Okinawa通信507
● ウチナー口 (ぐち)(沖縄弁) の起源が、なんとサンスクリットだという、面白い冊子をもらいました。
先日来沖したウィンドサーフィン仲間との夜、たまたま入った民謡酒場風のお店。
客は私たちだけでしたが、お店主人夫婦は彼らのオリジナルも含めていろいろ歌ってくれました。
その折り、私が琉歌の歌い手の名を何人か知っていたり、
琉球の歴史をいくらか知っていたので、面白がってくれたようですね。
琉球の歴史をいくらか知っていたので、面白がってくれたようですね。
ウチナー口の起源・序章
~サンスクリット梵語が明かす大いなる秘密~
上原正稔 著 A4版で12pの小冊子だ。
定価として1000円と書かれてある。
特定非営利活動法人 カタンニュークラブ発行
(tel/fax 098-998-9445)
興味のある人は、どうぞ。
沖縄には、いわゆる沖縄なまり、というのではなく、この言葉、いったい何から来ているの? 語源がわからない ……… (それは沖縄6年生の私だから、ではなく、ウチナンチューたちにもわからない) という言葉が、たくさんあります。
この冊子は、それらはサンスクリットから来ているのだ、として、いくつも例証しています。
なのでこの冊子の内容は、ウチナンチューや、私のように沖縄に何年か住んでいる人間にとって、とても興味深いものですが、
それ以外の人たちには、きっと読んでも、なかなかその面白さは分からないのでは、と思います。
例証のいくつかを紹介すると。
・ 沖縄では太陽のことを 「ティーダ」 というが、これは中国仏教語で天道 (ティンダオ) から来ている。
・ 八重山諸島 (石垣島周辺) の歌として知られているものに 「トゥバラーマ」 というのがある。
男女の情愛を歌うとても情緒ある歌だけど、この 「トゥバラーマ」、私はまったく意味がわからかった。
それが、サンスクリットで、「トゥバ」 が 「あなたの」、「ラーマ」 が 「女神」 を意味し、
「あなたの女神」 だという。 なるほど …… と納得したものの、
「あなたの女神」 だという。 なるほど …… と納得したものの、
今回ネットで発見した 「訪う (とぶらう) 男女がお互いに訪う」 から来ているという説もあり、
これも納得できる。
これも納得できる。
こっちだと、沖縄なまり、といえそう。
・ 「人名、地名は全て梵語」 という章では、多くの地名人名が、サンスクリットから来ているとしている。
沖縄の人名は、ほとんどが地名と共通しているので、つまり、
いわゆるウチナンチューらしい名前は、サンスクリットだということだ。
いわゆるウチナンチューらしい名前は、サンスクリットだということだ。
安謝 (あじゃ) は、a-ja 「永遠なるもの」。 粟国 (あぐに) は、aguni 「火之神」。
北谷( ちゃたん) は、catanya 「知性」。 恩納 (おんな・うんな) は、unna 「水の湧き出る所」。
安慶田 (あげだ) は、agada 「健康・薬」。 安室 (あむろ) は、amara 「不滅の」。
………そのほか、たくさんの例があげられている。
・ また 「神々しいまでのウチナー女性の名前」 という章では、
ちょっと昔、沖縄の女性には、「カマー、カマドゥ、カマラー、ウシー、ナビー、カニガメ ………」
などの奇妙な名前があったが、これらは、みんなサンスクリットから来ている、という。
などの奇妙な名前があったが、これらは、みんなサンスクリットから来ている、という。
私自身が、耳にしているのは、
以前書いたこともある映画 「ナビィの恋」 のナビーと、カマドゥ、ウシー くらいですが、
以前書いたこともある映画 「ナビィの恋」 のナビーと、カマドゥ、ウシー くらいですが、
ナビーは 「鍋」 から、カマドゥは 「竈(かまど)」 から来ていて、両方とも台所と関係している、
ウシーはどこから来ているから分からないけど、江戸から明治には「クマ」という女性名もあったし
…… と、思いつつ、ずいぶんヒドイ名前をつけたものだ、と思っていたのですが、
…… と、思いつつ、ずいぶんヒドイ名前をつけたものだ、と思っていたのですが、
それらは、サンスクリットだというのです。
ちなみに、
カマーは、kaama 「愛の神」。 カマドゥは、kama-duh 「如意牛(全ての願望を叶える牝牛)」。
カマラーは、kamalaa 「美と繁栄の女神の娘」。 ウシーは、usii 「希望」。
ナビーは、naabii 「へそ、あるいは中心」。
そしてカニガメは、kanii 「少女」とmegha 「浮雲」 で 「雲に乗った少女」。
そしてカニガメは、kanii 「少女」とmegha 「浮雲」 で 「雲に乗った少女」。
(ワタシ、ナビーはやっぱり鍋から、カマドゥはやっぱり竈から、来ていると思うのですが ……)
………… などなど。
● さて、読後感。
とっても面白い、と思うし、「へぇ」 「ほぅ」 「なるほど」 と感じるところもあります。
がしかし、語源不明なウチナー口を、無理にも、サンスクリットに当て嵌めてるなぁ、という感もします。
著者の上原正稔さん、名前になんか記憶があり、このブログでも書いているんじゃないかな、
とブログ内検索してみると、
とブログ内検索してみると、
ありました。
以前書いた、『青い目が見た「大琉球」 』 という本の編者でした。
この本は、ペリー一行が浦賀に来る前に訪れた琉球国のことを、一行の画家が描いた当時の絵と記事でまとめた、とっても面白い有意義な本です。
興味のある方は、
今回著者は、
この小冊子 『ウチナー口の起源・序章』 で、ウチナー口とサンスクリットの関連性を強調するためか、
この小冊子 『ウチナー口の起源・序章』 で、ウチナー口とサンスクリットの関連性を強調するためか、
いわゆる沖縄学 (沖縄の先人たちが研究した沖縄史) でいわれている 「日琉同祖論」 (日本と沖縄は同じ祖である) について、
その見解にくみしないし、また日本語を祖語としている言語論にも異議をとなえる立場だといいます。
サンスクリット、つまり梵語 (ぼんご) は、仏教との関連で、普及した言葉です。
ために、内地にも、サンスクリットが語源となっている地名や言葉がたくさんあります。
私がつい最近行った熊野の、「那智の滝」 の 「那智」 もサンスクリットの nadi 「河・江」 から来ているといいます。
また 「補陀落(フダラク)」 は、potalaka 「観音菩薩が住むとされる霊場の地名」 から来ているそう。
沖縄も、薩摩に支配される以前の琉球国時代は、王朝官制の寺院などたくさん建てられ、
仏教が大いに普及していたと言われています。
つまり、その時代に梵語・サンスクリットの言葉が使われ、
つまり、その時代に梵語・サンスクリットの言葉が使われ、
それが語源になったウチナー口も、たくさんあるだろう、と思います。
というわけで、沖縄6年生の私見としては、当て嵌まるサンスクリットがウチナー口に多いからといって、
沖縄語は、日本語を祖語としていない、というのは、無理があるのでは、と思っています。
以前に書きました
興味のある方は、どうぞ。
メゾン カマドゥ ですと。
この名でネット検索してみたら、
どうやら那覇市にあるらしい(笑)。
こちら、ミス恩納ナビー。
恩納村の鍋さん?
あるいは、
恩納村のへそ、あるいは中心さん?
(写真は両方とも画像サイトより)