流れ星  ~ YOU STAY FOREVER ~ | ethlinの煩悩毛だらけ

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煩悩さらけ出し日記

ねぇ 心の深い場所で



今 キミを探し出したよ



それはまるで一瞬の魔法













「…これでよしっ…と。」


戸締りと火の元を確認して、私は部屋へ戻った。


暖まった部屋に歳三さんの姿はない。


まだ隣の書斎で仕事をしているのだろう。


「先に寝ててもいいって言われたけど…どうしようかな。う~ん…久しぶりに本でも読もうかな。」


家から持ってきた本は少ない。


その中から背表紙に『CLOUDLAND』と書かれた本を手に取りベッドに座り込んだ。


学生時代からの大切な友人にもらった写真集だ。


青い空の浮かぶ真っ白な雲


夕焼けに赤く染まる雲


雲の中で鈍く赤く光る太陽


そして所々に書かれた、私へのメッセージ。


懐かしさに浸りながら写真を見ているうちに、忙しさにかまけて空を見上げる事さえも忘れていた自分に気がついた。


窓際に移動してカーテンを開けた。


春は薄紅色一色に染まる桜の木には、薄っすらと雪が積もっている。


窓を開け空を見上げた。


街の明かりが増える度に、空の星が消えていく。


少し感傷的な気持ちになりながら、遠くの夜空を見つめた。


ふと、細い光の筋が目に入った。


「…流れ星?流れ星!うわぁ~流れ星だ~!!」


慌てて窓を閉め、書斎に続くドアに駆け寄った。


軽くノックをして、返事もないのにおもいっきりドアを開けた。


「歳三さん!大変!大変です!!」


「なんだ?また総司に嫌がらせされたのか?それとも新八が明日の朝の食パンを全部喰っちまったのか?」


パソコンから目を離さず答える歳三さんを見て、今は仕事中だという事を思い出した。


「あっ…ごめんなさい。お仕事中なのに煩くして…。」


(またやっちゃった…)


「ethlin…」


歳三さんは黙って手招きをしている。


おずおずと傍によると腕を強く引っ張られ、膝の上に座らされた。


「何があった?」


まるで子供をあやすように、短く切った私の髪をワシワシと撫で回された。


「流れ星…流れ星が見えたんです。それで歳三さんにも教えたくて…」


「俺に教える前に、まずは自分の願い事だろ?」


「私、一番のお願い事は叶えてもらったんです。小学生の頃、臨海学校で見た流れ星にお願いした一番の願い事は。だから歳三さんに教えたくて…歳三さんのお願い事を叶えてあげたくて…それで…。」


「お前の一番の願い事は…なんだったんだ?」


耳に熱い息がかかる。


私は黙って歳三さんの肩にもたれ掛かった。


「言え。お前が一番望んで、叶えられた願い事はなんだ?」


「たった一人…」


私はそっと耳元で囁く。


「たった一人でいいから…大切な人に出会えますように…って」


そっと首に手を回した。


心臓の音が聞こえる。


「ふふっ…歳三さんの心臓…すごくドキドキしてます。」


「お前だって、俺に負けねぇくらい脈打ってるじゃねぇか。」


「だって…歳三さんが…大切な人が…今…目の前にいるから…。」


ある日私は偶然この人を見つけた。


それからずっと一方的にこの人を見ていた。


だから初めて声をかけられたあの時、あまりにも出来すぎた偶然だと私は心底驚いた。


「どうして私に声をかけたんですか?」


知り合ってから何度も聞いた。


でも返ってくる言葉はいつも同じだ。


「秘密だ。俺だけのな。」


「ズルイ…いつもそうやってはぐらかすし。」


「ちっ…仕方ねぇな。そうだな…魔法をかけられたんだ、お前に。『早く私に声をかけないと、貴方は一生売れ残ってしまいますよー』ってな。」


「嘘ばっかり!私以外にもたくさん選べたくせに!!」


クスクスと笑う歳三さんの肩を強く二~三度叩く。


しかしその手はあっさりとつかまれてしまった。


「嘘じゃねぇ…。他に何人いても選ぶのは一人だ。最初から決まっていたんだよ、俺がお前を選ぶ事は。気が遠くなるくらい昔から決まってた。いや、違うな。決めていた…ずっと前から。」


「嘘ばっかり…」


「嘘じゃねぇ…。」


そっと唇を塞がれた。


何度も 


優しく 


いとおしむように


そしてそのまま私を抱きかかえ、部屋へと続く扉へと近づいていく。


「歳三さん、お仕事は?」


「止めだ。お前がいたら仕事にならねぇ。それに俺は流れ星に願い事をしそこねた。だからethlin、流れ星の代わりにお前が俺の願い事を聞き入れろ。」


そっとベッドの上に下ろされ、そのままの体勢で歳三さんの顔を見上げた。


「歳三さんのお願い事はなんですか?」


手を伸ばし、そっと頬に触れた。


「俺の傍から離れるな。ずっと…俺だけを見てろ。死が二人を分かつ時が来ても…俺はまたお前を見つける。必ずお前を見つけ出す。だから…」


「はい。私が好きになるのは歳三さんだけですから。」


優しく笑う愛おしい人の瞳を見つめた。


私はこの瞳に魔法をかけられているのだろう。


どんなに時を重ねても、誰も解く事の出来ない魔法を。


「私は貴方から離れられないから…離れない…ううん……離れ…離れられない…の…」


温かい体温が私を包み込む。


やがて熱にすべてを支配され、私は言葉も意識も何もかもを…大切な人に奪われてしまった。











流れ星よ



どうかお願い



二度目のお願い事を聞き入れて



私を一人にしないで



この人を一人にしないで



死が二人を分かつその時まで



流れ星よ



どうかお願い



この人のお願い事を聞き入れて



またこの人が私を見つけられるように



ちゃんとまた私を見つけてくれるように



死が二人を分かつその時が来ても



またこの人と出会えるように



どうかお願い…