5月30日11時50分、もうすぐ日付が変わろうとしている。
私はお布団の上で携帯の握りしめ、膝の上に置いた時計と交互ににらめっこしていた。
「寝る態勢万全。時計も時報でみっちりチェックしたし…。緊張する…。」
メール文章を何度も何度もチェックし、もう一度時計を入念にチェックする。
「はっ…いっ…一分前…。」
あと10秒くらいというところで、携帯の送信ボタンを押した。
『送信中』の文字が『送信しました』に変わったと同時に、携帯の時計が0時を示した。
「お誕生日おめでとうございます、歳三さん。」
狼さん人形に向かってひとり言のように呟いた。
(今頃…桜花でたくさんの人にお祝いされてるんだろうな…。プレゼントとか…たくさんもらうんだろうな。」
机の上のアレンジメントとその横に置かれた、小さな箱に視線を向けた。
この日のために、山南さんに作ってもらったお花のアレンジメント。
おねぇと一緒に、たくさん悩んで悩んで選んだプレゼント。
「喜んでくれるかな?男の人へのプレゼント選ぶのって…初めてだし…ちょっと心配。でも!おねぇも太鼓判だったし、ちょっとがんばって奮発したけど…これが一番歳三さんに似合うって思ったし。」
携帯を枕元に置き、お布団の中に潜りこんだ。
静かに目を瞑る。
「明日は仕事だから…ちゃんと寝て…ちゃんと仕事しなきゃ…。」
でも、脳裏に浮かぶのはあの人の事だけ。
私の大切な…桜花の事ばかり。
「歳三さん…本当に貴方にあげたいものは、お花でも小物でもないんです。本当に…私が本当に貴方にあげたいものはたった一つだけ…。」
それは溢れんばかりの幸福と、永遠に消える事のない安らぎの時間。
(傷ついた狼さんが失ってしまった、幸せな時間と安らぎをもう一度貴方にあげたいの。)
「神様お願いします。どうか…どうか今日一日、傷ついた狼さんに幸福な時間をお与えください。そしてあの人の胸に咲く花に安らぎの時間を…傷ついた恋人達に…至福の時間を…お与えください。」
私は胸の辺りで手を組んで、強く握った。
「私は少しでいい。私の幸せを差し出しますから…どうかお願いします。今日だけは…今日一日だけは…心の傷も…痛みも…全て忘れて…ただ…二人に幸せな時間を…。)
私は強く目を瞑った。
祈りながら
あの人の事を想いながら
私の胸に咲く、薄紅色の花の事を想いながら
私は深い眠りについた。