事をしないと立ちどころに、命はないものと覚悟しろ」と、いかめしく嚇おどしつけるのです。
 杜子春は勿論黙っていました。
 と、どこから登って来たか、爛々らんらんと眼を光らせた虎とらが一匹、忽然こつぜんと岩の上に躍おどり上って、杜子春の姿を睨にらみながら、一声高く哮たけりました。のみならずそれと同時に、頭の上の松の枝が、烈はげしくざわざわ揺れたと思うと、後うしろの絶壁の頂からは、四斗樽しとだる程の白蛇はくだが一匹、炎のような舌を吐いて、見る見る近くへ下りて来るのです。
 杜子春はしかし平然と、眉毛まゆげも動かさずに坐っていました。
 虎と蛇とは、一つ餌食えじきを狙ねらって、互に隙すきでも窺うかがうのか、暫くは睨合いの体ていでしたが、やがてどちらが先ともなく、一時に杜子春に飛びかかりました。が虎の牙きばに噛かまれるか、蛇の舌に呑のまれるか、杜子春の命は瞬またたく内に、なくなってしまうと思った時、虎と蛇とは霧の如く、夜風と共に消え失うせて、後には唯、絶壁の松が、さっきの通りこうこうと枝を鳴らしているばかりなのです。杜子春はほっと一息しながら、今度はどんなことが起るかと、心待ちに待っていました。
 すると一陣の風が吹き起って、墨のような黒雲が一面にあたりをとざすや否や、うす紫の稲妻がやにわに闇を二つに裂いて、凄すさまじく雷らいが鳴り出しました。いや、雷ばかりではありません。それと一しょに瀑たきのような雨も、いきなりどうどうと降り出したのです。杜子春はこの天変の中なかに、恐れ気げもなく坐っていました。風の音、雨のしぶき、それから絶え間ない稲妻の光、――暫くはさすがの峨眉山も、覆くつがえるかと思う位でしたが、その内に耳をもつんざく程、大きな雷鳴が轟とどろいたと思うと、空に渦うず巻いた黒雲の中から、まっ赤な一本の火柱が、杜子春の頭へ落ちかかりました。
 杜子春は思わず耳を抑えて、一枚岩の上へひれ伏しました。が、すぐに眼を開いて見ると、空は以前の通り晴れ渡って、向うに聳そびえた山々の上にも、茶碗ほどの北斗の星が、やはりきらきら輝いています。して見れば今の大あらしも、あの虎や白蛇と同じように、鉄冠子の留守をつけこんだ、魔性の悪戯いたずらに違いありません。杜子春は漸ようやく安心して、額の冷汗ひやあせを拭ぬぐいながら、又岩の上に坐り直しました。
 が、そのため息がまだ消えない内に、今度は彼の坐っている前へ、金の鎧よろいを着下きくだした、身の丈たけ三丈もあろうという、厳おごそかな神将が現れました。神将は手に三叉みつまたの戟ほこを持っていましたが、いきなりその戟の切先きっさきを杜子春の胸むなもとへ向けながら、眼を嗔いからせて叱りつけるのを聞けば、
「こら、その方は一体何物だ。この峨眉山という山は、天地開闢かいびゃくの昔から、おれが住居すまいをしている所だぞ。それも憚はばからずたった一人、ここへ足を踏み入れるとは、よもや唯の人間ではあるまい。さあ命が惜しかったら、一刻も早く返答しろ」と言うのです。
 しかし杜子春は老人の言葉通り、黙然もくねんと口を噤つぐんでいました。
「返事をしないか。――しないな。好し。しなければ、しないで勝手にしろ。その代りおれの眷属けんぞくたちが、その方をずたずたに斬きってしまうぞ」
 神将は戟を高く挙げて、向うの山の空を招きました。その途端に闇がさっと裂けると、驚いたことには無数の神兵が、雲の如く空に充満みちみちて、それが皆槍やりや刀をきらめかせながら、今にもここへ一なだれに攻め寄せようとしているのです。
 この景色を見た杜子春は、思わずあっと叫びそうにしましたが、すぐに又鉄冠子の言葉を思い出して、一生懸命に黙っていました。神将は彼が恐れないのを見ると、怒おこったの怒らないのではありません。
「この剛情者め。どうしても返事をしなければ、約束通り命はとってやるぞ」
 神将はこう喚わめくが早いか、三叉の戟を閃ひらめかせて、一突きに杜子春を突き殺しました。そうして峨眉山もどよむ程、からからと高く笑いながら、どこともなく消えてしまいました。勿論この時はもう無数の神兵も、吹き渡る夜風の音と一しょに、夢のように消え失せた後だったのです。
 北斗の星は又寒そうに、一枚岩の上を照らし始めました。絶壁の松も前に変らず、こうこうと枝を鳴らせています。が、杜子春はとうに息が絶えて、仰向あおむけにそこへ倒れていました。



 杜子春の体は岩の上へ、仰向けに倒れていましたが、杜子春の魂は、静に体から抜け出して、地獄の底へ下りて行きました。
 この世と地獄との間には、闇穴道あんけつどうという道があって、そこは年中暗い空に、氷のような冷たい風がぴゅうぴゅう吹き荒すさんでいるのです。杜子春はその風に吹かれながら、暫くは唯木この葉のように、空を漂って行きましたが、やがて森羅殿しんらでんという額がくの懸かかった立派な御殿の前へ出ました。
 御殿の前にいた大勢の鬼は、杜子春の姿を見るや否や、すぐにそのまわりを取り捲まいて、階きざはしの前へ引き据えました。階の上には一人の王様が、まっ黒な袍きものに金の冠をかぶって、いかめしくあたりを睨んでいます。これは兼ねて噂うわさに聞いた、閻魔えんま大王に違いありません。杜子春はどうなることかと思いながら、恐る恐るそこへ跪ひざまずいていました。
「こら、その方は何の為ために、峨眉山の上へ坐っていた?」
 閻魔大王の声は雷らいのように、階の上から響きました。杜子春は早速その問に答えようとしましたが、ふと又思い出したのは、「決して口を利きくな」という鉄冠子の戒いましめの言葉です。そこで唯頭かしらを垂れたまま、唖おしのように黙っていました。すると閻魔大王は、持っていた鉄の笏しゃくを挙げて、顔中の鬚ひげを逆立てながら、
「その方はここをどこだと思う? 速すみやかに返答をすれば好し、さもなければ時を移さず、地獄の呵責かしゃくに遇あわせてくれるぞ」と、威丈高いたけだかに罵ののしりました。
 が、杜子春は相変らず唇くちびる一つ動かしません。それを見た閻魔大王は、すぐに鬼どもの方を向いて、荒々しく何か言いつけると、鬼どもは一度に畏かしこまって、忽たちまち杜子春を引き立てながら、森羅殿の空へ舞い上りました。
 地獄には誰でも知っている通り、剣つるぎの山や血の池の外にも、焦熱地獄という焔ほのおの谷や極寒ごくかん地獄という氷の海が、真暗な空の下に並んでいます。鬼どもはそういう地獄の中へ、代る代る杜子春を抛ほうりこみました。ですから杜子春は無残にも、剣に胸を貫かれるやら、焔に顔を焼かれるやら、舌を抜かれるやら、皮を剥はがれるやら、鉄の杵きねに撞つかれるやら、油の鍋なべに煮られるやら、毒蛇に脳味噌のうみそを吸われるやら、熊鷹くまたかに眼を食われるやら、――その苦しみを数え立てていては、到底際限がない位、あらゆる責苦せめくに遇あわされたのです。それでも杜子春は我慢強く、じっと歯を食いしばったまま、一言ひとことも口を利きませんでした。
 これにはさすがの鬼どもも、呆あきれ返ってしまったのでしょう。もう一度夜よるのような空を飛んで、森羅殿の前へ帰って来ると、さっきの通り杜子春を階きざはしの下に引き据えながら、御殿の上の閻魔大王に、
「この罪人はどうしても、ものを言う気色けしきがございません」と、口を揃そろえて言上ごんじょうしました。
 閻魔大王は眉をひそめて、暫く思案に暮れていましたが、やがて何か思いついたと見えて、
「この男の父母ちちははは、畜生道ちくしょうどうに落ちている筈だから、早速ここへ引き立てて来い」と、一匹の鬼に言いつけました。
 鬼は忽ち風に乗って、地獄の空へ舞い上りました。と思うと、又星が流れるように、二匹の獣けものを駆り立てながら、さっと森羅殿の前へ下りて来ました。その獣を見た杜子春は、驚いたの驚かないのではありません。なぜかといえばそれは二匹とも、形は見すぼらしい痩やせ馬でしたが、顔は夢にも忘れない、死んだ父母の通りでしたから。
「こら、その方は何のために、峨眉山の上に坐っていたか、まっすぐに白状しなければ、今度はその方の父母に痛い思いをさせてやるぞ」
 杜子春はこう嚇おどされても、やはり返答をしずにいました。
「この不孝者めが。その方は父母が苦しんでも、その方さえ都合が好ければ、好いいと思っているのだな」
 閻魔大王は森羅殿も崩くずれる程、凄すさまじい声で喚わめきました。
「打て。鬼ども。その二匹の畜生を、肉も骨も打ち砕いてしまえ」
 鬼どもは一斉に「はっ」と答えながら、鉄の鞭むちをとって立ち上ると、四方八方から二匹の馬を、未練未釈みしゃくなく打ちのめしました。鞭はりゅうりゅうと風を切って、所嫌きらわず雨のように、馬の皮肉を打ち破るのです。馬は、――畜生になった父母は、苦しそうに身を悶もだえて、眼には血の涙を浮べたまま、見てもいられない程嘶いななき立てました。
「どうだ。まだその方は白状しないか」
 閻魔大王は鬼どもに、暫く鞭の手をやめさせて、もう一度杜子春の答を促しました。もうその時には二匹の馬も、肉は裂け骨は砕けて、息も絶え絶えに階きざはしの前へ、倒れ伏していたのです。
 杜子春は必死になって、鉄冠子の言葉を思い出しながら、緊かたく眼をつぶっていました。するとその時彼の耳には、殆ほとんど声とはいえない位、かすかな声が伝わって来ました。
「心配をおしでない。私たちはどうなっても、お前さえ仕合せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。大王が何と仰おっしゃっても、言いたくないことは黙って御出おいで」
 それは確たしかに懐しい、母親の声に違いありません。杜子春は思わず、眼をあきました。そうして馬の一匹が、力なく地上に倒れたまま、悲しそうに彼の顔へ、じっと眼をやっているのを見ました。母親はこんな苦しみの中にも、息子の心を思いやって、鬼どもの鞭に打たれたことを、怨うらむ気色けしきさえも見せないのです。大金持になれば御世辞を言い、貧乏人になれば口も利かない世間の人たちに比べると、何という有難い志でしょう。何という健気けなげな決心でしょう。杜子春は老人の戒めも忘れて、転まろぶようにその側へ走りよると、両手に半死の馬の頸くびを抱いて、はらはらと涙を落しながら、「お母っかさん」と一声を叫びました。…………



 その声に気がついて見ると、杜子春はやはり夕日を浴びて、洛陽の西の門の下に、ぼんやり佇たたずんでいるのでした。霞んだ空、白い三日月、絶え間ない人や車の波、――すべてがまだ峨眉山へ、行かない前と同じことです。
「どうだな。おれの弟子になったところが、とても仙人にはなれはすまい」
 片目眇すがめの老人は微笑を含みながら言いました。
「なれません。なれませんが、しかし私わたしはなれなかったことも、反かえって嬉しい気がするのです」
 杜子春はまだ眼に涙を浮べたまま、思わず老人の手を握りました。
「いくら仙人になれたところが、私はあの地獄の森羅殿の前に、鞭を受けている父母を見ては、黙っている訳には行きません」
「もしお前が黙っていたら――」と鉄冠子は急に厳おごそかな顔になって、じっと杜子春を見つめました。
「もしお前が黙っていたら、おれは即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。――お前はもう仙人になりたいという望のぞみも持っていまい。大金持になることは、元より愛想がつきた筈はずだ。ではお前はこれから後、何になったら好いいと思うな」
「何になっても、人間らしい、正直な暮しをするつもりです」
 杜子春の声には今までにない晴れ晴れした調子が罩こもっていました。
「その言葉を忘れるなよ。ではおれは今日限り、二度とお前には遇あわないから」
 鉄冠子はこう言う内に、もう歩き出していましたが、急に又足を止めて、杜子春の方を振り返ると、
「おお、幸さいわい、今思い出したが、おれは泰山たいざんの南の麓ふもとに一軒の家を持っている。その家を畑ごとお前にやるから、早速行って住まうが好い。今頃は丁度家のまわりに、桃の花が一面に咲いているだろう」と、さも愉快そうにつけ加えました。


 
「馬は走る。花は咲く。人は書く。自分自身になりたいが為に。夏目漱石」

「道徳は便宜の異名である。「左側通行」と似たものである。芥川竜之介」

「自由な、調和のとれた、何気ない、殊に何気ないといふことは日常生活で一番望ましい気がしている。志賀直哉」

「われ志を得ざるとき忍耐この二字を守れり。
 われ志を得んとするとき大胆不敵この四字を守れり。
 われ志を得てのち油断大敵この四字を守れり。徳川家康」

「自分の心は秤のようなものである。人の都合で上下したりはしない。軍師諸葛亮孔明」

「имн】Российской】 Федерации】。 Ворон】 ворону】 глаз】 не】 выклюет】.」

「义勇军进行曲。三个臭皮匠顶个诸葛亮」

「애국가。아침은 빛나라」

「by europe123」