「おねぇ、ヘアピン欲しいの。どれがいいと思う?」
久しぶりの二人一緒の休日、私とおねぇは買い物に出かけていた
「この小さなビーズのかわいいんじゃない?小さいからたくさんつけてたらかわいいし」
「うわぁ~綺麗♪」
「髪だいぶ伸びたもんね。夏祭りの時みたいに~こう…前髪を上げたりして…横に留めて耳出してもいいしね」
私は鏡の前で当てて雰囲気を見て、値段を確認した。
「えへへ♪これにする」
今日は二人のお気に入りの雑貨屋さん巡りをしている。
この雑貨屋さんはファッションアイテムから化粧品、アクセサリーにファンシー文具、小物雑貨などいろいろ揃っているので、おねぇと外出するたびに立ち寄っている。
「土方さんがethlinにプレゼントしたオルゴールもここで見つけたみたいだね。ethlinの誕生日プレゼントを探してるって言ったから、ここのお店教えてあげたんだ。ふふっ…土方さん、どんな顔してこのお店に入ったんだろうね。想像すると…笑える」
白いドレスと赤いドレスの女の子が仲良く手を繋ぎながら『星に願いを』のメロディに合わせてクルクルと回るオルゴール、私とおねぇみたいだから選んだと言っていた。
「えへへ♪すごく嬉しかった」
「ethlin、土方さんに大切に想われてるよね」
おねぇがニヤニヤと私の顔を覗き込んだ。
「そっ…そっかな…
あっおねぇ!会社で使うボールペン見たい!!」
赤く火照った顔を隠すように、私はステーショナリーコーナーへと足早に向った。
「シンプルなボールペンもいいけど、すぐ無くすしな~。マスコットのついたのがいいいかな~」
ぶらぶらと眺めていると、赤ずきんちゃんのマスコットがついたボールペンが目に入った。
「おねぇ!見て見て♪赤ずきんちゃん♪白雪姫にシンデレラもあるよ。かわいい~♪おとぎ話ブームなのかな?他のグッズもたくさんあるし」
周りにはお弁当箱やクリアファイルなど、いろんなグッズが陳列されている。
「ほんとだ。ボールペンはマスコットがノックになってるんだね。作りも綺麗だし…ethlinは赤ずきんちゃんで決まりでしょ♪おねぇも買おうかな。ボールペンって結構使うよね~」
「だよね。仕事してると結構出番多いし」
「佐之もよくボールペン無くしたって何本も買ってるよ。総司君も配達の注文書を書く時に使うからって、エプロンに何本も入れてるね。でもみんなどこかに置きっぱなしにして無くしては誰かが拾って…結局シャッフル状態で使ってるんだって」
ふと、沖田さんが注文書らしき伝票を書いている姿を思い出した。
「あっ…おねぇ…沖田さんにお礼がしたいんだけど…ボールペン…変かな?こんなの子供っぽいと思う?」
「お礼って…誕生日の?それだったら総司君の誕生日にお祝いしてあげればいいんじゃない?」
不思議そうにおねぇは笑った。
「違う、そうじゃなくて…えっと…プリザープフラワーをプレゼントとはまた別に…無理言って作ってもらったの」
「へぇ~珍しいね。ethlinがおねだりするなんて」
おねぇはクスクス笑いながらボールペンを見ている。
「私にじゃなくて…えっと…歳三さんの…えっと…おっ…お友達が入院しててね!夏祭りも遊びにこれなかったみたいだし…かわいくて綺麗なモノ見たら元気出るかな~と思って作ってもらったの。差し出がましいけど…幸せのおすそ分け…」
複雑な気持ちを隠すように、私は早口でしゃべりまくる。
(おねぇ…私の様子が変とか…思ってないよね…)
チラリおねぇを見ると、ふっと優しく笑って私の頭をそっと撫でた。
「ethlinはホント優しいね。知らない人にそんな気づかいが出来るなんて。土方さんのお友達にethlinの気持ち…きっと伝わるよ」
違う…
優しいんじゃない…
自分だけが幸せになるのが怖いだけだ…
いつかこの幸せが壊れてしまうんじゃないかって…
それが怖くていい人のフリをしているだけなんだ。
なんとか笑顔を作ってみせて、ボールペンを選ぶフリをして顔を伏せた。
「総司君きっと喜ぶよ。ethlinに意地悪ばっかり言うけど、本当は愛情に飢えてて、どうしたらいいのかわからないんじゃないかな?私とethlinが仲がいいから…妬ましい…と言うか…うーん…羨ましいかな?羨ましくてつい意地悪しちゃうってとこかな」
たくさんの女の子の前で笑っていても、うわべだけの笑みを浮かべる沖田さんを思った。
あの夏祭りの日に見た沖田さんは違っていた。
大切な人を見つめる笑顔。
想い人を優しく見つめる優しい笑顔。
あの日、原田さんと一緒にいるおねぇを見て、沖田さんは何を思っていたのだろうか。
今なら沖田さんの気持ちが少しわかる気がする。
「あのね…おねぇが沖田さんの事『寂しがり屋の男の子』って言ったの…わかる気がする…」
大好きな人がすぐ傍にいるのに、私と違って祝福されない。
沖田さんは仲間の恋人を好きになり、想いを伝える事は出来ない。
私だって似たような立場なのに、みちるさんが『壊れてしまった』という理由だけで、歳三さんの傍にいることを許されている。
「でしょ?意地悪言って~いつも笑ってるけど、虚勢張ってるだけなんだって。う~ん、おねぇはシンデレラか白雪姫にしようかな?人魚姫も捨てがたいし…」
「おねぇはシンデレラがいいよ。綺麗で…幸せなお姫様…。人魚姫は沖田さん…かな」
大好きな人に想いを伝える事が出来ても、海の泡になって消えてしまう…切なく悲しい人魚姫。
そんな人魚姫と沖田さんを私は重ねていた。
「なかなか色っぽいし、いいんじゃない♪総司君に人魚姫。人魚姫も総司王子の傍にいられればきっと嬉しいね」
「う~ん…沖田さんが王子様って言うのは~やっぱりよくわかんないけど…でも…おねぇが王子様って言うのなら間違いないのかな?えへ♪そうだね。沖田さんが王子様なら、人魚姫もきっと幸せな気持ちになれるよね」
私はボールペンを手に取りかごに入れた。
一通り買い物を済ませ、二人であんずの木に寄った。
ケーキセットを注文すると、おねぇは鞄からパンフレットを取り出してテーブルに広げた。
「恒例の旅行なんだけどね、たまには思いっきり遠くもいいかな~と思って…北海道とかどう?美味しいものたくさんあるし、函館とかね~五稜郭タワーとか…五稜郭ってね~星型の建物で面白いよ。函館は新選組最後の地でもあるしね。歴史の勉強にもなるし、そうそう…ethlinには食べ物だね…朝市もあるよ」
私はパンフレットもマジマジと見つめる。
「ふーん…お星さまの形の建物か~。お土産モノもたくさんあるんだね。いいかも♪朝市にイカモニュメントだって…変なの。カレーで有名な五島軒もあるんだ!。函館って道内でも本州から近いんだね…ふーん」
一通りパンフレットを見て「いいかも♪」と返事をしておねぇに返した。
「飛行機で行けばあっと言う間だもんね。秋の北海道か~。こっちより少し寒いよね。どんなとこかな~。えへへ♪楽しみ」
運ばれてきたケーキを口にしながら、見知らぬ北海道の地に思いをはせる。
「今日持ってきたのは北海道旅行の総合パンフ。おねぇの持ってる詳しい方のパンフのタイトルを後でメールするから、ethlinもパンフもらってきてじっくり検討してみて」
「うん。明後日くらいに仕事帰りにお花屋さんに寄るから、そのついでにパンフもらってくる。いつもの旅行会社のお店も近いし。今年の旅行は~お土産沢山買わないとね♪桜花の会社とゆきちゃんと~桜花のみんなにも」
おねぇと二人で顔を合わせ笑い合う。
「今年の旅行はいつもより特別になるね」
「うん!特別で楽しい旅行にしようね」
きっと秋も楽しい事がたくさん起きる。
私はそう信じていた。