幸せな時間に不安を感じつつも、土方さんを想い続けてきたethlin。
とうとう不安は現実となり、大切な恋心に傷を負ってしまいました。
今回のテーマは重く『死』『薬』『嫉妬』です。
なおねぇが書いた『光の中にみちる』の中で見せた沖田さんのethlinに対する嫉妬心。
これをethlinがどう受け止めたのか…それを考えるのが一番の難題でした。
以前なおねぇが『沖田さんはethlinのもどかしさにイライラしながらも、自分を重ねて見ているのかもしれない』の言葉を思い出し、再び感情移入しながら妄想(←感情移入が重要(笑))
沖田さんと自分を重ねて見たという結論に達し、それがさらに彼女を苦しめる形になりました。
ethlinがずっと感じながらも心の中で否定し続けていた負の感情…みちるへの嫉妬です。
それを否定しつつ、他人を思いやりいい人のフリをして、それが『偽善』だと言ってさらに苦しむethlin。
今回は私の心の中の正直な感情や思いを色々盛り込んで書き上げました。
桜花の中のethlinはまったくのフィクションであり、私の忠実な分身でもあります。
物語が進むにつれて彼女の心が成長していくように、私の心も成長していけたらなと思っています。
今回のタイトルは中島美嘉さんの『汚れた花』よりいただきました。
作中の中『汚れた』と『穢れた』の二つの表記があります。
『汚れた』はよごれた
『穢れた』はけがれた
とお読みください。
『汚れた』の方はけがれたとも読めるので…スイマセン、今更ですが
。
ここまでお読みいただいた皆さま、本当にありがとうございました
。
では凍ってしまった心に少しずつ温かさを取り戻していくethlinの様子を、少しだけ覗いてみます。
もう少しだけお付き合いくださいませ。
「おねぇ~お餅入れよう、お餅!」
「あんまりドバドバ入れないでよ。溶けるでしょ」
「ethlinちゃん…そんなに餅が好きなのか…餅なんて正月に食べるもんだと思ってたけどな…」
原田さんが久しぶりにお休みという事もあって、今日はおねぇの部屋で3人集まり晩ご飯を食べている。
せっかくのお休みだから二人で過ごせばいいのにと遠慮したが、原田さんが私と一緒にご飯が食べたいと言ったらしい。
お花屋さんにはあの日以来立ち寄っていない。
それでも原田さんは何事もなかったかのように、私に接してくれている。
「ビールなくなっちゃったね。取ってくる」
「おねぇ、私が行くよ」
「いいって、ついでに野菜とお肉の追加も持ってくるし」
おねぇは空になった缶とお皿を手にして台所へと向かった。
立ち去るおねぇを確認して、私は原田さんに気になっていた事を思い切って聞いてみた。
「あの…原田さん…」
「ん?どうした?」
「…歳三さん…お元気ですか?」
ビールを口にしていた原田さんの手が止まった。
「歳三さん、ちゃんとご飯食べてます?寝てます?お休み取ってますか?それに…みちるさんも…体調とか…大丈夫なんですか…」
原田さんの口から大きなため息が漏れた。
「ethlinちゃんあのよ…」
「自分でもこんな事聞くの変だと思います。でもどうしても気になって…私…私…やっぱり…歳三さんの事嫌いになれなくて…どうしても嫌いになれないんです!!それに…みちるさん、入院してるんですよね…だから」
俯いてボソボソと言葉を続けると、大きな手が私の頭を優しく撫でた。
「ethlinちゃんはよ…本当に優しいな」
「優しさなんかじゃありません…」
「じゃあ…なんだ?」
「偽善です。優しいフリをしないと、自分が不幸になりそうな気がして…だから」
大きな手があまりにも温かくて、私の目から涙が零れ落ちた。
「優しいフリしてる人間が、そんな涙流すわけねぇだろ?ethlinちゃんは優しい子だ。俺が保障する」
私はグズグズとしゃくりをあげる。
「ほら…泣くなよ…。土方さんみたいに上手く拭いてやれねぇけどよ」
原田さんは私の肩を抱いて、優しく背中を撫でてくれた。
「土方さんは…まぁ…最近忙しそうにしてるな。忙しいって言うより…忙しさで何かを紛らせているって感じだ。何かって言うのは…ethlinちゃんわかるだろ?正直俺は納得いかねぇが…土方さんはethlinちゃんを傷つけるつもりはなかった、いや…傷つけたくなかったんだろうな。幸せなハズなのに…苦しそうな顔してよ」
そんなはずはない。
私はあの人に想われる資格などない人間だ。
泣きじゃくる私に原田さんは言葉を続ける。
「この前近藤さんが土方さんに無理やり休み取らせたら『することがない』って桜花に来てよ…ethlinちゃんが置いていったオレンジ色の自転車の修理してたぜ、それも一日中。『籠が曲がってる』『この擦り傷は転んだんだろう』って言いながら、大事なモノ扱うみたいにしてよ…。新八が中華まん買いに行く時に自転車を拝借したらよ…めちゃめちゃ怒鳴りつけて…クッ…眉間に皺寄せてサドルの高さ直してだぜ。なかなかの見物だったな…あれは」
顔を上げると原田さんが優しく微笑んだ。
「確かに土方さんはみちるさんの事は忘れていねぇ。今でも…愛してるんだろうな。その気持ちは…よくわかる。俺としては複雑だけどよ…。だがな…ethlinちゃんの事も忘れられねぇんだよ。ethlinちゃんがいなくなった途端に昔の土方さんに戻っちまった…なぁ…ethlinちゃんは今でも土方さんが好きか?」
原田さんは私の目を真っ直ぐに見て言った。
「はい…」
「大切で…その気持ちは放せないモノなのか?」
「私は…歳三さんが好きです。もう…これ以上好きになれる人はいない…。自分でもおかしいと思うけど…でも…」
「おかしくなんかねぇよ…その気持ちはethlinちゃんだけのもんだ。大事な宝物だろ?大切にしろよ」
大きな手が私の背中を優しく擦る。
「その気持ちがどうなるのかは…俺には答えはわからねぇ。でもきっと届く。土方さんを想う気持ちは土方さんの心に届く。こんなにも真っ直ぐに想われているんだからよ。だから…諦めるな。想う事は諦めるなよ」
「はい…」
「自転車はちゃんと店で預かっておくから、気持ちが落ち着いたらいつでも取りに来いよ。本当は今日持ってきてやればよかったけどよ、あいつにバレたらこじれるからな」
「何がこじれるって…」
背中越しに不機嫌な声が聞こえた。
背中を擦っていた原田さんの手が止まる。
「佐之…何やってんの…?」
「何って…ethlinちゃんが泣き出したから慰めて…」
「泣くような事…なんかしたわけ
?」
「おねぇ…原田さんは…」
泣きながら振り向くと、おねぇは鬼のような形相で立ち尽くしてた。
そしてその手には…
「おねぇ…それ…何持ってきたの」
「何って…お肉の追加と野菜…あんたもっと野菜が食べたいって言ったでしょ?」
「違う!野菜の隣のその黄色い麺!!それ何?」
「何って…ラーメンに決まってるじゃない」
私の涙はすでに引っ込んでいた。
「ちょっと
鍋にはうどんって決まってるでしょ!!」
「カレー鍋なんだから、ラーメンの方が合うの!!ね、佐之?」
「そうだな、ラーメンが…」
このままでは2対1でうどんが負けてしまう。
私は地団駄を踏みながら叫んだ。
「嫌だ!鍋にはうどん!ラーメンにお餅は入れないもん!!お餅に合うのはう・ど・ん!!」
「そうだな…餅にはうどんが合うよな…」
「ちょっと佐之!ethlinの味方するわけ?あぁ…そう…わかった…ethlinがいいんだ…だから今日やたらとethlinを呼ぶのにこだわったんだ」
うどんの完全勝利目前でおねぇは頬を膨らませ、原田さんを困らせ始めた。
「んなわけないだろ!?3人で飯食うのは久しぶりだなと思って誘ったに決まってるだろ!」
「そうだよ!おねぇ!3人で仲良くカレー鍋の〆にうどん食ようねって誘ってくれたんだよ。ね~原田さん。だからカレー鍋の〆はう・ど・ん!」
「嘘!今ethlinを口説いてたんでしょ?いやらしい…ethlinの事…抱きしめて…」
「お前何くだらないやきもち妬いてんだよ…俺にはお前しかしない。そんな事わかってるだろ?俺はお前のいう事なら…」
「原田さん違うーーー!!おねぇには原田さん!カレー鍋にはうどん!って決まってるの!!とにかくうどんは譲らない!絶対にうどんうどんうどん…うどんにしてー!!」
時は10月
食欲の秋
うどんが食べられるのか、残念な事にラーメンで〆られるのか…その勝敗の行方は…それは神のみぞ知るのかもしれない。