ハンブルク・フィルハーモニカ―(2016年2月、ドイツ・ハンブルク) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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今日は2016年2月のドイツハンブルクからです。

 

 今日は、ハンブルク・フィルハーモニカ―(Philharmonisches Staatsorchester Hamburg)の演奏会がライスハレで行われました。ハンブルク州立歌劇場のオーケストラで、19世紀に起源をもち、1934年に設立されています。歴代首席指揮者の中にはヴォルフガング・サヴァリッシュも名を連ね、最近までシモーネ・ヤング、2015年からケント・ナガノが首席指揮者を務めています。今日の指揮も、ケント・ナガノです。

 


ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲


クロード・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

Claude Debussy: Prélude à l'après-midi d'un faune

 ドビュッシーの代表作の一つで、1892年~1894年にかけて作曲され、詩人マラルメの「牧神の午後」に触発されて書かれた曲です。森の妖精を追っかけまわした牧神パンのように、好色な牧神が気だるい昼の日の下で、まどろみながら2人の妖精を夢想する様子が描かれています。主役のフルートソロでは、楽器の構造上響きが悪いため普通は採用しないC#の音から始まるというおきて破りの手法を取ることで、この曲の気だるさがうまく表現されています。

 初演は、1894年12月22日バリ国民音楽協会ギュスターヴ・モレ指揮で行われ大成功だったようです。

 


バルトーク:ピアノ協奏曲第3番


バルトーク・ベーラ:ピアノ協奏曲第3番

Béla Bartók: Konzert für Klavier und Orchester Nr. 3 Sz 119

 

 ハンガリー出身のバルトークは、作曲家であり、ピアニストでもありますが、生涯民俗音楽の採取・研究をつづけた人でもあります。1940年に政治的に硬化しつつあったハンガリーを去り、アメリカに移住しますが、ピアノ協奏曲第3番は、その後1945年に作曲されます。バルトーク自身でほぼ完成させた最後の曲でもあるようです。早くからこの曲の構想はあったようですが、アメリカ移住後、膨大な民俗音楽素材の研究もあり、アメリカになかなかなじめず、その後白血病を患ったりと、着手できずにいたようですが、バルトークの妻であり、ピアニストでもあったパーストリ・ディッタのために1945年の早い時期に書き始めたようです。この年、夏ごろから急に健康状態が悪くなり、友人たちに手伝ってもらいながら作曲を続けますが、ほとんどの完成間近の9月22日病院に運び込まれ、9月26日に亡くなってしまいます。残っていた最後の17小説のオーケストレーションについてもバルトークが指示を残していたようで、それを頼りに弟子のティボール・シェルイが完成させました。初演は、翌年1946年2月8日、シャーンドル・ジェルジの独奏ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で行われます。バルトークが贈る予定であった妻のパーストリ・ディッタは、1960年代になって初めて録音は残しますが、公の場で演奏することはなかったようです。

 バルトークのピアコンを聞く機会がこれまであまりなく、この曲も初めて聞いたような気がするのですが、なんだかおもしろい曲です。どこかニューヨークチックな現代的な部分もあり、ピアノとオケが喧嘩してるような感じの部分もあり、力強くもあり、飛んだり跳ねたり感もあって、楽しく聞くことができました。

 今回のピアノソロは、ピョートル・アンデルジェフスキ

かなり音量出して、力強い演奏でした。彼の演奏はこれまで聞いた時にはあまり特徴がなく、なんとなく流れる感じの印象があったのですが、今日はいつもより力強さがよく出た熱演でした。横の席のドイツ人のおばちゃんが、「ピョートル・アンデルジェフスキってポーランド人だと思う、ロシア人だと思う?」と聞いてきたので、「わからない」と答えると、「私もわからないわ!!」と笑ってました。後で調べたらお父さんがポーランド人で、お母さんがハンガリー人で、本人はポーランド人ということのようです。

 


ストラヴィンスキー:春の祭典


イゴール・ストラヴィンスキー:春の祭典

Igor Strawinsky: Le Sacre du printemps / Bilder aus dem heidnischen Russland

 

 春の祭典は、当時パリを席巻していたバレエ・リュス(ロシアバレエ団)のためにイゴール・ストラヴィンスキーが、1913年に完成させた曲です。ストラヴィンスキーは、バレエ・リュスのために、既に「火の鳥」「ペトルーシュカ」を提供しており、3作目となる曲です。1913年5月29日にパリシャンゼリゼ劇場で初演が行われますが、大暴動に発展します。ストラヴィンスキーの前衛的な音楽、リズムはどんどん変化し、不協和音の塊、土着民族の衣装、そして天才ダンサーであったニジンスキーのこれまでの常識を全く覆す振付。よちよち歩いたり、立ち尽くして動かなかったりと。初演当日は、美しく伝統的な音楽を期待する層、新しいものを求める層が、賛成・反対に回り、嘲笑し、野次を飛ばし、お互いにののしりあい、殴り合いに発展し、最後には音楽も聞こえなくなり、振り付けのニジンスキーが舞台袖から拍子を数えてダンサーに指示を出す始末。警察も出て逮捕者も出たとか。ストラヴィンスキーの音楽も、当時の演奏技術では演奏不可能であったようで、おそらく現在演奏されているような演奏には遠く及ばなかったのだと思います。このような伝説的な初演を終えた春の祭典ですが、現在では多くのオーケストラが頻繁に演奏する代表曲となっています。

 春の祭典、これまで何度聞いても、なんでこの曲そんな有名なんだろうかなどと思っていたのですが、今日はなんだかすごく曲が入ってきていい曲に思えてきました。このオケ、かなり安定していて、バランスも良く、素晴らしい演奏でした。弦はいいけど、管がもう一つというオケあるんですが、全体の実力バランスも良くすごく楽しめました。

 

今日も、素晴らしい演奏が聴けて感謝です。