日中はまだ暑さが残る9月の中旬。
少し秋らしい風が吹き始めた夕方、私は指定された場所で仕事帰りの歳三さんを待っている。
知り合ってから何度二人で出かけても、待ち合わせしている時間はいつもドキドキしてしまう。
(だから…他の人から見たら挙動不審なんだって…落ち着け…自分)
そう自分に言い聞かせるものの、スーツ姿の歳三さんの姿を思い起こせば自然と顔が緩む。
(今日のコーディネート…自分でもめちゃよかったと思う…うん!だって…今日の日のためにずっと考えてたんだもん…ふふふふっ…ダメダメ…落ち着け自分…めちゃくちゃ怪しい人になってるヨ!!)
落ち着こうと背筋を伸ばしてみる。
(平常心…平常心…)
ふと背中越しに誰かの気配を感じた…途端
「お嬢さん…誰かと待ち合わせですか?」
肩を叩かれ声をかけられた。
「はい!?ごめんなさい!!私人妻です!!」
驚きのあまりに体が飛び跳ねた。
(なっ…なに言ってんだろ…私…)
意味不明の言葉を叫んだ事が恥かしくなり、頭を抱えてしゃがみこむ。
「お前…おかしすぎる…悪い…もう…我慢できねぇ…」
頭上から聞きなれた笑い声が響く。
そろそろと上を見上げると、お腹を抱えて笑う歳三さんがいた。
「あれ…歳三さん?…えっ…もしかして…からかったんですか!?」
「遠目から見てもあんまりそわそわしながら…一人で百面相してるから…悪い…驚かすつもりはなかったんだが…ふっ…クッククク…あははは…」
「もっ…もう…笑いすぎですよ!!」
笑いながらふて腐れてそっぽを向く私の肩を抱き、そっと耳元に唇を寄せる。
「本当は今すぐにでも抱きしめたいくらい…かわいいと思っている…そんなところも…」
そっ…そんな…今、スーツ姿の歳三さんに抱きしめられたら、ワタクシ嬉しすぎて昇天してしまうんですけど…。
「あっ…いや…えっと…駄目です!!ひっ…人目があるので…」
真っ赤な顔でしどろもどろになりながら、私は肩を押し返した。
歳三さんのため息が漏れる。
「しかたがねぇ…家に帰るまで我慢するか…」
「はっはい!がんばって我慢してください!!」
顔を上げると呆れ顔の歳三さんと目が合った。
二人顔を見合わせ、クスクスと笑い合う。
「お前に出会ってから…俺は我慢させられっぱなしじゃねぇか」
「そっ…そうですか?そうかな…そうかも…確かにそうですね/////」
歳三さんは苦笑しながら、私の髪を優しく撫でる。
「まぁいい…貴重な二人っきりの時間だ、行くぞ」
「はい」
私は歳三さんの腕に私の腕を絡ませ、そっと寄り添った。
待ちに待った、スーツデートの始まり。
ずっと楽しみにしていた…大好きな人と二人っきりの時間の始まり。