ノイズシェーパーの応用の代表的なものにΔΣ型変調器およびΔΣ型DAC(DAコンバーター)があります。まず1次のΔΣ型変調器の例を示します。

1003101次ΔΣ

まず入力された信号は前回の出力との差分を取り、その結果を積分し、その結果を量子化器で切り捨てて出力します。
その時の伝達関数は昨日の1次ノイズシェーパーと同じになります。
例えば出力を1ビットに切り捨てると多ビット入力データが2値(1ビット)の時系列の信号に変調されます。

差分を取り、積分するのでΔΣ型変調器と呼ばれていますが、昨日のノイズシェーパー回路のように差分だけを帰還しても伝達関数が同じなので、同様に変調できます。


次にデジタルオーディオで主流のΔΣ型DACのブロック図を示します。

1003103次MASH

この回路はMASH方式のΔΣ型DACとか1ビットDACとか呼ばれています。
(MASHはNTTの登録商標です。)
まず入力信号に1次のノイズシェーパーを掛け、その切り捨て分に2次のノイズシェーパーを掛けて、その微分値と、もとの1次ノイズシェーパーの結果を加算して出力します。
途中の計算式を省略していますが、1回目の切り捨て時の量子化誤差が消えて2回目の切り捨ての量子化ノイズに3次のノイズシェーパーを掛けた結果になります。
1回目の量子化は7値、2回目の量子化は5値に切り捨てられ、加算して11値で出力されます。
動作速度は32fs(fs=44.1kHz)で動作させ、384fsか768fsのクロックで11値PWM出力されます。
11値というのはタイムスロット12クロックでベタLとベタHを避けるので11値PWMとなります。
32fs×12=384fsとなります。
ノイズを高い周波数に追いやってアナログLPFで除去します。
このような手法で約3.5ビット(11値)PWMで16ビット精度の98dBのダイナミックレンジと歪率0.003%以下を実現しています。
不思議ですね。384fsだと16.9344MHzとなり普通の周波数のクロックですが、ノイズシェエーパーを使用せずに2の16乗となると2.89GHzとなって、通常のロジックではかなり困難な周波数が必要になります。
このようにノイズシェーパーを用いると1/100以下のクロックのPWMでオーディオ性能が取れるようになります。
そして低い周波数のクロックでノイズを高い周波数成分に追いやることをノイズシェーピングと言います。
この手法はADCにも使われています。



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