仁義なき土方家の防災訓練 | ethlinの煩悩毛だらけ

ethlinの煩悩毛だらけ

煩悩さらけ出し日記

9月3日土曜日、土方家では家族全員がヘルメットを手にリビングに集まっていた。


バイクで旅行?


違います。


9月1日の防災の日、そして9月は防災強調月間。


それに因み、本日土方家では防災訓練を行うのである。


事の発端は、嫁達のご当地トークでの、あさぎの一言であった。


「えっ!みんなは月イチで防災訓練をしないんですか!?」


「えっ!そんな頻繁なペースで防災訓練するの???」


「完全にやりすぎじゃない?」


「あんまり回数重ねても、ダラける人が絶対出そうだけど?」


と疑問系の義姉と義妹に対し、あさぎはと言うと…


「そんな事ないですよーーー!!!校長先生がタイム計ってるですよ!みんな真面目にやってますよ!」


トコロ違えば習慣も違う。


静岡県民とはみんな真面目なのか?


しかし、訓練とは何度行ってもいいものである。


何故なら、毎回必ず真面目にやらない輩がいるからである。


それをよく知っているのは、大勢の生徒と一癖も二癖もある教師達を束ねている、薄桜学園教頭であり土方家の長男歳三である。


「最近は火災より地震災害の方が深刻だからな…。」


「そうですよ~(><)地震が来て、家族みんなバラバラになっちゃったら大変です~。」


と言うわけで、あさぎ監修の元、土方家では初の防災訓練が行われる事になったのである。


「わぁ~ethlin義姉さんのヘルメット素敵~。桜の模様サクラですね~。」


「ゆすらちゃんのヘルメットも綺麗~。月雲月と椿椿…うん、一さんのイメージだね。」


「沙雪ちゃんは雪の結晶雪の結晶と雪うさぎ雪うさぎ!あう~うさぎさんもかわいかったかもです…。」


「あさぎ義姉さんはポンデちゃんポンデライオンですね♪お義姉さんらしくていいじゃないですか!誰が見ても一発であさぎ義姉さんってわかりますよ。」


防災訓練のヘルメットに、何故このこのようなデコレーションが施されているのか?


そして何故、このようなふざけた事態に対して、一番煩そうな歳三が止めなかったのか?


至極簡単。


至って正論。


『ヘルメットを見たら、誰が見ても誰かがすぐにわかる』


災害時に一番怖いのは『家族とはぐれる事』である。


何よりも自分の嫁に


「歳三さん!見てください!!かわいいでしょ?これで防災訓練が一段と楽しくなりますね♪」


と満面の笑みを向けられたら


「お前は防災訓練の主旨を理解してんのか!」


と怒鳴る気が失せたのである。


土方家は全員『嫁至極主義』である。


それは他人にも自分にも厳しい歳三にも、当然のように適用されているのである。


さて、そろそろ防災訓練が始まるようである。


「てめぇら、自分の役割分担はわかってるだろうな?それから…防災訓練の鉄則『押さない・駆けない・しゃべらない』これを一つでも破った奴がいたら…わかってんだろうな…。」


ここまで注意しても、必ず破る奴がいるのである。


あえて誰とは言わないが(苦笑)、まるでお約束のように破る者あり、長男を怒らせたいがためにわざと破る者あり…とにかく土方家は毎日が大変なのである。


「えっと…私は火の元を確認して玄関に集合…二階にいるみんなと合流したら、全員で近くの公園まで避難。一さんが誘導係、ゆすらちゃんはお腹の大きいあさぎちゃんを補助をしつつ誘導。私は全員いるのを確認しつつ、しんがりをを務める…で合ってますか?」


「あぁ。ethlinちゃんとついて来い。はぐれるんじゃねぇぞ。」


「はい、大丈夫です。家族の安全を守るのは、長男の嫁の役目ですから!」


ここで必ずちょっかいを出す人物がいるのだが…今回は防災訓練という事もあり、どうやら静かにしているようである。


今のところは。


全員がヘルメットを被り、それぞれの立ち位置についたところで、いよいよ訓練開始である。


左之助の声が土方家に響き渡る。


「おーい!地震発生!地震発生!全員頭の位置を低くして、タンスや本棚から離れろよ。それから自分の嫁さんの安否は各自で行え!言わなくってもわかってると思うがな。」


「左之!てめぇ…俺に対する嫌味かよ!!」


「うっせい!新八、てめぇはてめぇの筋肉の心配でもしてろ。あぁ…わりぃ伊東ママ(※)を呼べばよかったな。」


「伊東ママは『ママ』ってついてるだけで、れっきとした野郎じゃねぇか!!」


開始わずか15秒で鉄則の一つ『しゃべらない』が…はい!消えた!!。


「歳三さん、火の元確認しました!」


「よし…全員玄関前に集合しろ!」


一が先頭に立ち、ゆすらがあさぎの手をひきながら、ゆっくりと階下に下りてくる。


「さっ、沙雪行くよ。慌てなくてもいいからね。」


「うん。」


いつもならこういった行事はサボりがちな四男総司(一と総司は双子)も、神妙な顔つきでで訓練に参加していた。


沙雪が階段を降りきったところで、残りの兄弟三人が階下へ下りるわけだが…


「あっ…サミットから電話だ。もしもし…。」


「平助、てめぇ…この非常事態に何のん気に電話出てんだよ!」


「新八兄貴煩過ぎ。あっわりぃ…またかけ直すぅ~っておい!新八兄貴、携帯取るなよ!」


「おい、新八。かけ直すって言ってんだ。返してやれ。」


「平助!この非常事態に携帯なんか持ち歩いてんじゃねぇよ!」


いや…非常事態だからこそ持ち歩くのだろう。


回線混雑で通話が出来なくても、いざとなれば短時間ではあるが、ライトの代わりくらいには出来るハズ。


「おい!てめぇら早く下りてきやがれ!!」


「ほら…平助、携帯取り戻してやったからな。先に下りろ。急がないと、兄貴の眉間の皺がますます深くなっちまう。」


「サンキュ!左之兄ぃ♪」


「平助!待て、てめぇ…」


「なんだ…新八兄ぃ…やるのかよ…」


「馬鹿!新八!平助!こんな狭い所でケンカするな!!そして押すなーーー!!!」


先に下りようとした平助に新八が駆け寄り、狭い階段で野郎三人がもみ合うような形になった。


『押さない』『駆けない』を破った代償は…野郎三人で仲良く階段落ちであった。


「あわわわうず左之さんーーー!!!大丈夫ですか~?」


「あさぎ、心配すんな。このくらいでどうにかなるようなヤワな体じゃねぇ。」


「平助君、頭打ってない?血は…出てないね。立ちくらみとかはない?歩けそう?」


「いってーーー!いたたっ…ん…ゆすらねぇ、サンキュ。あ~ぁ絶対にタンコブ出来たよな~。」


「新八さん!大丈夫ですか!!あぁ…よかった。新八さんの鉄の肉布団のおかげで、左之助さんも平助君も無事ですね♪」


「ethlin義姉さん、ツッコむとこそこーーー!?」


「義姉さんに沙雪ちゃん…筋肉の心配じゃなくてよ…頼むから…俺自身の心配をしてくれ…汗


そして当然の如く、もれなくオプションとしてついてくるのは…


「お前ら…事前の説明聞いてなかったのか!『しゃべるな』『押すな』『駆けるな』こんな簡単な事がなんで出来ねぇんだ!!」


それはこの三人が三馬鹿…


いやいや…三人の仲がとてもいい証拠である。


「くだらねぇ事で時間をロスするわけにはいかねぇんだ。全員避難するぞ!」


全員がすばやく靴に履き替え、玄関を出た。


総司が鍵を閉め、沙雪の手を引きながら駆け出した事を確認すると、ethlinも急いで避難場所へと向かい走り出した。


「義姉さん…」


「えっ?」


総司がethlinを横切った時、何か話しかけられた気がした。


言葉はまったく聞き取れない。


ethlinの方を向き、なにやら嫌な感じの笑いを浮かべた事だけは確かである。


しかし、今はそんな事を気にしている場合ではない。


後ろに誰かが取り残されていないかを確認しつつ、ethlinは避難場所の公園へと無心で走り続けた。











「はぁ…はぁ…全員避難完了しました!」


「…遅い!ったく…お前らは非常事態でもくっちゃべってんのか?あぁ!?」


「そうですよ~。あれだけ『押さない』『駆けない』『しゃべらない』でって言ったのに~新八さんと平助君ダメですよ~。」


「左之助は除外かよ!!」


「新八兄ぃが携帯横取りするからじゃん。」


「平助!お前もさっさと降りずに新八の相手するからだ!」


土方家の場合、さらに『騒がない』も必要のようである。


「とにかく…次回はもっとタイムを早めるからな。お前らもっと真剣にやれ!!ったく…これが本当の災害だったら…全員助からねぇぞ!わかったな!!」


「「「「「「はーい」」」」」」


「なまくらな返事してんじゃねぇ!」


「「「「「「はい!」」」」」」


「じゃあ念のために点呼を取る。俺に続け。一!」


二・三・四…と点呼は続き「八!」とethlinが叫んだところで声は途絶えてしまった。


「…」


「「「「「「「…」」」」」」」


もう一度言っておく。


土方家は今現在10人家族である。


確実に二名足りない。


「あれぇ~総司兄ぃと沙雪ねぇは?」


平助ののんびりした声が公園に響く。


この名が挙がったところで、歳三のこめかみが引き攣った。


「あれ?ちゃんと私の前を走ってたのに?」


しかしどんなに探しても、二人の姿は見えない。


「またあいつらか…」


歳三の怒りが爆発する寸前、一の携帯が静かに震えた。


「…歳三兄さん、総司からメールです。」


「…読み上げろ。」


「はい…『一君、今歳三兄さんのお説教中なんじゃない?僕らがいないことにやっと気がついて…クス…青筋立ててる最中かな?あははは~。僕と沙雪はもっと安全で楽しいところに避難したから安心してって兄さんに伝えといてよ。今晩中に帰ったら、兄さんの雷が落ちて危ないでしょ。だから明日の夕方まで避難するつもり。だから今晩の夕食と明日の朝食は要らないよって、ethlin義姉さんに伝えてね。あっ、でも明日夕方にちゃんと帰れるかな?沙雪が動けなくなったらもう一泊しようかな…な~んてね。じゃあ一君、後は任せたよ。』以上です。」


「………」


「「「「「「「………」」」」」」」


一の携帯がパチンと閉じる音が静かな公園に響く。


「くっそ…総司の野郎…毎度毎度馬鹿にしやがって…締め出してやる…今度こそぜってーに家に入れねぇ…帰ってきても…絶対に…家には上がらせねぇからなーーー!!!」


第一回土方家の防災訓練は、最後にお決まりの歳三の雷が落ちる事で無事終了した。


そしてその場にいない二名と歳三を省く全員が


『次回の避難訓練は、雷対策もしっかり考えなくては災害時に生き残れない』


と真剣に考えていた。


家族がの思いが一つに…いや


一部の家族の思いが一つになった瞬間であった。











※伊東ママ…新八さん行きつけ『スナック伊東』の看板ママ。酔いつぶれて泊まる事もしばしある(笑)