清洲は甲斐とはまた違った賑やかさに彩られていた。
「夏祭りか…」
商人を装い清洲を訪れた俺、猿飛佐助は城下町の様子を横目に見ながら、友人である恭一郎の店へと足を向けていた。
店に近づくと、玄関で水を撒く陽菜の姿が見えた。
「よぉ、看板娘。頑張ってるな」
「あっ、佐助さん」
俺に気づき陽菜が店の中を覗き込むと同時に、恭一郎が店から出てきた。
「助さんちょっと…そんなに貢献してもらってないから」
「はは!良いじゃねぇか。恭の愛想笑いだけより、陽菜がいた方が華やかだろう」
「で?今日は偵察…ってとこ?」
恭一郎は真面目な顔で俺に耳打ちする。
「まぁな…だが町の様子を見て気が変わった。近く祭りがあるみてぇだな。えらく賑わってる」
「何?祭りに参加して、神輿担ぎにでも参加する気?」
「おっ!神輿が出るのか?」
「本気だったのか…」
若干呆れ顔の恭一郎に続き店に入る。
「まぁ…祭りに参加するしないにしても、夏祭りとなると浮足立つものさ」
「そんなの助さんくらいだよ。俺は興味ない」
「お祭りがあるのですか?」
お茶を持ってきた陽菜が目を輝かせて問いかけてきた。
「はぁ…君もか。夏祭りなんて単なる馬鹿騒ぎだよ」
「でもでも!お店がたくさん出たり、屋台でいろんな食べ物が売られるんですよね」
陽菜は目をキラキラと輝かせて食いついてくる。
「相変わらず君は色気より食い気なんだね」
「私…当たり前ですけどお祭りって行った事が無くって、でもずっと興味があって、どんな感じなのかぁと思って」
此処にいる三人は全員忍だ。
祭りに浮かれるような生活を送ってきたわけではない。
だが人並みに楽しい時間を過ごしたいと思うのは、年頃の陽菜であれば当たり前だろう。
「なんだ、陽菜は祭りに行った事ないのか?恭、連れてってやれよ」
「生憎と祭りの日は仕事でね。祭りに協力して欲しいって言われてて忙しいんだ」
にべもない恭一郎の言葉に、陽菜はしょんぼりとしながら玄関の掃き掃除に戻っていった。
「恭…お前素直になれよ」
「何の話?」
「しらばっくれやがって」
俺は恭一郎に真っ直ぐに向き合った。
「まだ音葉の事を引きずってるのか?」
恭一郎の顔色が変わった。
「忘れろとは言わねぇ。だが何時までも引きずるのは音葉の本意では…」
「助さんにはわからない!」
恭一郎は声を荒げ、俺の視線から逃れる様に背を向けた。
「あぁ、俺には恭の気持ちなんざ、これっぽっちもわからねぇ。だがな、音葉がお前を大切に想っていた事くらい見当はつく。今、誰を大切に想ってるかも…」
「助さんも知っているだろう?人並みに陽のあたる生活を送ったって、俺がたくさんの血を吸い続けた事は消えない。音葉は…戻ってこない」
恭一郎は拳を壁に打ちつけ、肩を震わせ呟いた。
「俺は…誰かを幸せにする事なんて出来ない。忍で有ることは捨てきれない」
こんなに感情的になった恭一郎は初めて見たかもしれない。
それだけ長い間、恭一郎は感情を押し殺していたのだろう。
「感情的にさせちまったな…悪かった…悪かったがな」
俺は恭一郎に真っ直ぐに向き合い、こう告げた。
「だったら俺が陽菜を祭りに連れて行っても構わねぇよな?」
「はぁ?」
この俺の発言の後、陽菜を巡って小さないざこざが起きるなんて誰もが予測出来なかった。
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夏祭り -始まりの音- の続きでした_φ(・ェ・o)♪
この後の展開はまだ迷い中ですが…
ちょっとしたゴタゴタが起きる予定です
さて陽菜は夏祭りに行けるのか?
行くとしたら誰と行くのか?
=๑๑( ੭ ε:)੭ु⁾ピュン