警察署でパパが安置されたのは、テント?みたいな所だった。

記憶が定かではないので、でも、警察署の建物の外だった気がする。


ベッドの前にお線香が焚かれていた。

死んじゃった人みたい。


「検死は明日の朝、たぶん一番最初にやってもらえると思います。そこで死因がわかれば帰れますが、わからなければ、その後、解剖になって、帰れるのは夕方になってしまうかもしれません」


「今日は私もここにいていいですか?」


「それは出来ません」


 え?ダメなの?

 パパ、一人になっちゃうじゃん!

 やだ、やだ!ダメ!ダメ!

 置いてなんか帰れない!

正気を失う寸前、長男か次男が私の背中をポンポン叩く。「今日は帰ろう。明日の朝、来よう」


パパみたいな口振り。

この子たちも、突然パパを亡くして辛いのに、ママが我を失ったら、余計な心配を増やしてしまう。しっかりしなきゃ。しっかり。

落ち着いて。今、ママに出来ることは何?

そうだ!


「会社に連絡しなければいけないので、パパのケータイは返していただけますか?」


「あ、ハイ!持ってきます!」


やだ~!帰らない!ここにいる~!と半狂乱のオバチャンに駄々を捏ねられるより、数倍カンタンなミッションだったようで、刑事さん、飛んで行った。


帰り際、みんながパパにお線香をあげていた。

私はスルー。

なんでパパにお線香あげなきゃいけないの?

そんな私を諭す人はいなかった。