探しましたよヴァルガーブ
↑別にこの人は嬉しがってるわけではありません。
ちなみに我らが愛しのエト君は
いやぁ、善人だなぁ。同じオカッパなのに、ゼロス悪人すぎ。
とてもハゼの着ぐるみ喜んで着たり、エプロン姿を披露したり、テニスプレーヤーになってみたり、チャイナドレスでちょっとリアルな女装したり、こんなに気さくな魔族っていていいんでしょうか。ま、きっとスレイヤーズだから許されるんでしょうね。
その点エト君は真面目ですから、女装大作戦で年上だらけの仲間に土下座させるほど、おちゃらけに抵抗を持ってます。
どんだけ違うかと言うと、
エト君はファリスの司祭。つまり勧善懲悪。アンデッドや邪悪な魔物を正義の名において退治します。
ゼロスは生粋の高位魔族。希望は魔族による世界滅亡。邪悪だろうがなんだろうが邪魔なら殺します。
いやー、対極だ。ちなみにゼロス相手になると、当面の悪役である(はず)のヴァルガーブが善人に見えるから、見た目完全悪人のアルメイスもまだ可愛く見えるから、恐ろしいものです。
ただまぁ、彼のお陰で悪役を書く気になりました。ありがとうパシリ魔族。
そんな訳で、とりあえず暗い人たちの野望部分をうpしてみます。
仄暗い部屋に蠢く、複数の男たちがいた。中には右腕を失い、眼帯をした者もいる。
「くそ…ヴァリスめ…」
呻くような声の向こうで、何かの詠唱が聞こえる。呪文にしてはあまりに憎しみがこもり、それはまるで呪詛のように聞こえた。
「集中せよ、ガルド」
窘めの声の後には、舌打ち。またもう一人、呻く。
「そう、今の我々には、ショーデル様がおられないのだからな…」
ショーデル。その名を聞けば、連合軍の者たちは顔を顰めるに違いないだろう。
先日のマーモ決戦において、ヴァリス軍に甚大な被害をもたらした、暗黒神ファラリスの最高司祭。決戦に備えて用意していた生贄にファラリスを降臨させ、最期の呪いでそこに居合わせた聖騎士たちを全員石化させたのだ。
そこの中心にいた…エト王以外。
さしものファラリスの呪いも、至高神に守られたエトを害なすには及ばなかったのだ。しかも彼はファリスを降臨させずに防ぎきったのである。
ここに集う者たちは、ファラリスの司祭たちの残党である。
連合軍の諸王たちは、抵抗せぬものは討たぬ、という勅令を放っている。それは現在忠実に守られ、投降する一般市民などは皆保護されている。
だが暗黒神の信徒たちは、到底至高神の兵士たちに頭を垂れることなどできない。諸王たちは交代で兵を率い、討伐隊を結成して残党を討ちにかかっている。生き残りたちは特にヴァリス軍の手により殺され、犠牲は増える一方だ。
「このまま、いたずらに抵抗されても、負けるのみだ」
司祭たちは痛烈な真実を悟った。
「では、エトを討てばよい」
とは言え、エトは慎重すぎるほどに慎重な性格だ。家臣たちもマーモの逆襲に備えて、警備を厳重すぎるほどに厳重にしている。今の手薄な軍勢ではとても首など取れそうにない。それに、ファラリスの呪いに耐えてみせた徳の高さだ。
司祭たちはずっと方策を考え続けていた。何とかして、この世に再び暗黒神の威光を取り戻さねば。
そして、考えあぐねた結果、ようやく見つけ出したのだ。
エトに一矢を報いる、一手を。
それは暗黒神の最高司祭のみに伝わる、禁呪とされる秘法だ。ショーデルがもしもの時にと決戦前に高司祭に伝えたのだが、その高司祭もフェネアという神官戦士に討ち取られた。その死体に呪文をかけ、何とか秘法を聞きだしたのだ。
だが、最高司祭のみに伝わるだけあって、その秘法にかかる魔力は甚大である。今は二十人の司祭で何とか魔力を足している状態だ。
「もう…少しだ…」
一人の司祭の声に、疲れが見える。無理もあるまい。三時間以上、唱えっぱなしなのだ。
しかし、途中でやめるわけにはいかない。まだファラリスの影響力が残り、マーファの力を抑えている今でなければ、強い効果を生み出せないのだ。
ルーンが最終節に近付いてきた。闇に慣れた者たちもぞくぞくするほどの巨大な闇が近付いてくる。
この呪法は、ただの呪文ではない。暗黒神が、対象者の心に入り込むのだ。
転生や降臨などではなく、精神などに影響に及ぼす。
エトに外から手出しはできない。呪いも効かない。だが、中となれば、話は別だ。
ず、ず、ずずず…。
「…我らが願い…」
ゴ、ゴゴ、ゴゴゴ…。
闇の声が、一つに揃う。
「聞き届けたまえ、崇高なりし暗黒神!」
巨大という言葉では表現しつくせないほどの闇が、部屋中に充満した。
「来た…」
先日の降臨の時に感じた本能的な恐怖が、全身を駆け巡っていく。これほど闇を愛する人間たちの本能すら衝き動かすほどの、そう、
巨悪が。
『…望みを申せ』
心を震わせる波動が音となり、響く。
先頭の高司祭が、大きな声をあげた。
「ファラリスよ…我らが望みは…」
もう、たった一つだ。
連合軍の、重要な一角。
ヴァリス王国の、神聖王。
至高神の、愛児。
「エト…あの憎き…」
ふ…。
それは、人間たちの耳に、確かに”笑い”に聞こえた。
唖然とする司祭たちに、今度は独り言が続く。
『神の子か…面白い。よかろう。その瞬間をしかと見るがよい』
それで、神託は終わった。
呆然としながらも、暗黒神への願いが通じたことを知り、司祭たちは勝ち鬨の笑いをあげた。
「ファラリスへの祈りが通じた…」
「そうだ…我々の願いが…」
「しかし…」
一人だけ、疑問口調の者がいる。
「神の…子とは…?」
「そう言えば、ショーデル様が仰っていた。何故ここまで強固に守りを固めるのかと尋ねた司祭に、『エトを侮るな。あの者は神の子だ』と。まさかとは思っていたが…。いずれ、分かるだろう。暗黒神の呪いによってな…」
この先、見極めるためにも、見定めるためにも、連合軍の本部に近付かねばならない。
暗黒神の司祭たちは、何があろうとも、生き残ることを誓い合った。
そう、神がこの世に最大の禁呪を成し遂げる、その時までは、必ず…。
しぶとい暗黒神の司祭たちに敬服しちゃいます。でもしぶとさじゃ獣神官には勝てません。
体の半分吹っ飛ばされても秘密です♪と抜かして、さっさか消えちゃうんですもの。それで最後にはおいしいところオール掻っ攫い。おいしすぎな奴です。
さ、そんな訳で久々の更新でございました。