桜 第三話 ~貴方と最後の…~ | ethlinの煩悩毛だらけ

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煩悩さらけ出し日記

「まだ花が残っていますね。半分くらいは落ちてしまって葉が出てるけど…ふふっ…なんだか配色がさくら餅みたいですね。」


「花より団子かよ?ふっ…お前らしいな。」


日曜日、俺とethlinは河原にある桜並木の下を歩いていた。


「見ごろの桜は一人でたくさん見たから十分なんです!誰かさんが嘘ついたから。」


口を尖らせぷいっとそっぽをむく仕草が、妙に懐かしく感じる。


「そんな嘘つきで身勝手な酷い男に、お前は惚れてるんだろ?」


「ずいぶんと自惚れた発言ですね。」


ethlinはジロリと大きな目で、下から遠慮なく睨みつけてきた。


「ノートに書いてあったぜ。お前は俺の事が好きだって。」


「ぐっ…くぅ…。」


悔しそうに唇をかみ、俯く仕草も愛おしく感じる。


「そして俺は、泣き虫ですぐに拗ねて…意外と気が強いお前から目が離せないでいる。」


両手で顔をそっと引き上げようとすると、顔を赤らめさらに俯いてしまった。


「何もしねぇから安心しろ。お前の顔をもっとよく見たいだけだ。それともなんだ…何か期待してたのか?」


「なっ!もっ…もう…違います!」


今度は耳まで真っ赤にしながら顔を膨らませて、拳を振り上げながら俺の胸の辺りを強く叩き始めた。


俺はその手を取って、そっと握りしめた。


「来年の春もここで桜を見よう。約束だ。」


「…絶対ですか?」


「もう嘘はつかねぇよ。」


「じゃあ今度は私が嘘つくかもです。」


「お前の嘘なんてすぐにバレるじゃねぇか。バレる嘘なら最初からつくなよ。」


「…」


「約束だ。二人だけの。」


「はい。」


小さな手が俺の手を強く握り返す。


ethlinは恥かしそうに俯きながら一生懸命に俺の歩調に合わせ、ちょこちょこと俺の隣を歩き始めた。


俺はそんな姿を黙って見つめていた。


手を伸ばせば触れられる。


強く抱きしめれば…きっと全てを手に入れられる。


壊れるまで強く抱く事など…いつだって簡単に出来る。


(それでも俺は…。)


「このまま攫ってしまいたいところだが…もう一年だけ我慢するか。」


「えっ?なんですか?」


「ん?ひとりごとだ。気にすんな。」


納得がいかないといった顔で、ethlinが俺の顔を覗き込んだ。


「でも…今なんか我慢とかって言ってませんでした?土方さん、また何か我慢してるんですか?あんまり我慢しないほうがいいですよ、体に悪いし。」


(お前のために我慢してんじゃねぇか…ったく…。)


「あっ…もしかして煙草ですか?この辺で煙草吸えるところあったっけ?」


「煙草じゃねぇよ。」


「お腹痛いとか?」


的の外れた問いかけに、つい苦笑が漏れる。


「お前の空耳だ。だから気にすんな。」


(お前を大切にしたいと思うから、今はそっと触れる事しか出来ないでいるんだ。)


「そうですか…っ…あ~!土方さん見てください!」


ethlinが突然俺の手を強く引き、足早に歩き出した。


「ここ!幹に咲いてる桜の花!まだまだ綺麗に咲いてます。」


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「ちょうど上の桜が陰になって、雨が当らなかったんだろうな。」


「かわいいですね。」


そう言ってはしゃぐ俺の小さな桜の花。


「どうしました?」


「何が?」


「なんか…私の顔見て笑ってるから。」


「お前は桜が似合う…そう思った。」


照れる嘘ばっかり…。」


「嘘じゃねぇ。それにもう嘘はつかないって言っただろ?」


(嘘じゃねぇ…初めてお前を見たときから…ずっと…そう思っていた。)


「…土方さんの方が似合いますよ…その…初めて見たときから…ずっと…。」


「なんだ?よく聞こえなかった。」


「ひっ…ひとりごとです。それか空耳です。気にしないでください。」


「…」


照れる…」


「…まぁいいか。」


二人顔を見合わせ笑い合い、手を取って再び桜並木を歩き出した。


「土方さん、ありがとうございます。」


「何が?」


「私のお願い事を叶えてくれて。」


「まぁな…。」


(これはお前の願いでもあり…俺の願いでもある。きっと未練が強かったのは俺の方だ。この願いが叶えられなければ、壊れてしまったのは俺の方かもしれねぇな。)


「今年最後の桜だな…これが。」


「はい。貴方と一緒に今年最後の桜を見られて本当によかった。今日の桜は今年見た中で一番綺麗です。」


「来年はもっと綺麗な桜を見せてやるよ。その次も、そのまた次も。だから俺の…。」


(俺の傍にいて、ずっと笑っていてくれ。)


「俺の?」


「いや…なんでもない。続きは次の桜が咲いたら教えてやる。」


満開の桜の花の下で約束しよう。


「はい。絶対ですよ。」


それは二人だけの約束。


「あぁ、絶対だ。」


永遠を誓おう。


「お前にだけ…な。」


消える事のない、永遠の愛を。