クリスティアン・ツィマーマンのシューベルト(2015年11月、ドイツ・ベルリン) | クラシック音楽と食べ物と。。。

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今回は、2015年11月のベルリンから久しぶりにコンサートの話です。

 

この日もハンブルクアルトナからベルリンに向けて鉄道で移動したのですが、電車が全般的にかなり遅れているようです。アルトナの駅で1時間前に出発するはずのベルリン行きが入ってきて、駅員にこれに乗る方が早いかと聞くと、多分そうだというので、その電車に乗り込みます。大正解で、ほぼ予定通りにベルリン中央駅に到着。

 

久しぶりに『ささや』さんへ来ました。今日は、お客さんが多くシェフも忙しそう。まずは、油菜のお浸しとリースリング。

お任せで握ってもらいました。

デザートに和風ティラミス。

 

今日のフィールハーモニーでのコンサートは、クリスティアン・ツィマーマン。現代の最高峰のピアニストの一人です。

クリスティアン・ツィマーマンは、ポーランド出身のピアニストで、ピアノを始めたのは5歳の時。ピアニストでもあったお父さんからの手ほどきで始めたようです。7歳からツィマーマン唯一の師であるカトヴィッツェ音楽院アンジェイ・ヤシンスキに師事します。1975年にはワルシャワで開催された第10回ショパン国際ピアノコンクールで30カ国118人の参加者中最年少で優勝を果たします。その翌年には、ヘルベルト・ブロムシュテットの指揮でベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との最初のコンサートを行いました。その後、世界的な著名な指揮者、欧米の主要なオーケストラとの共演を重ねています。新しい曲は10年温めないとコンサートにのせない、演奏には自分のピアノを持ち運ぶなど、ツィマーマンには逸話が絶えません。ピアノという楽器そのものにも大変造詣が深く、自宅には自作のピアノや鍵盤アクションなどがあるようです。彼が学生時代のポーランドは非常に物資の調達が難しく、楽器の修理には自分で部品の製作まで行わなければならなかったことに起因しているようです。これほどのこだわりを持つピアノの神、ツィマーマンのコンサート、大変楽しみです。

 


シューベルト: ピアノ・ソナタ 第20番 D 959 イ長調


最初の曲は、

シューベルト: ピアノ・ソナタ 第20番 D 959 イ長調

Franz Schubert: Klaviersonate A-Dur D 959

 

シューベルト最後のソナタと呼ばれる19番、20番、21番の2つの目の曲です。1828年に書かれたこの曲は、シューベルトが亡くなる2か月前に書かれたもので、10年後に出版されたときには、「シューベルト最後の作品。3つの大ソナタ」として売り出されました。この曲が作曲される1827年シューベルトが崇拝して止まないベートーヴェンが亡くなります。その翌年1828年9月シューベルトは体調を崩し、兄フェルディナントの元へ身を寄せますが、作曲への情熱は冷めず、この3曲もそういった中で創作されました。

 

力強い和音で始まる躍動感ある第一楽章 アレグロ、それに続く第二楽章 アンダンティーノでは、舟歌のように水面を揺れるようなメロディーで始まり激しさを増していきます。そして、ベートーヴェンのピアノソナタからの引用が見られる第3楽章のスケルツォ、そして自身のピアノソナタ第4番からの主題ですすめられていくロンド。激しさ、静けさ、美しさ、そしてシューマン特有の歌うようなメロディー、それらがちりばめられ、それらが微妙なバランスをとっている、素晴らしい作品です。

 

大ソナタと呼ばれるだけあって、40分を超える大曲。ここで一度休憩に入ります。

 


シューベルト: ピアノ・ソナタ 第21番 D 960 変ロ長調


2曲目は、

シューベルト: ピアノ・ソナタ 第21番 D 960 変ロ長調

Franz Schubert: Klaviersonate B-Dur D 960

 

この曲は最後のソナタの3曲目。説明が要らないほど有名な曲の一つだと思いますが、個人的にもシューベルトのピアノソナタで、1、2位を争う大好きな曲の一つです。第1楽章 モルト・モデラート、第2楽章 アンダンテ・ソステヌート、第3楽章 スケルツォ:アレグロ・ヴィヴァーチェ・コン・デリカテッツァ - トリオ、第4楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポと4つの楽章からなり、こちらも40分物の大曲。

最初のメロディーを聞いただけで、涙出てきます。本当にきれいな曲で、そしてドラマチック。ある意味宗教的な静謐さ、美しさが全体を覆っているような印象を受けます。

 

さすがはツィマーマンフィルハーモニーの大ホールでピアノリサイタルってすごい!!なかなかここの大ホールでのピアノのリサイタルは開けないですよね。それも、ほぼ満席。演奏は、さすがツィマーマンって感じの演奏です。完全に自分のものにした音楽を圧倒的な完成度で聴衆に投げかけてくる。そんな音楽。でも、ちょっと温かみのないシューベルトな感じもしました。音はものすごくやわらかいのですが、個人的には、もう少し人間臭く、もがいているシューベルトの方が好きかもしれません。D 960の最後の音は、ツィマーマンのトレードマークともいえる、立ち上がっての演奏。演奏後は、ものすごい拍手で、3回ほど袖と舞台の間を行ったり来たりしたものの、結局アンコールはなし。会場の電気が明るくなったのを機に、観客はそれぞれ帰り始めました。

 

今日も素晴らしい演奏会で、大満足です。これからハンブルクまで戻ります。