そんなこと、考えられる状況ではなかった。家族全員。
それなのに。
「何入れる?」
誰かが言った。
「何入れようか」
誰かが言った。
現実を直視するのが恐い、哀しみの沼に沈むのが恐い、誰かを支える自信さえない私たちは、核心には程遠い、浅い意識の中で、みんなと同じ課題に取り組む。
パパの柩に何入れようか。
ママが入りたい。
息子たちには聞かせちゃダメな、ママの本音。
「ゴルフウエアだね」
「バイザーとゴルフシューズ」
「カートバッグもいるんじゃね?」
みんなでパパがゴルフへ行く準備。
あー、でも、シューズはパパが長距離散歩に行く時、「この靴、すっげーラク!これなら、どこまででも歩けるよ!」って言ってたやつを入れてあげよう。
どんなに遠くからでも帰って来れるように。