デンマーク放送交響楽団(2016年2月、デンマーク・コペンハーゲン) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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今回も2016年2月のデンマークコペンハーゲンからです。

昼間にコペンハーゲンを歩き回って、一旦ホテルに戻り、ホテルからタクシーでコンサート会場へ向かいます。タクシードライバー、英語全然問題なくしゃべれて助かりました。

 

コンサート会場のDRコンサートホール(DR Koncerthuset)は、コペンハーゲンの中心部から南東へ3~4キロのところにあります。デンマーク放送協会の敷地に建てられたクラシック専用ホールで収容人数1,800人のホールです。完成したのが2009年とまだ新しいホール。夜なのでよくわかりませんが、ホールの建物の周りにはブルーネット(?)で覆われていて、そこに内部の映像が映し出されるようです。今は、青色に光っていました。

 

こちらが隣接するデンマーク放送協会の建物のようです。新しいこともあり、ちょっと近未来的なビルです。

 

ホールの中は、なかなかに面白い構造になっています。天井から壁へのつなぎもなんだかへんなうねった造形になっています。壁は、いっぱい横に傷を入れたデザインになっていて、これ音に影響しないんだろうかと少々心配になります。音響設計は、永田音響設計が担当したようです。それにしても世界中の多くのホールがこの会社が音響設計担当してますね。コンサート会場に来るときに乗ったタクシードライバーも、このホール音響いいよ、と言ってましたし。

 

今日のコンサートは、デンマーク放送交響楽団(DR SymfoniOrkestret)。1925年に設立されたオーケストラで、デンマーク放送協会専属のオーケストラ。デンマーク国立交響楽団とも呼ばれているようです。ヘルベルト・ブロムシュテットが首席指揮者を務めた時期もあるようで、2016年当時はラファエル・フリューベック・デ・ブルゴスが首席指揮者を務めていました(この記事を書いている時点ではファビオ・ルイージが首席指揮者)。この日は、ドイツの指揮者・作曲家であるマティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher)の指揮でした。

 

最初の曲は、

ガブリエル・フォーレ作曲 ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)。

 

ペレアスとメリザンドは、ベルギーの作家モーリス・メーテルリンクが書いた戯曲で、このブログでもドビュッシー版について記事を書いていますが、ドビュッシー以外にも、今回のフォーレ、そしてシベリウスシェーンベルクなど多くの作曲家が題材としてきました。


メーテルリンクの戯曲「ペレアスとメリザンド」がパリで初演された後、ロンドンで英語版の公演を企画していた女優パトリック・キャンベルの依頼でフォーレはこの曲を作曲します。はじめはドビュッシーが作曲を依頼されたのですが、既にオペラ版「ペレアスとメリザンド」の制作に入っていたドビュッシーが断わり、フォーレにお鉢が回ってきます。1898年プリンス・オブ・ウェールズ劇場で初演され、フォーレ自身が指揮を振っています。

 

さらに、劇付随音楽として作曲された曲の中から「前奏曲」「糸を紡ぐ女」「メリザンドの死」を選び管弦楽組曲が出来上がり、その後 「シシリエンヌ」「メリザンドの歌」 の2曲が追加され、管弦楽組曲「ぺリアスとメリザンド」 op.80が完成します。この5曲のうち「メリザンドの歌」はコーラスが入っているため、この曲を外した4曲で演奏されることが多いのですが、今回の演奏会も、4曲構成で演奏されました。いかにもフォーレらしい、美しく洗練された曲に仕上がっています。

 

2曲目は、

ロベルト・シューマン作曲 チェロ協奏曲(Cello Concerto a-moll op.129)

 

1850年に作曲されたこの曲は、シューマンデュッセルドルフの音楽監督に就任していた時期に書かれた曲です。ドヴォルザークハイドンと並んで3大チェロ協奏曲の1つであり、ロマン派初のチェロ協奏曲ともいわれ、チェロのレパートリーの中では重要な一曲です。初演は、シューマンの死後、1860年ルードヴィッヒ・エーベルトのチェロで行われています。

 

「たーらららっ」という主旋律が全体を支配する第一楽章。静かで熱量のある第二楽章。そして激情の第三楽章。力強い部分、静かな部分、悲しい部分、あまりにも美しい部分、そしてその根底に流れるシューマン独特の憂い。その魅力がいっぱいに詰まったチェロ協奏曲です。

 

今回のチェロ独奏は、アリサ・ワイラースタイン(Alisa Weilerstein)。アメリカのチェリストで、ダニエル・バレンボイムグスターボ・ドゥダメルクリストフ・エッシェンバッハパーヴォ・ヤルヴィロリン・マゼールズビン・メータはじめ多くの著名指揮者と共演を重ねてきています。ワイラースタイン、妊娠しているのか、すごいお腹で歩き方もどしどしって感じで舞台に出てきました。演奏はとても情感的。ちょっとこっちが恥ずかしくなるくらいですが、しっかりしたテクニックと演奏を崩壊させないバランス感覚が、その自由で情熱的な演奏を支えます。素晴らしい演奏でした。

 

最後の曲は、

モーリス・ラヴェル作曲 ダフニスとクロエ(Daphnis et Chloé)

 

セルゲイ・ディアギレフ率いるロシア・バレエ団のために作曲された曲で1912年に初演されています。このブログでも既に書いていますが、ミハイル・フォーキンの振り付けで、山羊飼の少年ダフニスとおなじく山羊飼の少女クロエが登場する古代ギリシャ「ダフニスとクロエ」のお話を下敷きにしたバレエ曲です。第1場 神聖な森の牧草地、第2場 海賊の野営地、第3場 夜明け前の神聖な森の牧草地、の全3場で構成されていて約2時間弱の曲です。

 

このオーケストラ初めて聞きましたが、なかなかによかったです。ホールのせいか、小さい音が少しくぐもって聞えたり、大きな音が鳴りきってしまい、少々うるさい感じがしたりしましたが、ホールの音響のせいじゃないかという気がします。ラベルは合唱付きですが、オーケストラの後ろ側の席を使うパターンでした。でも、なぜか何人かこのオーケストラの後ろの席に座っているお客さんがいて、ラヴェル始まる前に追い出されていました。結構そのあたりおおらかなんでしょうか?

 

追い出されてるシーンではありませんが。。。

 

コンサートが終わってタクシー拾おうと思ったら、来るときに乗せてくれたタクシーがちょうどいて、それでホテルまで。降りるときに帰りの時間聞いてきたので、それに合わせて来てくれたのでしょうか?こういうシチュエーションだと、このままどこかへ連れ去られるのではないかという不安がなくもなかったのですが、音楽の話や、コペンハーゲンの音大を出た有名人の話、オペラハウスの話、タクシーの運ちゃんが以前ベルリンにいたという話など、楽しくしながら無事ホテルにたどり着きました。

 

ホテルからの景色。

 

本日のプログラム。