「歳三さん…なんで?…なんでうさぎなんですか?あっ!もしかしたら今年がうさぎ年だから?」
んなわけねぇだろ…。
朝起きたら、何故か俺の頭にはうさぎの耳がついていた。
それだけじゃない。
身長も子供並に縮んでいる。
「どうしよう…。」
ethlinは赤い顔をして、今にも泣き出しそうだ。
「とにかく今日は仕事は休む。原因はわかっている…。昨日山南さんが風邪薬だってよこした薬が原因だ。なに、一日経ったら元に戻るさ。だからethlin安心しろ…って…おわっ!なっ…なんだ!?」
「うわぁ~!!!歳三さんかわいい!かわいいです!!かわいすぎます!!!」
「そんなに強く抱きしめるな!苦しい…。」
と文句を言ったところで、ethlinは興奮しすぎで俺の言葉など一つも聞いちゃいねぇ。
「やだー!かわいいです!もふもふですよ!!」
「わかった…わかったから…」
離せと言ったが離れる気配はない。
ethlinから抱きついてくるなんて事はこれが初めてだった。
(なんで元々の姿の時にこれが出来ねぇんだよ…。)
心中複雑ながらも、俺はethlinのされるがままになる事にした。
「はい♪歳三さん口開けてください。」
「自分で食えるからいい。」
そう言って箸を奪い取るものの、縮んだ手にいつもの箸は長すぎて上手く扱う事が出来ない。
「ほら~、上手く掴めないじゃないですか。」
箸を奪い返したethlinが嬉しそうにおかずをつまみ上げ、俺の口元へと運ぶ。
「はい、あーんしてください。」
渋々口を開けおかずを口にした。
「美味しいですか?」
「あぁ…。」
「ふふっ」
「どうした?」
ethlinは照れくさそうに笑いながらさらにおかずをつまみ上げ、俺の口元へと運ぶ。
「えへへっ…なんだか新婚さんみたいですね。いつもみんなと一緒で…歳三さんと二人っきりの時間ってわりと少ないし…。」
「ethlin…。」
(あんまりかわいい事言うなよ…。)
堪らず強く抱きしめようとした…が、縮んだ体では子供が大人にしがみついているようにしか見えない。
「歳三さん、今日は珍しく甘えん坊ですね。」
(違う!そうじゃねぇ!!)
と心の中で叫んだところで、通じるわけもない。
「そうだ!ご飯が終ったらお風呂に入りましょう。」
「おい!ちょっと待て。俺はかまわねぇ…けどよ。」
「大丈夫ですよ。私バスタオル巻いて入りますから。」
(お前いつもならバスタオル巻いたって恥かしいから嫌だとか、絶対にこっち見るなとか文句ばっかり言うじゃねぇか!)
「俺は一人で入れる。」
不機嫌な顔を隠すようにそっぽを向いた。
(くそっ…これじゃまるで思い通りにならない子供みたいじゃねぇか…。)
イライラを何とか沈めようとしていると、ethlinが少し寂しそうな顔で俺の顔を覗き込んだ。
「でも…歳三さん一人で入ったら、湯船に沈んじゃいますよ。」
「…。」
正論過ぎて返す言葉もない。
どうたら沈黙を了解の意に取ったらしい。
ethlinはタオルを片手に俺を抱き上げ、鼻歌交じりで風呂場へと歩き出した。
「おい!ちょっと待て…。」
「今日は少し寒いから、のんびり入りましょうね♪」
(我慢、我慢…こんな姿にさせられた挙句また我慢かよ…。)
こうして俺は一時間以上、風呂場で一人理性と戦う事になった(苦笑)
「全然元に戻りませんね…。」
時計は夜中の12時を指したところだ。
俺の体は伸びもしなければ縮みもしない。
(一日経てば戻ると思ったんだが…。クソッ…山南さんもこんな厄介な薬をよこしやがって…。)
「夜中の12時になったら元に戻ると思ったのに…。」
ethlinは時計と俺を交互に見つめ、ため息を一つついた。
「もし、このまま元に戻らなかったら…お前はどうする?」
「どうするって?」
ethlinはうさぎの耳を弄っていた手を止め、黙り込んでしまった。
「まさか、お前は『このままがいい』とか言うんじゃないだろうな?」
少し自嘲気味に笑いかけると、突然強く抱きしめられた。
「嫌です!私…いつもの歳三さんがいいです!だから…だから…早く元に戻ってください。」
グズグズと泣き出すethlinの涙を拭ってやるものの、うまく慰める事が出来ないこの小さな手がもどかしい。
「泣くな。」
「はい。」
精一杯背伸びをして腕を伸ばし、頭を優しく撫でてやる。
手で顔をはさみ込んで口づけをしようとしたが、この小さな体では上手くいかない。
「歳三さん…。」
髪をかき分け、そっと頬を撫でてやる。
ethlinが泣き笑いの笑顔を見せた。
「どんな姿でも…私は貴方が大好きです。」
そっと顔を寄せ、俺の唇に柔らかな唇を重ねてきた。
ただ触れるだけ…それでも合わさった唇から温かい熱が伝わってくる。
だが
次の瞬間、急に俺の体は重くなってバランスを崩し後ろに倒れた。
俺の腕を掴んでいたethlinも、同時に俺にのしかかるように倒れこんだ。
「ぎゃっ!」
「大丈夫か!?」
慌ててethlinの小さな体を抱き起こした。
「あれ?歳三さん…。」
「なんだ?」
「…元に戻ってます。」
気がつけば俺の体は元の姿に戻っていた。
「なんで?どうして?12時になっても元に戻らなかったのに?」
「なんでって…。」
俺は笑いながらethlinを抱き寄せる。
「悪い魔法使いの魔法を解く鍵は12時の鐘じゃなくて、お姫様のキスだった。そういう事だろ?」
「そっ…そうなんですか…
。」
「そうだ。」
両頬を手ではさんで笑いかけると、恥かしそうに俯いた。
「もう一度くれないか?俺に、愛おしいお姫様からの口づけを…。」
「…はい。」
小さく頷き、小さな手が俺の頬をそっと撫でる。
「大好き…一番好き…世界中で貴方だけが…好きです。」
耳をくすぐる甘い声。
「俺もだ。」
ただ触れるだけの優しいキス。
「歳三さん…。」
「ん?」
耳にかかる熱い吐息。
「お願い…キス…して…たくさん…。」
恥かしそうにボソボソと呟く姿がたまらなく愛おしい。
「してやるよ…お前にだけ、何度でも。嫌だって言っても絶対に離さねぇからな。」
魔法が解けた王子と愛おしいお姫様の…二人だけの甘い時間が始まる。